11 / 18
11.
僕は、サドルデン伯爵家のお茶会参加者リストの中から、既婚者のある夫人から話を聞くことにした。
未婚の令嬢は何かと面倒だし、伯爵令嬢の友人やそのまた友人は正直に話さないかもしれないと考えたからだ。
僕の選んだ夫人は友人の令嬢とアイリーン目的で参加したと思われた。
伯爵家に嫁いだ夫人だが、侯爵家に嫁いだアイリーンと少しでも親しくなれたら、というような思いからであると予想できる。
特にサドルデン伯爵家とも関係があるわけでもなさそうなので、彼女を選んだ。
面倒事を避けるために、夫人には夫と共に僕と面会してもらうことにした。
「急にお呼び立てして申し訳ありません。」
「いえ、こちらこそロックス侯爵令息様とお会いできて光栄です。」
「僕はまだ侯爵というわけではありません。
あなたの方が年上ですので、お気楽にお話しください。」
「ありがとうございます。本日は妻に聞きたいことがあるとのことでしたが?」
「はい。少し前、4か月ほど前になりますが、夫人はサドルデン伯爵家のお茶会に参加されましたか?」
「あ……はい。アイリーン様が参加されると友人から聞きまして、友人に誘われました。
ですが、少し後悔しています。サドルデン伯爵令嬢は……変わったお方でしたので。」
「そのお茶会で妻アイリーンがどんな発言をしたか、覚えていますか?」
「実は、アイリーン様とは直接ほとんどお話はできなかったのです。挨拶だけで。
席の移動が許されることもなく、立ち話もできなくて……
アイリーン様は、サドルデン伯爵令嬢とその友人3人に囲まれて座っていました。
どんな話をされているかはわかりませんでしたが、サドルデン伯爵令嬢が各テーブルを回って……
アイリーン様がこんなことを言っていた、と驚くようなことを話されて。
本当におっしゃったのか、サドルデン伯爵令嬢が嘘をついているのか、わからなくて。」
「僕との……閨事の不満をアイリーンが話したと言っていましたか?」
「……ええ。ですが、まさかそんな話をするなんて思えなくて。」
「サドルデン伯爵令嬢が各テーブルでそのような話を言って回ったということですね。
アイリーン本人の口から聞いたわけではなく。」
「そうです。まるで噂が広まることをサドルデン伯爵令嬢は望んでいるかのようで。
アイリーン様に対しての悪意を感じました。
私も友人も、同じテーブルにいた女性たちは、真偽の定かではない噂だから口にしない。
それを約束して別れました。
ですが、私たち以外に噂を広げた人がいるということですね。」
夫人が僕を伺うように見てきた。
「僕は、お茶会に参加した女性からこの話を聞いたわけではありません。
ですが、又聞きの又聞きの可能性はありますね。
アイリーンは僕との秘め事を軽々しく口にするような女性ではありません。
確実にサドルデン伯爵令嬢の悪意ある嘘だと思います。
ご友人やお茶会に参加されていた他の知り合いの方にも会う機会があれば嘘だと伝えてください。」
「もちろんです。ずっとモヤモヤしていたんです。
アイリーン様のことを詳しく知っているわけではありませんが、サドルデン伯爵令嬢もそうです。
どちらを信じる、信じないという判断をつけることが難しくて。
アイリーン様はあれ以来、お姿をお見掛けしませんし、サドルデン伯爵令嬢には近づきたくなくて。」
「本当に迷惑な話ですね。サドルデン伯爵家には抗議したいと考えています。
ですのでそれ以降、この噂を広めた者に対しても同様に抗議の対象になるとお思いください。」
ジョルジュが浮かべた冷徹な眼差しに、目の前の夫妻は絶対口外しないと誓った。
まぁ、ジョルジュの目の先に映っていたのは夫妻ではなかったのだが。
僕とアイリーンの嘘の閨事情をお茶会の参加者全員に吹聴したのがサドルデン伯爵令嬢。
その証言が得られただけで十分だった。
あなたにおすすめの小説
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない
たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。
あなたに相応しくあろうと努力をした。
あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。
なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。
そして聖女様はわたしを嵌めた。
わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。
大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。
その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。
知らずにわたしはまた王子様に恋をする。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
【完結】最後に貴方と。
たろ
恋愛
わたしの余命はあと半年。
貴方のために出来ることをしてわたしは死んでいきたい。
ただそれだけ。
愛する婚約者には好きな人がいる。二人のためにわたしは悪女になりこの世を去ろうと思います。
◆病名がハッキリと出てしまいます。辛いと思われる方は読まないことをお勧めします
◆悲しい切ない話です。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
【完結】好きです!あと何回言ったらわたしを好きになってくれますか?
たろ
恋愛
「貴方が好きです」
会うと必ず伝えるわたしの気持ち。
「ごめん、無理」
必ず返って来る答え。
わかっているんだけど、どうしても伝えたい。
だって時間がないの。
タイムリミットまであと数日。
わたしが彼に会えるのは。
両片思いのお話です。
たぶん5話前後で終わると思います。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。