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しおりを挟む僕は、サドルデン伯爵家のお茶会参加者リストの中から、既婚者のある夫人から話を聞くことにした。
未婚の令嬢は何かと面倒だし、伯爵令嬢の友人やそのまた友人は正直に話さないかもしれないと考えたからだ。
僕の選んだ夫人は友人の令嬢とアイリーン目的で参加したと思われた。
伯爵家に嫁いだ夫人だが、侯爵家に嫁いだアイリーンと少しでも親しくなれたら、というような思いからであると予想できる。
特にサドルデン伯爵家とも関係があるわけでもなさそうなので、彼女を選んだ。
面倒事を避けるために、夫人には夫と共に僕と面会してもらうことにした。
「急にお呼び立てして申し訳ありません。」
「いえ、こちらこそロックス侯爵令息様とお会いできて光栄です。」
「僕はまだ侯爵というわけではありません。
あなたの方が年上ですので、お気楽にお話しください。」
「ありがとうございます。本日は妻に聞きたいことがあるとのことでしたが?」
「はい。少し前、4か月ほど前になりますが、夫人はサドルデン伯爵家のお茶会に参加されましたか?」
「あ……はい。アイリーン様が参加されると友人から聞きまして、友人に誘われました。
ですが、少し後悔しています。サドルデン伯爵令嬢は……変わったお方でしたので。」
「そのお茶会で妻アイリーンがどんな発言をしたか、覚えていますか?」
「実は、アイリーン様とは直接ほとんどお話はできなかったのです。挨拶だけで。
席の移動が許されることもなく、立ち話もできなくて……
アイリーン様は、サドルデン伯爵令嬢とその友人3人に囲まれて座っていました。
どんな話をされているかはわかりませんでしたが、サドルデン伯爵令嬢が各テーブルを回って……
アイリーン様がこんなことを言っていた、と驚くようなことを話されて。
本当におっしゃったのか、サドルデン伯爵令嬢が嘘をついているのか、わからなくて。」
「僕との……閨事の不満をアイリーンが話したと言っていましたか?」
「……ええ。ですが、まさかそんな話をするなんて思えなくて。」
「サドルデン伯爵令嬢が各テーブルでそのような話を言って回ったということですね。
アイリーン本人の口から聞いたわけではなく。」
「そうです。まるで噂が広まることをサドルデン伯爵令嬢は望んでいるかのようで。
アイリーン様に対しての悪意を感じました。
私も友人も、同じテーブルにいた女性たちは、真偽の定かではない噂だから口にしない。
それを約束して別れました。
ですが、私たち以外に噂を広げた人がいるということですね。」
夫人が僕を伺うように見てきた。
「僕は、お茶会に参加した女性からこの話を聞いたわけではありません。
ですが、又聞きの又聞きの可能性はありますね。
アイリーンは僕との秘め事を軽々しく口にするような女性ではありません。
確実にサドルデン伯爵令嬢の悪意ある嘘だと思います。
ご友人やお茶会に参加されていた他の知り合いの方にも会う機会があれば嘘だと伝えてください。」
「もちろんです。ずっとモヤモヤしていたんです。
アイリーン様のことを詳しく知っているわけではありませんが、サドルデン伯爵令嬢もそうです。
どちらを信じる、信じないという判断をつけることが難しくて。
アイリーン様はあれ以来、お姿をお見掛けしませんし、サドルデン伯爵令嬢には近づきたくなくて。」
「本当に迷惑な話ですね。サドルデン伯爵家には抗議したいと考えています。
ですのでそれ以降、この噂を広めた者に対しても同様に抗議の対象になるとお思いください。」
ジョルジュが浮かべた冷徹な眼差しに、目の前の夫妻は絶対口外しないと誓った。
まぁ、ジョルジュの目の先に映っていたのは夫妻ではなかったのだが。
僕とアイリーンの嘘の閨事情をお茶会の参加者全員に吹聴したのがサドルデン伯爵令嬢。
その証言が得られただけで十分だった。
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