【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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鈍器お試し

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「す、素晴らしい。ぴょんぴょん跳ねてとても可愛い!そのまま!そのままその岩を砕いてくれ!!」

「大丈夫なの?梓君なんかおかしくない?やめたほうが良くない?」



大丈夫だよそーちゃん。多分、見てるの俺じゃなくて俺の持ってるこのでかい鈍器。

どうしてこうなっているのかは数分前の事。

数日、鍛冶場に籠っていた紫さんと梓さんが出てきた。梓さんは興奮気味で俺を引きずるように鍛冶場に連れていくとそこには大きな槌があった。残念ながら二人は持てないようで床に置いている。



「しーちゃん……っ!!」

「いやごめん。梓にいくらなんでもこれは無理だって言ったんだけど聞かなくて……。持てなくても大丈夫だから」

「あ、いえ大丈夫です」



期待のこもった目で梓さんが俺を見ている。その隣で紫さんは申し訳なさそうな表情をしているが、気にしないで欲しい。多分持てる。

そう思って持ち手をとってそのまま持ち上げた。

紫さんがあんぐりと口を開けた。梓さんは両手を上にあげて何やら雄たけびを上げる。



「そ、そのまま、そのまま庭で試しに何か砕いてほしい!!こっちきて!!」



梓さんがその武器を持った俺を庭に連れて行こうとしてはっと我に返った紫さんが出入り口をふさぐ。



「うちの庭ぶっ壊す気かお前!!だめに決まってんだろ!!」

「お願いします!壊れてもいい場所を用意してください!!」

「しょ、正気じゃねえ!自分の庭でやれ!」

「分かりました!しーちゃん連れてっていいですか!!」

「しーちゃんは置いてけ!!」

「しーちゃんがいないと!何の意味もないじゃないですか!!」

「あ、あの、ちょっとした素振りだけとか……」



二人の言い合いが始まったので妥協案としてそれを出すがかっと梓さんが目を見開いて全力で首を振る。



「試し打ちは絶対に譲れない!」

「妥協しろ!しーちゃんの案採用決定。これは師匠命令」

「絶対に嫌だ!!」



ああああ。俺では二人の喧嘩を止められない。どうやってこの二人は喧嘩を収束させているのだろうか。

一先ず、持っている武器を静かに床に置こうとしてひょこっと出入り口からそーちゃんが顔を出した。



「? なに騒いでんの?」



そこで、紫さんと梓さんの口論が収まり同時に獲物を狙う獰猛な動物の目をして素早くそーちゃんに近づいた。そーちゃんは何かを感じ取って心底嫌そうな顔をしている。



「うわ、え、なに?」

「作って!」

「はあ?」

「でかい岩。でかい岩でいい!あと周りに被害出ないように結界張って欲しい!」

「なんで。疲れるからヤダ」



梓さんがそう言ってそーちゃんに詰め寄るがすげなく断られる。しかし、次に紫さんの援護によって空気が変わる。



「しーちゃんが!宗太の法術見たいって言ってましたぁ!!」

「え」



二つの視線が一気に俺に集まる。

一つは、紫さんの言葉が本当なのか?という期待のこもった目でもう一つは話を合わせてくれという切実な目で。



「あ、うん、そう」



俺は、戸惑いながらもこくんと頷いた。すると、先ほどまでやる気のなさを見せていたそーちゃんがふーんっと声を出す。



「いいよ」

「よっしゃあ!」

「ついに!俺の武器が!法術なしの純粋な鈍器が陽の目を浴びる!!」

「文字通りのことしか起こらないけどな!!誰もそんな重量級武器使えねえよ!」



ということで、現在。そーちゃんの法術によってできた大きな岩と万が一その岩が砕けて飛び散り被害を受けないようにと結界をその周りに張っている。これを片手間にできるのだからやはり彼は実力者だ。

準備が出来たようでもう一度武器を抱えなおす。その際に、動かせるようになった右腕を動かして両手で持ってみた。



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