妹に婚約者を寝取られた令嬢、猫カフェで癒しのもふもふを満喫中! ~猫カフェに王子と宮廷魔法使いがいて溺愛はじまりました!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます

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5、そこがキミに伝われば、外野なんてどうでもいいよ

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 そして、数週間後。
 
「はあっ!? 子どもができてなかっただって? お、俺を騙したのかっ!」
「あ、あたしのお腹に脂肪しか詰まってないですって? ……あらっ、フロイス様、お顔にひどい発疹が……」
「触るな、この詐欺師!」
「さ、詐欺師ですって!」 

 フロイスとタレイアが王都の広場で、衆人環視のもとで大喧嘩している。
 
 王城に向かう馬車の中で、私と家族は偶然その光景を見てしまった。
 
「どうして人目の多いところでわざわざ恥を晒してしまうの、あの子たち。やめてぇ~~!」 
 
 母は顔を覆って嘆き、父も頭痛をこらえるように手を禿げ頭にあてている。
 
「あの娘は修道院に入れようか。もはや家名の恥でしかない……とりあえず、騎士に命じて広場で醜態をさらすのをやめさせよう」
「父さん、母さん。教育に失敗したのは親の責任ですよ。修道院に押し付けないで責任取ってください」
 
 家族会議が紛糾する馬車が王城に到着すると、カジミール様が出迎えてくれた。

 そう、お城から正式な手紙が届くまでは「まさか」と思っていたけど、殿下と呼ばれてたこの人、なんと本当に王子様だったのだ!

「僕のお城へようこそ、レディ・シャルロット。そして、ブロワ男爵家の皆さん」
 
 白い手袋に覆われたカジミール様の手が、自分へと差し伸べられる。

「本日、正式に婚約を申し込ませていただきます」

 カジミール様はそう言って、私の指を包み込むように掬い上げ、左手の薬指にキスをした。

 特別な指輪をめてもらう予定の指先に落とされた口付けは、なんだかとても神聖な感じ。

「聞けば、妹令嬢や元婚約者の不義理に遭い、たいそう不憫な境遇だったのだとか」
「いえ、『たいそう不憫』は大げさです……」
「ぜんぜん大袈裟じゃないよ姉さん?」

 弟が後ろでつっこみして、「黙ってなさい」とお母様に口を塞がれている。
 ごめん弟、ちょっと静かにしてて。

「弱音ひとつ吐かず、前向きに猫カフェで仕事を頑張ってるキミが素敵だなと思ったよ。本音を言うとそれは建前で、一目惚れと絵を褒めてもらったという理由が7割くらいなのだけど」
「殿下、建前をおっしゃるなら本音は隠しましょう。というか、一目惚れはまだしも絵を褒められただけで惚れないでください」
「エミル、僕は『理由はひとつだけじゃなくていっぱいある』って話をしてるんだ。いちいち途中で茶々を入れないでくれ」

 あっちはあっちで、三角帽子の店員さんがカジミール様の後ろでつっこみしている。あの人は、実は宮廷魔法使いの肩書き持ちらしい。
 
「あまり見かけない珍しい髪の色で、まず目を惹かれたんだよね。それに、猫が好きなんだなと感じる眼差しがとても心を揺さぶった。描きたいと思った」
「待って。『描きたいと思った』ってなんですか?」
「殿下、それは恋ではなく創作意欲を刺激されたというお話しですね」

 弟とエミルさんが声をそろえてつっこみしている。この二人、さては気が合うな。
 
「エミル、お前はちょっと静かにしててくれ……シャルロット、行こう」

 外野を黙らせつつ、カジミール様は私の手を繋いで王城を案内してくれた。

「きっかけはどうであれ、つまり僕はキミに惚れたってことを言いたかった。そこがキミに伝われば、外野なんてどうでもいいよ!」
 
 お日さまのように笑うカジミール様は、明るい未来の象徴のようだった。

 何日も接していて、私はこの人についてある種の安心感を抱いている。
 正直に思っていることを言っても大丈夫、という安心感だ。
 
「カジミール様。私、もともと結婚ってあまり興味なかったんです。しなくていいならしない方が助かると思ってたんです」
「そうなの? まあ、建前では貴い義務と言いつつ、本音では自由に生きられない自分を嘆く貴族令嬢は多いと聞くね」

 ほら、「そんなことを言うなんて」みたいな反応をしない。

 手をひかれ、庭園につながるアーチをくぐる。
 
 優雅に咲き誇る花々の香りに満ちた庭園は、淡いピンクや白の珍しい花々が宝石のような輝きを放っていた。右も左もキラキラしていて、とても綺麗!
 
「『宝石花の庭園』というんだ。僕が名前をつけたんだよ」

 カジミール様はそうおっしゃり、噴水の近くの白いガーデンチェアに私を座らせた。

 噴水の水しぶきがキラキラと太陽光を受けて虹色に輝いている。
 周りに咲く花々もまた、水しぶきを受けて煌めいていて――なにより美しいのは、私の前に膝をついて指輪を差し出すカジミール様だった。

「虫よけ、くらいに思ってくれても構わない。無理に僕を愛さなくても、構わない」

 そっと提案する声は、思いやり深くて、余裕がある。

「僕が婚約者だと、他の縁談が全部引っ込む。我ながらいい虫よけになれると思うよ」
「……カジミール様は魅力的な方なので、愛さない方が難しそうです」

 私がおずおずと言うと、明るい笑い声が庭園に響いた。

「では、ぜひ僕を愛してくれ。キミが僕を愛してくれる何倍も、僕はキミに愛を捧げよう」

 喜びをあふれさせるように言って、カジミール様は私の唇に甘い口付けをくれた。

 唇が初めて触れ合った瞬間、時間が止まったみたいに特別な感じがした。
 ぎゅっと目をつぶったのに、魔眼が魔力を帯びて、じんじんと熱くなる。

 自然とあふれた涙へと愛しそうに唇を寄せてから、カジミール様は「これは精霊に祝福された聖なる眼だね」と驚いたように呟いた。――誰も気づかなかったこの目に、彼は気づいてくれたのだ。

「こ、この瞳は……」

 本当は、自分が禍々しい瞳を持ってしまったと思って、ずっと不安だった。

「悪いものではない。良い瞳だ」

 ああ、欲しかった言葉が、安心させてくれる眼差しが、笑顔が、温もりが、ここにある。
  
「キミはやっぱり、特別なんだなぁ……聖女画を描きたいな。ぜひ描きたい。よーし、描くぞ!」
  
 興奮気味に頬を紅潮させて、カジミール様はスケッチブックを取り出している。その様子が日常感を強めてくれて、私は肩の力を抜いて笑った。

「カジミール様のおそばにいると、安心します」
「僕はキミといるとやる気がどんどん湧き上がるよ。これは『ウィンウィン互いにメリットがある』と言うのだね」 

 真夏の太陽よりも眩しく彼が笑うから、私はそっと呟いた。

「私……そんなあなたが、大好きです」

 ……その後、私は聖なる眼をもつ聖女として公表され、彼と結婚したのだった。
 
  
 ――Happy End!
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感想 2

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みんなの感想(2件)

月華
2024.01.24 月華

この話を寝そべって読んでいる私の上に飼い猫ちゃんが香箱座り中。
猫カフェ気分や~~♪
でもイケメン王子はいない(;;)

ところでおバカ妹は本当にこの家族と血がつながっているのでしょうか・・・・?
王族と結婚する前に縁切っとかんと(なんなら存在抹消しなきゃ)あかん存在・・・・・

2024.01.24 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます

月華さま

(=゚ω゚)ノニャーン♪ 飼い猫ちゃんかわいい〜〜♪
私は猫ちゃんも王子もいませんが(;;)

おバカ妹は縁切った方がええかもですね・・・・・

解除
ぱら
2024.01.13 ぱら

これ読んで余計に猫カフェ行ってみたい!
ってなったよ。(*´艸`*)

2024.01.14 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます

ぱらさま

ありがとうございます! 猫カフェ、ぜひ行ってみてください~♡

解除

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