32 / 208
2
しおりを挟む
あ、誰か置いてったみたいだし、どうしよう。寒いよね。
ちらっとそちらを見る。すると、視線に気づいたのか彼はひょっこり姿を現した。
「いやいやごめんね?命令でさ~」
「あ、いえ。寒いですよね?火に当たりませんか?」
「え、良いのー?なら遠慮なく……」
そう言って彼は俺の前に座って火に当たる。あったけーっと声を漏らして、手をこすり合わせていた。こんな寒空の下に晒してしまって申し訳ない。けれど俺も引けない。
「さっき、久臣さんが言葉を濁していたんですけど、他に何か危ない事でもあるんですか?」
情報を集めるために彼に声をかける。不安そうな声を出して伺うと彼はじっと俺を見つめた。
「怖いなら家帰れば?」
そうして彼は俺にそう言った。
怖くはないが、家帰った方がいいのは分かる。とはいえ、今家に帰っても入れて貰えない確率の方が高いので却下だ。
「あのお方が優しくて、若様の目に留まったとはいえ少し図々しすぎじゃないかなあ?物乞い君」
「はい」
「……そうだ。もっと可哀想に見れるように痣でも作る?」
そう言って彼は腰に差している刀を手にした。ぐるぐると鞘が抜けないように紐で固定して軽く素振りをした。それから俺の方を見てにっこりと笑顔を見せる。そして思いっきり俺に向かって振り下げた。
俺はその太刀筋をぼんやりと見ながらぴたりと眼前で止まる。
あれ?叩かないのか?
俺はそう思って心底不思議そうに彼を見る。
「どうしたんですか?」
「いや、なんで避けないの?目もつぶらないし防御姿勢も取らないし」
「する必要ありますか?叩きたいならばお好きなように。気の済むまでどうぞ」
目をつぶった方がよかったのか。何か腕を手にした方がよかったのか。ならばその通りに行動をする。
無理に抵抗するともっと酷いことになるのを知っているので一時だけ痛みを我慢した方がましだった。だから彼が気の済むまで殴ればいいと思っているとすっと彼が離れた。
「殴るのはやめた」
「そうですか」
「質問に答えてあげる。北門の方で盗賊による被害が出てるんだよ」
「北……」
あちらは確か商家が多い。だから其方に盗賊が集中するのは分かるが、今になって活発に行動するのはどうしてだろうか?
「界隈では有名な賊だよ。体のどこかに傷があるっていう噂。こっちまで来るとは思わなかったんだけどね」
ここまで来たということは勢力を拡大しているのか、それとも逃げてきたのか。どちらにしても面倒だ。
だから、追い出そう。ここは危ないと認識させれば拠点を変えるだろう。
後はどうやって追い出すか、だ。一先ず、様子見と情報を得るためにあちらに行った方がよさそうだ。
「盗賊なんかに捕まったらお前みたいな子供は一生慰み者になって奴隷になる運命だよ?だから安全なお家に帰ったら?」
「……ああ」
この人心配してるのか俺の事。善意でやってくれてることだし、あまり俺の事情を言っても意味ないだろう。一般的に子供を殴ったり追い出したりするような親は少ないのだから。
でも、この人はその可能性を考えていないようなので逆手に取ろう。
「そうですね」
「! そうそう!子供はこんな危ない場所にいちゃだめだからね!送るよ?」
「いいえ。俺の親が心配するので……」
家族に対して何か思うところがある人だったらきっと、それを引き合いにすればそれ以上突っ込んでいかないだろう。その予想は当たって彼はあーっと納得したような言葉を口にする。
「確かに。俺怪しいもんね。じゃあ都の中までだったらいい?」
「はい」
「うんうん。あ、お菓子あげる~。これ日持ちするから」
「ありがとうございます」
彼は言葉通り、俺を都の中まで送り俺の姿が門から見えなくなるまで見送った。
門が見えなくなり、俺を見ている視線も消えたところで北門の方に急ぐ。
盗賊。盗賊の名前は何だろう。前はそんな話なんて出てこなかった。いかに俺が平和ぼけしていたということがよく分かる。
北門についた。見張りのものは一応いるが塀を飛び越えれば目立たずに済む。かなり高いが、これぐらいだったら走れるので簡単に超えられるのだ。こっそり北門を出る。妖魔は出ているがあまり強いのはいなさそうだ。小石で彼らを殺し、そろそろと警戒しながら都から離れる。ずいぶんと離れてしまったが、賊の気配は……。
ひひーんっと馬の嘶きが聞こえ蹄の音がする。ばっとそちらに注視すると遠くの方で勢いよく荷車がこちらに向かっていた。また、それを囲むようにして馬がついている。身なりから賊のようだ。運のない。既に久臣さんたちが帰った後で警備のものはもう少し先だ。
……刀を持っているし、武器の調達にもぴったりだ。
自分の幸運に感謝しながら小石を投げた。可哀そうだが馬の方に。
一人落馬、二人落馬。残念なことに後続の馬に踏まれて悲鳴を上げている。いや、あれ死んだな。刀を後で回収しようと思いながらもう一度小石を投げようとして弓矢が飛んできたので反射的につかむ。
正確だな。投げた方向から予測して打って来てるのか。誰が弓矢を打っているのか確認する前に荷車が近づいており、通り過ぎた。
俺も逃げるかと妖魔の中にわざと入る。俺に襲い掛かってくるがそれを抜けて兎に角賊から離れる。流石に妖魔の中に突っ込んでくるような者はいないようだ。
妖魔はわらわらやってくるがそれを小石でぶち抜いて様子をうかがう。
武器の回収に行きたいが、彼らはどんな行動をとるのだろうか。諦めた方がいいだろうか……。でも武器がないのは不利だ。隙を見て回収を……。
凄い勢いで矢が飛んできた。またしてもそれを反射的に掴んで何かが矢先についていうのに気づく。
「しま……っ!」
札がついておりそれを見た瞬間眠気が襲ってくる。がくんと自分の体がうまく動けずに瞼が落ちた。
ちらっとそちらを見る。すると、視線に気づいたのか彼はひょっこり姿を現した。
「いやいやごめんね?命令でさ~」
「あ、いえ。寒いですよね?火に当たりませんか?」
「え、良いのー?なら遠慮なく……」
そう言って彼は俺の前に座って火に当たる。あったけーっと声を漏らして、手をこすり合わせていた。こんな寒空の下に晒してしまって申し訳ない。けれど俺も引けない。
「さっき、久臣さんが言葉を濁していたんですけど、他に何か危ない事でもあるんですか?」
情報を集めるために彼に声をかける。不安そうな声を出して伺うと彼はじっと俺を見つめた。
「怖いなら家帰れば?」
そうして彼は俺にそう言った。
怖くはないが、家帰った方がいいのは分かる。とはいえ、今家に帰っても入れて貰えない確率の方が高いので却下だ。
「あのお方が優しくて、若様の目に留まったとはいえ少し図々しすぎじゃないかなあ?物乞い君」
「はい」
「……そうだ。もっと可哀想に見れるように痣でも作る?」
そう言って彼は腰に差している刀を手にした。ぐるぐると鞘が抜けないように紐で固定して軽く素振りをした。それから俺の方を見てにっこりと笑顔を見せる。そして思いっきり俺に向かって振り下げた。
俺はその太刀筋をぼんやりと見ながらぴたりと眼前で止まる。
あれ?叩かないのか?
俺はそう思って心底不思議そうに彼を見る。
「どうしたんですか?」
「いや、なんで避けないの?目もつぶらないし防御姿勢も取らないし」
「する必要ありますか?叩きたいならばお好きなように。気の済むまでどうぞ」
目をつぶった方がよかったのか。何か腕を手にした方がよかったのか。ならばその通りに行動をする。
無理に抵抗するともっと酷いことになるのを知っているので一時だけ痛みを我慢した方がましだった。だから彼が気の済むまで殴ればいいと思っているとすっと彼が離れた。
「殴るのはやめた」
「そうですか」
「質問に答えてあげる。北門の方で盗賊による被害が出てるんだよ」
「北……」
あちらは確か商家が多い。だから其方に盗賊が集中するのは分かるが、今になって活発に行動するのはどうしてだろうか?
「界隈では有名な賊だよ。体のどこかに傷があるっていう噂。こっちまで来るとは思わなかったんだけどね」
ここまで来たということは勢力を拡大しているのか、それとも逃げてきたのか。どちらにしても面倒だ。
だから、追い出そう。ここは危ないと認識させれば拠点を変えるだろう。
後はどうやって追い出すか、だ。一先ず、様子見と情報を得るためにあちらに行った方がよさそうだ。
「盗賊なんかに捕まったらお前みたいな子供は一生慰み者になって奴隷になる運命だよ?だから安全なお家に帰ったら?」
「……ああ」
この人心配してるのか俺の事。善意でやってくれてることだし、あまり俺の事情を言っても意味ないだろう。一般的に子供を殴ったり追い出したりするような親は少ないのだから。
でも、この人はその可能性を考えていないようなので逆手に取ろう。
「そうですね」
「! そうそう!子供はこんな危ない場所にいちゃだめだからね!送るよ?」
「いいえ。俺の親が心配するので……」
家族に対して何か思うところがある人だったらきっと、それを引き合いにすればそれ以上突っ込んでいかないだろう。その予想は当たって彼はあーっと納得したような言葉を口にする。
「確かに。俺怪しいもんね。じゃあ都の中までだったらいい?」
「はい」
「うんうん。あ、お菓子あげる~。これ日持ちするから」
「ありがとうございます」
彼は言葉通り、俺を都の中まで送り俺の姿が門から見えなくなるまで見送った。
門が見えなくなり、俺を見ている視線も消えたところで北門の方に急ぐ。
盗賊。盗賊の名前は何だろう。前はそんな話なんて出てこなかった。いかに俺が平和ぼけしていたということがよく分かる。
北門についた。見張りのものは一応いるが塀を飛び越えれば目立たずに済む。かなり高いが、これぐらいだったら走れるので簡単に超えられるのだ。こっそり北門を出る。妖魔は出ているがあまり強いのはいなさそうだ。小石で彼らを殺し、そろそろと警戒しながら都から離れる。ずいぶんと離れてしまったが、賊の気配は……。
ひひーんっと馬の嘶きが聞こえ蹄の音がする。ばっとそちらに注視すると遠くの方で勢いよく荷車がこちらに向かっていた。また、それを囲むようにして馬がついている。身なりから賊のようだ。運のない。既に久臣さんたちが帰った後で警備のものはもう少し先だ。
……刀を持っているし、武器の調達にもぴったりだ。
自分の幸運に感謝しながら小石を投げた。可哀そうだが馬の方に。
一人落馬、二人落馬。残念なことに後続の馬に踏まれて悲鳴を上げている。いや、あれ死んだな。刀を後で回収しようと思いながらもう一度小石を投げようとして弓矢が飛んできたので反射的につかむ。
正確だな。投げた方向から予測して打って来てるのか。誰が弓矢を打っているのか確認する前に荷車が近づいており、通り過ぎた。
俺も逃げるかと妖魔の中にわざと入る。俺に襲い掛かってくるがそれを抜けて兎に角賊から離れる。流石に妖魔の中に突っ込んでくるような者はいないようだ。
妖魔はわらわらやってくるがそれを小石でぶち抜いて様子をうかがう。
武器の回収に行きたいが、彼らはどんな行動をとるのだろうか。諦めた方がいいだろうか……。でも武器がないのは不利だ。隙を見て回収を……。
凄い勢いで矢が飛んできた。またしてもそれを反射的に掴んで何かが矢先についていうのに気づく。
「しま……っ!」
札がついておりそれを見た瞬間眠気が襲ってくる。がくんと自分の体がうまく動けずに瞼が落ちた。
52
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。
とうや
BL
【6/10最終話です】
「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」
王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。
あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?!
自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。
***********************
ATTENTION
***********************
※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。
※朝6時くらいに更新です。
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる