あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん

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婚約が解消になったアヴリルの元には縁談の申し込みがいくつも届けられた。

しかし、その多くは既に婚約者のいる令息か、アヴリルの婿としてウィンターホール公爵家の一族となることを希望する跡継ぎではない次男三男からである。

莫大な資産のあるウィンターホール家の恩恵にあずかりたいという魂胆が見え見えだった。


そんな中、爵位も年齢も問題がなかったのが、サマーフィールド侯爵家だった。

スタンリー・サマーフィールド。

アヴリルと同い年でサマーフィールド家の跡継ぎ。

なぜ侯爵令息の跡継ぎなのに婚約者がいなかったのか。
いや、いなかったわけではない。半年前まではいた。長年婚約していた侯爵令嬢が。

侯爵令嬢は少し体の弱い令嬢だったというが、大きくなるにつれて丈夫になるだろうと思われていた。
だが、学園にも入学して来ないし会わせてももらえない。
最初の数年以降、ずっと手紙のやり取りだけだったという。

何度も問い詰めたところ、学園に行けるほどの体力はないとようやく白状した。
さすがにそれでは結婚しても子供を産むことは不可能なのではないか。
嫁いだ女性の最たる仕事と言えば、子供を産むことなのだ。 

それは侯爵令嬢の父親もわかっていた。
だからこそ、侯爵は妹の方を嫁がせようと画策していたという。
ただ、妹の方はようやく11歳になったところで、どう見ても子供。
もう少し大きくなったところでスタンリーと引き合わせしようとずっと先延ばしにしていた。

もっと前に正直に話してくれていれば、妹の方でも考えたかもしれない。
だが、何年もはぐらかされ続けたことで信頼関係が崩れた。

それにより、婚約を解消することになったという。



スタンリーの方にも多くの縁談の申し込みがあったという。

しかし、スタンリーはずっとアヴリルに対するノックス殿下の仕打ちを見ていた。
同情する気持ちを持っていたが、そうして彼女を見てしまうのは好意もあるということだ。
そして二人の婚約が解消される可能性があるかもしれないと思っていた。

その可能性を少し高くするために、スタンリーは人を使っただけ。

『愛する人に誠実さを示すためには婚約者と別れることが一番だ』と。

それを耳にしたことで、ノックス殿下がアヴリルに婚約破棄を告げたかどうかはわからない。
だが、キッカケになった可能性は十分にあった。


そして婚約解消になったアヴリルにスタンリーは婚約を申し込んだ。

アヴリルの嫁ぎ先としてウィンターホール公爵が認めるのは、確実にサマーフィールド侯爵家になるに違いなかった。

スタンリーの思惑通り、真っ先にスタンリーと両親は公爵家に呼ばれ、聞かれた。

『アヴリルが笑顔で過ごせる毎日を与えることができるか』と。

あまりにも普通の質問に虚を突かれたが、ノックス殿下と婚約していた時のアヴリルを思うと公爵がそれを望むことも当然だった。
この言葉の中には、『浮気を知れば笑顔は消えるぞ』という意味も含んでいる。つまり浮気もできない。

スタンリーは答えた。

『アヴリル嬢と共に笑顔の毎日を過ごして行きたいと思っています』と。浮気などする気はない。
 
ウィンターホール公爵夫妻に認められ、アヴリル自身からも『よろしくお願いします』と返事があり、二人の婚約はすぐに結ばれた。

アヴリルは、表情豊かなスタンリーの笑顔に好感を持っていたという。
そばにいる人まで自然と笑顔になってしまう。気持ちが明るく前向きになれるから。


それから一年後、アヴリルとスタンリーは夫婦となったのだ。




 

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