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43
ダイラ デンズ湾/硲
「いいかい! ここが最後の防衛線だ!」
イルヴァの声が風に乗り、〈浪吼団〉の船という船に運ばれる。船乗りたちの雄叫びが、デンズ湾に響き渡った。
「陸上からの支援は期待できない。マチェットフォードの腰抜けどもは、股をおっぴろげて敵が来るのを待ち構えてやがる! 奴らに本物の戦いってやつを披露してやろうじゃないか!」
〈浪吼団〉とダイラ海軍の連合艦隊が作る防衛網を、喊声が駆け抜けていった。味方の船は、およそ百。
フーヴァルはひとりロッサーナ号の舳先に立って、戦場を見渡していた。海の上だろうが、陸の上だろうが、こんなに滅茶苦茶な戦場を見たのは初めてだった。
風は強く波は高い。嵐が幕を開ける一歩手前だ。
光箭軍の船が、見渡す限りの海を埋め尽くしている。その数、ざっと二百。黒一色に塗り込められた船体は、見る者に威圧感を与えた。見るからに寄せ集めの船からなる味方の艦隊とは雲泥の差だ。視界の限りびっしりと押し寄せる黒と金。並みの船乗りなら失神するか、失禁するか、とにかく尊厳を失うようなことをしでかしてしまうところだ。
だが、問題はそれだけではなかった。
〈嵐の民〉の竜頭船が、敵の艦隊の隙間を埋め尽くしていたのだ。
「ふざけやがって」フーヴァルは歯ぎしりした。「やつらはひとり残らず冥土に送ったはずだろうが……!」
そう言いながらも、なにか普通じゃない力が働いているのはフーヴァルにもわかった。腐臭を振りまきながら敵味方の区別も無く魂を奪いまくる、あの腐死者どもがあんなに接近しているのに、敵の船乗りたちは気にも留めていない。
いや。敵艦隊の背後に奴らがいる時点で、常識なんて物差しに意味は無いのかも知れない。
デンズ湾のはるか沖に、天を突くほど巨大な二つの影があった。
長いあごひげの先を海に浸して、巨人が波間を歩いている。鱗の張り付いた肌に、ボサボサの濡れ髪。狂気と知性を同じ分だけ持っているかのような、ぎょろりとした目の男。そいつが海をかき分けて進むほどに波は逆巻き、船は揺れた。
さらにそいつと向き合っているのが、これまた不気味な異形だった。全身が剣で覆われた、ひとのような、牛のような姿の大男だ。そいつは怖ろしい笑い声をあげると、鱗の巨人と取っ組み合いをはじめた。
海神に剣神。大昔から、緑海で喧嘩を繰り返してきたふた柱の神が、どういうわけか今ここに居て、殴り合いの喧嘩をおっぱじめている。彼らが海の中で暴れると、波が荒れ、嵐雲が鳴動した。その様子は、味方にも敵にも見えてはいない。腐死者の群れや、フーヴァルの姿と同様に。
あの死に損ないどもと、神々と、それから俺がこちら側にいる。現実世界と奇妙に重なり合っているらしい、この空間に。
「これが、『硲の領域』ってことかよ」
ゲラードなら、目の前に広がるとち狂った状況を見定められるのだろう。だが、この世界に落ちるときにははぐれてしまってから、彼の姿は見ていない。
彼の覚悟を、フーヴァルは聞いた。
いざとなれば命を投げ出しても、新しい神の──唯一の神の誕生を阻止してみせる、と。
「どこに居るにしても、頼むから早まったことはするなよ……」
そう呟きながら、フーヴァルは神々の背中から伸びている赤い緒を見つめた。嵐雲の中に吸い込まれている緒の先に何があるのかは、銀色に光る目を持っていなくてもわかる。あれは臍の緒だ。新しい神が、古い神を喰らうためのものだ。
「クソッタレ、どうすりゃいいってんだ」
眼前に、敵の艦隊が迫る。金の仮面をかぶった兵士を満載して。彼らの手には手持ち筒が握られていた。ホラスの話に聞いていたやつだ。射程は短いが、威力はデカい。至近距離からあれにぶち抜かれたら、人間だろうがナドカだろうが、手足なんか一発で吹き飛ぶ。
一にも二にも、敵の船に乗り込んで暴れるのが〈浪吼団〉の戦い方だった。だが、今度はそれを恐れなければならない。連中は、海賊狩りにこれ以上ないほど適した武器を手に入れてしまったのだ。
こちらとしては、奴らを近づけないように戦うしかない。
「大砲、発射用意!」
イルヴァが叫ぶ。命令は谺のように繰り返され、下甲板にまで伝わっていった。
とにかく大砲を撃ちまくって、敵を近づけさせない。勝つにはそれしかない。大学の魔術師たちのおかげで、エイルの船に搭載された大砲の射程は長い。上手く逃げ回れば勝機はある。
あるはずだ。でなきゃおしまいだ。
味方の背後には、ダイラの陸地が見えていた。マチェットフォードには、ダイラ随一の貿易港を守る立派な砦があり、海上に向けて設置された大砲がずらりと並んでいる。だが、それが味方を救うために使われることはない。イルヴァが言ったとおり、マチェットフォードはすでに戦いを放棄している。近くの砦から救援に差し向けられた女王の兵は、市兵によって締め出しを食らい、市壁の前で足止めされている。
光箭軍のダイラへの上陸を阻むには、ここで戦い、勝つしかないのだ。
フーヴァルは、自分に何ができるのかを考えた。だが、何も思い浮かばない。あの腐れ死人どもと、ただ我武者羅に戦うより他には。
光箭軍の黒い艦隊が、すぐそこまで来ている。
どこか遠く、左の海上で、最初の大砲の音が鳴り響いた。そう思ったら、至る所で同じ音が起こった。
〈嵐の民〉どもが剣を振り上げ、声なき声で雄叫びを上げる。神々は狂ったように笑いながら、死の舞踏を踊っている。角笛が鳴り響き、陣太鼓がとどろき渡る。空は暗くなり、重く粘つく雲が、さらに低くのし掛かって来た。
そして、混沌が始まった。
44
ダイラ 旧ベイルズ ガーナリン/硲
投石機から放たれる火の玉が、ガーナリンの壁にぶち当たる。
霹靂のような音を立てて崩れゆく壁の上で、ホラスが敵に囲まれている。マタルは彼の元へと、全速力で走った。
「ホラス!!」
ホラスは十二人もの男に取り囲まれながら、なんとか剣一本でしのいでいる。だが、いつまで持つかわからない。いつまでも持つはずがない。
マタルの焦りをあざ笑うように、マタルを見捨てた曙神の黒い茨がうねる。その合間にも投石は次々と壁に命中し、ついに、穴を開けた。
女王の軍勢から歓声が上がる。
「くそっ!」
エレノアの勝利のためには、壁は崩されなければならない。けれどそうなったら、崩壊に巻き込まれて、ホラスは死んでしまう。
壁まで届かなかった巨石が地面に堕ち、土が舞い上がる。彼らにはマタルのことが見えていない。上から降ってくる壁と、後ろから飛んでくる大岩。足を置く場所を間違えれば、次の瞬間にはぺちゃんこに押しつぶされるかもしれない。マタルは走った。踊る巨人の足下をちょこまかと逃げ惑う鼠のように。
地面を揺らすほどの衝撃によろめきながら死の雨をすり抜け、泥をかぶり、火の粉を浴びながらも、マタルはようやく壁に辿り着いた。
大変なのはここからだ。
見上げると、壁は絶望そのもののように高く聳え立っている。だが、門が閉ざされている以上、外からこれをよじ登るより他に方法はない。マタルは意を決して、曙神の茨を掴むと、壁を登りはじめた。避けたつもりの棘に何度も肌を切り裂かれながら、無我夢中で上を目指した。
石が壁に当たる度、世界そのものが怖ろしいほど揺れる。曙神の茨に掴まっているから振り落とされるようなことはなかった。けれど、絶え間ない揺れのせいで激しい目眩に襲われて、危うく手を離しかけてしまった。
落下の前兆。地面が急速に近づく感覚。マタルは茨にしがみついたまま、背筋に嫌な汗が滲むのを感じた。
文身を失った自分の弱さ。剥き出しの恐怖が、錆が鉄を食うように気力を鈍らせる。ほんの一瞬、すべてを投げ出すことを考える。諦めは……心に平穏をもたらす。竜になってしまう前に死ねと渡された、あの丸薬を見つめていたときのように。
でも、ここで自分が諦めたらホラスは助からない。
それだけは、絶対に嫌だ。
マタルは目を閉じ、歯を食いしばって、次の茨を掴んだ。
「いま、行くから……!」
そのとき背後から、新しい喊声が聞こえた。
振り向いたマタルは、思わず声を上げていた。
城を取り囲むエレノアと〈アラニ〉の大軍勢──彼らの背後から、敵が押し寄せてくるのが見えた。
「そんな──」
彼らが振りかざしているのは銀の剣。燈火を持つ手の旗印を見るまでもない。
〈燈火の手〉だ。
連中の狙いは明白だった。陣の後方に配されていた投石機と、それを守り、動かしている〈アラニ〉たちだ。
背後を突かれた女王軍は形勢を崩した。隊列がゆがみ、散り散りになる様子が、マタルの居る場所からは手に取るように見えていた。
手は、かたい煉瓦にはいった皹のように隊伍を割り、脇目も振らずに目標に突っ込んだ。体勢を立て直し、陣の前方にいた騎兵たちが駆けつける頃には、〈アラニ〉たちはなすすべもなく倒れ、投石機も火に包まれていた。それは無数のかがり火のように、戦場を照らした。
その期を待っていたのだろう。
ガーナリンの城壁が軋みながら開いた。中から躍り出た何百という騎兵が、一目散に駆けてゆく。
「これじゃ……挟み撃ちだ」
背後を突かれたことで、ほころびはすでに生じている。このままでは、女王軍は瞬く間に包囲されてしまう。
その時、戦況を見守るマタルを振り落とそうとするかのように、茨が蠢めき、マタルを弾き飛ばした。
「う、あ!」
マタルはあえなく宙を舞った。
文身──駄目だ。落ちるしかない!
落下の衝撃に備えて身構えたが、無駄だった。地面にめり込んでいた投石に、背中からもろに突っ込んでしまった。
「か……!」
息が、できない。
息を吸い込もうとしているはずなのに、感じるのは痛みだけだった。
無力さ、絶望の冷たさが、四肢の先から身体を侵食していく。
明滅する視界の奥で、曙神が黒い茨を、さらに伸ばしていた。まるで、デンズ湾の海戦で見た大烏賊の脚──その何百倍もの数の茨が地面に突き刺さる。
そしてマタルは、今までに何度も味わってきた、あの力の波動を感じた。それは、マタルが今横たわっている地面の下から湧き上がってきた。
ガーナリン平野の地面の下。いままで幾たびもの戦の舞台になってきたガーナリン平野の地面の下には──。
嘘だろ……頼む。やめてくれ。
痛みも忘れて、マタルは祈った。だが、どの神に祈るというのだろう。いま絶望をもたらそうとしているのは、他ならぬ彼自身の神だというのに。
「アシュタハ……やめてくれ……」
マタルは地面に手を置き、力を押し戻そうと足掻いた。
だが、何の意味も無かった。
目の前の地面が盛り上がったと思った次の瞬間、骨張った手が突き出てきた。手は空を掴むように伸び、やがて腕が、肩が、頭が現れる。土を振り落としながら、ひとりの死者が立ち上がった。ひとり、またひとり──みるみる間に、百、いや、千以上もの骸が地上に這い出してきた。
骸たちは、ガーナリンの城から湧き出す騎兵の馬に飛び乗り、あるいは歩兵たちの列に加わって、女王軍に向かって行った。
ガーナリン平野の地面の下には、何万もの兵士が眠っている。その兵士たちを、曙神が呼び起こしてしまったのだ。現実の戦場に居る者たちの目には映らなくとも、マタルにはそれが見えていた。
死者たちが、生きている者たちの精気を、剣を握る力を、地面を踏みしめる力を奪ってゆく。
この、硲の世界と現実の世界とは、決して別々に分かたれたものではない。互いに影響を及ぼし合っている。その証拠を、マタルは目の当たりにしていた。
女王の言葉に奮い立った兵たちの目に宿った光はすでに消えかけていた。光を失い、ここで死ぬより他にないのだと、悟った者から倒れていった。
「隊列を崩すな! 固まれ!」
「陛下をお守りしろ!」
「進め! 前進しろ!」
何十もの命令がてんでに飛び交う。戦旗は千切れ、踏みにじられ、無数の剣も、槍も、動揺に震えていた。
あっという間に、女王軍は取り囲まれた。がちゃがちゃと鋭い音を立てる鎧と、盾の壁が何重にも軍勢を包囲する。
「だめだ……」
マタルは手を伸ばした。
自分の中から消えてしまった曙神の力の欠片が、ほんの少しでも残ってはいないかと。だが、駄目だ。何度呼びかけても、女神はマタルの声に応えてはくれない。
勇ましい戦喚は、いまや叫喚に変わっていた。
自分は滅びを目にするのだろうか?
自由を掲げて立った一国の主が死んでゆくのを、なすすべもなく見ていることしかできないのだろうか。
いや、そんなことはしない。
マタルは呻きながら、ゆっくりと身を起こした。喘ぎと共に空気を吸い込み、地面に手を突いて、立ち上がる。
ガーナリンの街の頭上に咲く、大輪の薔薇の花が萎れかけている。その姿を見て、マタルは気付いた。
曙神は、俺たちを相手に戦いたがっているわけじゃない。ただ苦しんで、食われまいと抗っているだけなんだ。その抵抗が、あちらの世界にも影響を及ぼしている。
それなら、いまここで俺がすべきことは、何だ?
「俺は──」
俺は戦うためにここにきた。なら、戦わなければ
ホラスを見捨てるのか、と、心の中の声が言う。その瞬間、彼への想いが、思慕が燃え上がる。
本当は、すべてを見殺しにしてでも彼を助けに行きたい。世界と引き換えにしても良いほど、彼を想っている。彼の命が絶たれるときは、自分が死ぬときだ。確かに、そう思う。
けれど、彼と離れて、世界を巡ってわかった。この戦いに加わると決めたからには、それでは駄目なのだ。
何かを愛するということは──自分を失う覚悟をすること。時に自分自身よりも重い、愛そのものを犠牲にしなければならないとしても……正しい選択を胸に、しっかりと立つことだ。
神を殺した男が何を、と言われるかもしれない。
けれど、今ならわかる。あれは過ちなどではなかった。
二人が生まれたこの世界を、よりよくするための選択だった。だから、俺は──俺たちは贖罪のためではなく、最初の気持ちに正直に戦い続けるべきなんだ。世界をよくするために。そのために生きて、生きる。
「ホラス……俺──」
目を閉じると、彼の顔が浮かぶ。頷いて、微笑んでくれる。
お前の思うとおりにするんだ、と。
そういうひとだから、マタルは愛した。強くなった。
「俺、行くよ」
マタルは目を閉じた。そして、自分の奥底に眠っている力に呼びかけた。
身の内に根を張る茨の力ではなく、死人たちの帰り路を照らす暁の力でもなく、いままでずっと己の血の中で燃えていた、根源に宿る力に命じた。いまこそ燃え上がれと。
これまでは、曙神の力を借りて戦ってきた。けれど、俺は魔女だ。曙神と出会う前から──生まれた時から、俺はサーリヤ族の魔女なんだ。
ダイラ デンズ湾/硲
「いいかい! ここが最後の防衛線だ!」
イルヴァの声が風に乗り、〈浪吼団〉の船という船に運ばれる。船乗りたちの雄叫びが、デンズ湾に響き渡った。
「陸上からの支援は期待できない。マチェットフォードの腰抜けどもは、股をおっぴろげて敵が来るのを待ち構えてやがる! 奴らに本物の戦いってやつを披露してやろうじゃないか!」
〈浪吼団〉とダイラ海軍の連合艦隊が作る防衛網を、喊声が駆け抜けていった。味方の船は、およそ百。
フーヴァルはひとりロッサーナ号の舳先に立って、戦場を見渡していた。海の上だろうが、陸の上だろうが、こんなに滅茶苦茶な戦場を見たのは初めてだった。
風は強く波は高い。嵐が幕を開ける一歩手前だ。
光箭軍の船が、見渡す限りの海を埋め尽くしている。その数、ざっと二百。黒一色に塗り込められた船体は、見る者に威圧感を与えた。見るからに寄せ集めの船からなる味方の艦隊とは雲泥の差だ。視界の限りびっしりと押し寄せる黒と金。並みの船乗りなら失神するか、失禁するか、とにかく尊厳を失うようなことをしでかしてしまうところだ。
だが、問題はそれだけではなかった。
〈嵐の民〉の竜頭船が、敵の艦隊の隙間を埋め尽くしていたのだ。
「ふざけやがって」フーヴァルは歯ぎしりした。「やつらはひとり残らず冥土に送ったはずだろうが……!」
そう言いながらも、なにか普通じゃない力が働いているのはフーヴァルにもわかった。腐臭を振りまきながら敵味方の区別も無く魂を奪いまくる、あの腐死者どもがあんなに接近しているのに、敵の船乗りたちは気にも留めていない。
いや。敵艦隊の背後に奴らがいる時点で、常識なんて物差しに意味は無いのかも知れない。
デンズ湾のはるか沖に、天を突くほど巨大な二つの影があった。
長いあごひげの先を海に浸して、巨人が波間を歩いている。鱗の張り付いた肌に、ボサボサの濡れ髪。狂気と知性を同じ分だけ持っているかのような、ぎょろりとした目の男。そいつが海をかき分けて進むほどに波は逆巻き、船は揺れた。
さらにそいつと向き合っているのが、これまた不気味な異形だった。全身が剣で覆われた、ひとのような、牛のような姿の大男だ。そいつは怖ろしい笑い声をあげると、鱗の巨人と取っ組み合いをはじめた。
海神に剣神。大昔から、緑海で喧嘩を繰り返してきたふた柱の神が、どういうわけか今ここに居て、殴り合いの喧嘩をおっぱじめている。彼らが海の中で暴れると、波が荒れ、嵐雲が鳴動した。その様子は、味方にも敵にも見えてはいない。腐死者の群れや、フーヴァルの姿と同様に。
あの死に損ないどもと、神々と、それから俺がこちら側にいる。現実世界と奇妙に重なり合っているらしい、この空間に。
「これが、『硲の領域』ってことかよ」
ゲラードなら、目の前に広がるとち狂った状況を見定められるのだろう。だが、この世界に落ちるときにははぐれてしまってから、彼の姿は見ていない。
彼の覚悟を、フーヴァルは聞いた。
いざとなれば命を投げ出しても、新しい神の──唯一の神の誕生を阻止してみせる、と。
「どこに居るにしても、頼むから早まったことはするなよ……」
そう呟きながら、フーヴァルは神々の背中から伸びている赤い緒を見つめた。嵐雲の中に吸い込まれている緒の先に何があるのかは、銀色に光る目を持っていなくてもわかる。あれは臍の緒だ。新しい神が、古い神を喰らうためのものだ。
「クソッタレ、どうすりゃいいってんだ」
眼前に、敵の艦隊が迫る。金の仮面をかぶった兵士を満載して。彼らの手には手持ち筒が握られていた。ホラスの話に聞いていたやつだ。射程は短いが、威力はデカい。至近距離からあれにぶち抜かれたら、人間だろうがナドカだろうが、手足なんか一発で吹き飛ぶ。
一にも二にも、敵の船に乗り込んで暴れるのが〈浪吼団〉の戦い方だった。だが、今度はそれを恐れなければならない。連中は、海賊狩りにこれ以上ないほど適した武器を手に入れてしまったのだ。
こちらとしては、奴らを近づけないように戦うしかない。
「大砲、発射用意!」
イルヴァが叫ぶ。命令は谺のように繰り返され、下甲板にまで伝わっていった。
とにかく大砲を撃ちまくって、敵を近づけさせない。勝つにはそれしかない。大学の魔術師たちのおかげで、エイルの船に搭載された大砲の射程は長い。上手く逃げ回れば勝機はある。
あるはずだ。でなきゃおしまいだ。
味方の背後には、ダイラの陸地が見えていた。マチェットフォードには、ダイラ随一の貿易港を守る立派な砦があり、海上に向けて設置された大砲がずらりと並んでいる。だが、それが味方を救うために使われることはない。イルヴァが言ったとおり、マチェットフォードはすでに戦いを放棄している。近くの砦から救援に差し向けられた女王の兵は、市兵によって締め出しを食らい、市壁の前で足止めされている。
光箭軍のダイラへの上陸を阻むには、ここで戦い、勝つしかないのだ。
フーヴァルは、自分に何ができるのかを考えた。だが、何も思い浮かばない。あの腐れ死人どもと、ただ我武者羅に戦うより他には。
光箭軍の黒い艦隊が、すぐそこまで来ている。
どこか遠く、左の海上で、最初の大砲の音が鳴り響いた。そう思ったら、至る所で同じ音が起こった。
〈嵐の民〉どもが剣を振り上げ、声なき声で雄叫びを上げる。神々は狂ったように笑いながら、死の舞踏を踊っている。角笛が鳴り響き、陣太鼓がとどろき渡る。空は暗くなり、重く粘つく雲が、さらに低くのし掛かって来た。
そして、混沌が始まった。
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ダイラ 旧ベイルズ ガーナリン/硲
投石機から放たれる火の玉が、ガーナリンの壁にぶち当たる。
霹靂のような音を立てて崩れゆく壁の上で、ホラスが敵に囲まれている。マタルは彼の元へと、全速力で走った。
「ホラス!!」
ホラスは十二人もの男に取り囲まれながら、なんとか剣一本でしのいでいる。だが、いつまで持つかわからない。いつまでも持つはずがない。
マタルの焦りをあざ笑うように、マタルを見捨てた曙神の黒い茨がうねる。その合間にも投石は次々と壁に命中し、ついに、穴を開けた。
女王の軍勢から歓声が上がる。
「くそっ!」
エレノアの勝利のためには、壁は崩されなければならない。けれどそうなったら、崩壊に巻き込まれて、ホラスは死んでしまう。
壁まで届かなかった巨石が地面に堕ち、土が舞い上がる。彼らにはマタルのことが見えていない。上から降ってくる壁と、後ろから飛んでくる大岩。足を置く場所を間違えれば、次の瞬間にはぺちゃんこに押しつぶされるかもしれない。マタルは走った。踊る巨人の足下をちょこまかと逃げ惑う鼠のように。
地面を揺らすほどの衝撃によろめきながら死の雨をすり抜け、泥をかぶり、火の粉を浴びながらも、マタルはようやく壁に辿り着いた。
大変なのはここからだ。
見上げると、壁は絶望そのもののように高く聳え立っている。だが、門が閉ざされている以上、外からこれをよじ登るより他に方法はない。マタルは意を決して、曙神の茨を掴むと、壁を登りはじめた。避けたつもりの棘に何度も肌を切り裂かれながら、無我夢中で上を目指した。
石が壁に当たる度、世界そのものが怖ろしいほど揺れる。曙神の茨に掴まっているから振り落とされるようなことはなかった。けれど、絶え間ない揺れのせいで激しい目眩に襲われて、危うく手を離しかけてしまった。
落下の前兆。地面が急速に近づく感覚。マタルは茨にしがみついたまま、背筋に嫌な汗が滲むのを感じた。
文身を失った自分の弱さ。剥き出しの恐怖が、錆が鉄を食うように気力を鈍らせる。ほんの一瞬、すべてを投げ出すことを考える。諦めは……心に平穏をもたらす。竜になってしまう前に死ねと渡された、あの丸薬を見つめていたときのように。
でも、ここで自分が諦めたらホラスは助からない。
それだけは、絶対に嫌だ。
マタルは目を閉じ、歯を食いしばって、次の茨を掴んだ。
「いま、行くから……!」
そのとき背後から、新しい喊声が聞こえた。
振り向いたマタルは、思わず声を上げていた。
城を取り囲むエレノアと〈アラニ〉の大軍勢──彼らの背後から、敵が押し寄せてくるのが見えた。
「そんな──」
彼らが振りかざしているのは銀の剣。燈火を持つ手の旗印を見るまでもない。
〈燈火の手〉だ。
連中の狙いは明白だった。陣の後方に配されていた投石機と、それを守り、動かしている〈アラニ〉たちだ。
背後を突かれた女王軍は形勢を崩した。隊列がゆがみ、散り散りになる様子が、マタルの居る場所からは手に取るように見えていた。
手は、かたい煉瓦にはいった皹のように隊伍を割り、脇目も振らずに目標に突っ込んだ。体勢を立て直し、陣の前方にいた騎兵たちが駆けつける頃には、〈アラニ〉たちはなすすべもなく倒れ、投石機も火に包まれていた。それは無数のかがり火のように、戦場を照らした。
その期を待っていたのだろう。
ガーナリンの城壁が軋みながら開いた。中から躍り出た何百という騎兵が、一目散に駆けてゆく。
「これじゃ……挟み撃ちだ」
背後を突かれたことで、ほころびはすでに生じている。このままでは、女王軍は瞬く間に包囲されてしまう。
その時、戦況を見守るマタルを振り落とそうとするかのように、茨が蠢めき、マタルを弾き飛ばした。
「う、あ!」
マタルはあえなく宙を舞った。
文身──駄目だ。落ちるしかない!
落下の衝撃に備えて身構えたが、無駄だった。地面にめり込んでいた投石に、背中からもろに突っ込んでしまった。
「か……!」
息が、できない。
息を吸い込もうとしているはずなのに、感じるのは痛みだけだった。
無力さ、絶望の冷たさが、四肢の先から身体を侵食していく。
明滅する視界の奥で、曙神が黒い茨を、さらに伸ばしていた。まるで、デンズ湾の海戦で見た大烏賊の脚──その何百倍もの数の茨が地面に突き刺さる。
そしてマタルは、今までに何度も味わってきた、あの力の波動を感じた。それは、マタルが今横たわっている地面の下から湧き上がってきた。
ガーナリン平野の地面の下。いままで幾たびもの戦の舞台になってきたガーナリン平野の地面の下には──。
嘘だろ……頼む。やめてくれ。
痛みも忘れて、マタルは祈った。だが、どの神に祈るというのだろう。いま絶望をもたらそうとしているのは、他ならぬ彼自身の神だというのに。
「アシュタハ……やめてくれ……」
マタルは地面に手を置き、力を押し戻そうと足掻いた。
だが、何の意味も無かった。
目の前の地面が盛り上がったと思った次の瞬間、骨張った手が突き出てきた。手は空を掴むように伸び、やがて腕が、肩が、頭が現れる。土を振り落としながら、ひとりの死者が立ち上がった。ひとり、またひとり──みるみる間に、百、いや、千以上もの骸が地上に這い出してきた。
骸たちは、ガーナリンの城から湧き出す騎兵の馬に飛び乗り、あるいは歩兵たちの列に加わって、女王軍に向かって行った。
ガーナリン平野の地面の下には、何万もの兵士が眠っている。その兵士たちを、曙神が呼び起こしてしまったのだ。現実の戦場に居る者たちの目には映らなくとも、マタルにはそれが見えていた。
死者たちが、生きている者たちの精気を、剣を握る力を、地面を踏みしめる力を奪ってゆく。
この、硲の世界と現実の世界とは、決して別々に分かたれたものではない。互いに影響を及ぼし合っている。その証拠を、マタルは目の当たりにしていた。
女王の言葉に奮い立った兵たちの目に宿った光はすでに消えかけていた。光を失い、ここで死ぬより他にないのだと、悟った者から倒れていった。
「隊列を崩すな! 固まれ!」
「陛下をお守りしろ!」
「進め! 前進しろ!」
何十もの命令がてんでに飛び交う。戦旗は千切れ、踏みにじられ、無数の剣も、槍も、動揺に震えていた。
あっという間に、女王軍は取り囲まれた。がちゃがちゃと鋭い音を立てる鎧と、盾の壁が何重にも軍勢を包囲する。
「だめだ……」
マタルは手を伸ばした。
自分の中から消えてしまった曙神の力の欠片が、ほんの少しでも残ってはいないかと。だが、駄目だ。何度呼びかけても、女神はマタルの声に応えてはくれない。
勇ましい戦喚は、いまや叫喚に変わっていた。
自分は滅びを目にするのだろうか?
自由を掲げて立った一国の主が死んでゆくのを、なすすべもなく見ていることしかできないのだろうか。
いや、そんなことはしない。
マタルは呻きながら、ゆっくりと身を起こした。喘ぎと共に空気を吸い込み、地面に手を突いて、立ち上がる。
ガーナリンの街の頭上に咲く、大輪の薔薇の花が萎れかけている。その姿を見て、マタルは気付いた。
曙神は、俺たちを相手に戦いたがっているわけじゃない。ただ苦しんで、食われまいと抗っているだけなんだ。その抵抗が、あちらの世界にも影響を及ぼしている。
それなら、いまここで俺がすべきことは、何だ?
「俺は──」
俺は戦うためにここにきた。なら、戦わなければ
ホラスを見捨てるのか、と、心の中の声が言う。その瞬間、彼への想いが、思慕が燃え上がる。
本当は、すべてを見殺しにしてでも彼を助けに行きたい。世界と引き換えにしても良いほど、彼を想っている。彼の命が絶たれるときは、自分が死ぬときだ。確かに、そう思う。
けれど、彼と離れて、世界を巡ってわかった。この戦いに加わると決めたからには、それでは駄目なのだ。
何かを愛するということは──自分を失う覚悟をすること。時に自分自身よりも重い、愛そのものを犠牲にしなければならないとしても……正しい選択を胸に、しっかりと立つことだ。
神を殺した男が何を、と言われるかもしれない。
けれど、今ならわかる。あれは過ちなどではなかった。
二人が生まれたこの世界を、よりよくするための選択だった。だから、俺は──俺たちは贖罪のためではなく、最初の気持ちに正直に戦い続けるべきなんだ。世界をよくするために。そのために生きて、生きる。
「ホラス……俺──」
目を閉じると、彼の顔が浮かぶ。頷いて、微笑んでくれる。
お前の思うとおりにするんだ、と。
そういうひとだから、マタルは愛した。強くなった。
「俺、行くよ」
マタルは目を閉じた。そして、自分の奥底に眠っている力に呼びかけた。
身の内に根を張る茨の力ではなく、死人たちの帰り路を照らす暁の力でもなく、いままでずっと己の血の中で燃えていた、根源に宿る力に命じた。いまこそ燃え上がれと。
これまでは、曙神の力を借りて戦ってきた。けれど、俺は魔女だ。曙神と出会う前から──生まれた時から、俺はサーリヤ族の魔女なんだ。
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「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
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【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
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※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
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