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ご機嫌で久遠は屋敷を歩いている。先ほどまでかええないー!!とごねていた子とは思えない。

そんな久遠につられてご飯を食べた部屋に戻るとそこには昼餉の用意をしている晴臣さんがいた。



「お帰りなさい。お屋敷探検は楽しかったですか?」

「う!」

「それはよかった。昼餉の時間ですよ。九郎も貴方の分もあります」

「やった!しーちゃん座るぞ。ほらここ!」

「しちゃこち!くろちゃあち!」

「しーちゃんはこっちだ!!」

「やっ!!!!!!」

「喧嘩しない。こうすればいいでしょう?」



晴臣さんがそう言って三つの膳を横に置いて、中央に俺を座らせる。そして左と右に久遠と九郎を置いた。

途端にぴたりと叫ぶのをやめて、にこにこ笑顔になる久遠と大人しく座って食べ始める九郎。

さ、流石大人……。

そう思って彼を見る。そう言えば彼の腰には刀が刺さっていた。

つまりは剣術の心得があるという事だろうか。



「これが気になりますか?しーちゃん」



俺の視線に気づいて、晴臣さんはそう言った。俺は慌てて頭を下げて謝る。



「え、あ、ごめんなさい、不躾に見過ぎました」

「いいえ。ご飯食べ終わったら持ってみます?」

「いいんですか!?」

「勿論」



まさか、そんな提案をされるとは思わずにこくこくと頷く。前の人生ではあの大太刀以外触れる機会がなかった。だから他の刀も気になっていた。折れてしまった時に他の刀があった方がきっと戦いやすいし、もし人型の妖魔が出てきて刀を扱っていたらその特性などを知っていた方が有利だ。

初対面の子にどこまで許して貰えるか分からないが、彼の剣技でも見せて貰ったらかなり勉強になる。

久遠をもっと確実に守れる。



「げー、あれかなり重いぞ?法術の方がよくない?」

「あ、僕は法術使えなくて……」

「あー、そういう事。でもなら都から出なければいいじゃん」

「万が一がありますから」

「ふうん?」

「九郎も少しぐらいは興味を持ちなさい。護身術は習っておいて損はありませんよ」

「やだね。それならまだ法術習った方がいいし~」

「はあ」

晴臣さんは頭が痛いとでもいうようにため息をつく。しかし、やる気がない人物をそこまで強制する気はないらしい。とはいえ、俺も護身術ぐらいは習った方がいいと思う。妖魔だけが敵とは限らないし。

とはいえ今はご飯だ。この昼餉も美味しそうだ。

舌鼓を打ちつつ久遠にあーんをしながら食べ終えると、晴臣さんは庭の方に俺を案内してくれた。


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