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守り神
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ふと、視線を感じてその先に小石を投げた。
うお!?だの、わっ!?だの人の声がしたかと思えばがさごそと草むらが動いてやあっと久臣さんと数名の黒装束の男女が現れた。
「す、すみません!!」
「大丈夫だよ~。熱心だね。くーちゃんはもう寝たの?」
慌てて頭を下げて謝ると久臣さんがそう言った。申し訳ない。どう考えても俺が悪いのに。
それに久臣さんの質問にうまく答えられる自信がなくって口ごもるとぽんぽんっと彼に頭を撫でられる。
それからびしっと自分の後ろに控えている人たちに指さした。
「食べもの出して!!!」
「……え?」
「お腹を空かせている子供がいるのに!君達は何もしないわけ!?」
久臣さんがそういうと皆が大慌てで袂や懐を漁ってどうぞ!と懐紙に包まれているものや、笹で包まれているものなどを渡された。
え、え?
「い、いえ、結構で……」
「こんなものばっかりでごめんね?お外は寒いからこれ羽織って、火おこして!」
「大丈夫です!!」
「だめでーす!」
久臣さんが羽織りを俺に被せた後に、指示を出して祠の前に枝を集めて火を起こす。その間に俺に色んな食べ物を渡してくれた人たちが法術で土を盛り上げて竈を作ったり、座る場所を作って綺麗な手拭いを置いてくれる。
俺はどこぞのお姫様にでもなったんですか?という気分である。
「あ、あの、あのあの……!」
「大丈夫だからね!お外でも快適に過ごせるように整備するから!」
「いや、大丈夫ですから!」
「遠慮しないで!」
遠慮とかではなく!こんなにやって貰う意味が分からない!
そう思って訴えるが、全く聞き入れることはなくいつの間にか簡易野営地が出来上がっていた。
なんてこった。皆さん手際が良すぎる。
「あ、ありがとうございます……」
「いいえ~。さて最後に……」
久臣さんはくるりと後ろの祠を見る。そしてその祠に向かって参拝を行った。じっと手を合わせて目をつぶり暫く経つと、妖魔がもっと遠くの方に去っていった気配を感じた。なんだ?結界か何かでも張られた……?
「よし、守り神様にお願いしたからしーちゃんはこの祠から遠くに行っちゃだめだよ?」
「守り神様、ですか?」
「そ。だからここら辺一帯は都の中と同じくらい安全なんだよ」
知らなかった。そんな立派な神様がここに祀られていたとは……。だから久遠たちがあの屋敷で住んでいるのであろう。
成程。妖魔の危険は少ないという事か。
……つまり、祠を壊した可能性が高いのは人って事?
「久臣さん」
「え?どうしたの?」
ぐいっと久臣さんの裾を掴む。すると彼は腰をかがめて俺の目線に合わせてくれた。
彼は本当に優しい人だ。そんな人にこんな我儘を言っていいのかとても心苦しいが言わないと伝わらない。
「お仕事、忙しいですか?」
「ん?そうでもないよ?」
「そうですか。差し出がましいですが、出来るだけ屋敷にいるようにしてほしいです」
多分忙しいんだろうけどそんな事を言ってくれた。久遠のお父さんは本当に優しい。久遠の将来は安泰だな。
俺の話にうんうん頷いて真剣に聞いてくれるところもとても好感が持てる。
あれ?凄く笑顔になったな?
「そっかあ!しーちゃん俺が居なくて寂しかったかー!!」
「……あ、はい」
「そっかそっかぁ!」
わしゃわしゃと頭を撫でられた。そういうわけではないがそういうことにしておこう。
この人がいるだけで護衛なのか人がいるし、この人自身も相当強い。生存確率はグーンと上がるだろう。理想は、未然に防げることであるが、情報がなさ過ぎてそれは無理だ。
今は俺にできることをしよう。
「じゃあ、ここより屋敷に行かない?」
「いえ。迷惑になりますので」
「……そう?でもほら、こんな外は危ないでしょ?」
「都と同じくらい安全なんですよね?」
「んーあー、それは……」
久臣さんが言葉を濁す。
妖魔の心配はないだろう。こんなに快適な野営地も作って貰ったんだし、いったい何が引っ掛かっているんだろうか?
そう思って気が付いた。
……成程、人か。ここら辺に盗賊でも湧いているのか?都の外で活動できるほどだから相当強いはずだ。久臣さんはその処理にでも追われているのだろうか。ならば納得できる。
じゃあ、まずそれを俺が処理した方がいいな。
じっと久臣さんを見つめて少し首を傾げる。
何も分からない子供のふりは心苦しいが、これも久遠の為だ。
うっと久臣さんが胸を抑えた。
「でも屋敷の方が、ほら快適じゃないかな?俺もいるし!」
「大丈夫です。くーちゃんによろしくお願いします」
「あー……うん分かったよ」
久臣さんが引いてくれた。良かった。流石に抱えられて強制的に連れていかれたら俺でも抵抗できないから。
頭を撫でられて「風邪ひかないようにね!!また見に来るから!!」と言ってくれた。そこまで気にかけなくてもいいのに……。
うお!?だの、わっ!?だの人の声がしたかと思えばがさごそと草むらが動いてやあっと久臣さんと数名の黒装束の男女が現れた。
「す、すみません!!」
「大丈夫だよ~。熱心だね。くーちゃんはもう寝たの?」
慌てて頭を下げて謝ると久臣さんがそう言った。申し訳ない。どう考えても俺が悪いのに。
それに久臣さんの質問にうまく答えられる自信がなくって口ごもるとぽんぽんっと彼に頭を撫でられる。
それからびしっと自分の後ろに控えている人たちに指さした。
「食べもの出して!!!」
「……え?」
「お腹を空かせている子供がいるのに!君達は何もしないわけ!?」
久臣さんがそういうと皆が大慌てで袂や懐を漁ってどうぞ!と懐紙に包まれているものや、笹で包まれているものなどを渡された。
え、え?
「い、いえ、結構で……」
「こんなものばっかりでごめんね?お外は寒いからこれ羽織って、火おこして!」
「大丈夫です!!」
「だめでーす!」
久臣さんが羽織りを俺に被せた後に、指示を出して祠の前に枝を集めて火を起こす。その間に俺に色んな食べ物を渡してくれた人たちが法術で土を盛り上げて竈を作ったり、座る場所を作って綺麗な手拭いを置いてくれる。
俺はどこぞのお姫様にでもなったんですか?という気分である。
「あ、あの、あのあの……!」
「大丈夫だからね!お外でも快適に過ごせるように整備するから!」
「いや、大丈夫ですから!」
「遠慮しないで!」
遠慮とかではなく!こんなにやって貰う意味が分からない!
そう思って訴えるが、全く聞き入れることはなくいつの間にか簡易野営地が出来上がっていた。
なんてこった。皆さん手際が良すぎる。
「あ、ありがとうございます……」
「いいえ~。さて最後に……」
久臣さんはくるりと後ろの祠を見る。そしてその祠に向かって参拝を行った。じっと手を合わせて目をつぶり暫く経つと、妖魔がもっと遠くの方に去っていった気配を感じた。なんだ?結界か何かでも張られた……?
「よし、守り神様にお願いしたからしーちゃんはこの祠から遠くに行っちゃだめだよ?」
「守り神様、ですか?」
「そ。だからここら辺一帯は都の中と同じくらい安全なんだよ」
知らなかった。そんな立派な神様がここに祀られていたとは……。だから久遠たちがあの屋敷で住んでいるのであろう。
成程。妖魔の危険は少ないという事か。
……つまり、祠を壊した可能性が高いのは人って事?
「久臣さん」
「え?どうしたの?」
ぐいっと久臣さんの裾を掴む。すると彼は腰をかがめて俺の目線に合わせてくれた。
彼は本当に優しい人だ。そんな人にこんな我儘を言っていいのかとても心苦しいが言わないと伝わらない。
「お仕事、忙しいですか?」
「ん?そうでもないよ?」
「そうですか。差し出がましいですが、出来るだけ屋敷にいるようにしてほしいです」
多分忙しいんだろうけどそんな事を言ってくれた。久遠のお父さんは本当に優しい。久遠の将来は安泰だな。
俺の話にうんうん頷いて真剣に聞いてくれるところもとても好感が持てる。
あれ?凄く笑顔になったな?
「そっかあ!しーちゃん俺が居なくて寂しかったかー!!」
「……あ、はい」
「そっかそっかぁ!」
わしゃわしゃと頭を撫でられた。そういうわけではないがそういうことにしておこう。
この人がいるだけで護衛なのか人がいるし、この人自身も相当強い。生存確率はグーンと上がるだろう。理想は、未然に防げることであるが、情報がなさ過ぎてそれは無理だ。
今は俺にできることをしよう。
「じゃあ、ここより屋敷に行かない?」
「いえ。迷惑になりますので」
「……そう?でもほら、こんな外は危ないでしょ?」
「都と同じくらい安全なんですよね?」
「んーあー、それは……」
久臣さんが言葉を濁す。
妖魔の心配はないだろう。こんなに快適な野営地も作って貰ったんだし、いったい何が引っ掛かっているんだろうか?
そう思って気が付いた。
……成程、人か。ここら辺に盗賊でも湧いているのか?都の外で活動できるほどだから相当強いはずだ。久臣さんはその処理にでも追われているのだろうか。ならば納得できる。
じゃあ、まずそれを俺が処理した方がいいな。
じっと久臣さんを見つめて少し首を傾げる。
何も分からない子供のふりは心苦しいが、これも久遠の為だ。
うっと久臣さんが胸を抑えた。
「でも屋敷の方が、ほら快適じゃないかな?俺もいるし!」
「大丈夫です。くーちゃんによろしくお願いします」
「あー……うん分かったよ」
久臣さんが引いてくれた。良かった。流石に抱えられて強制的に連れていかれたら俺でも抵抗できないから。
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