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しおりを挟むサドルデン伯爵令嬢の悪意ある証言がここでも得られた。
「他には何か言っていましたか?」
「……サミア様が開いたお茶会なのに、アイリーン様目当ての参加者が増えたので怒っていました。
アイリーン様と交流を持たせないようにしたかったみたいです。
この噂をきっかけに離婚すればアイリーン様は社交界に出てこなくなるかもしれない、と。」
「そもそも、親しくもなかったアイリーンに祝いの言葉を伝えたいだなんて誘った理由は?
そこはご存知ではないのですか?」
「……サミア様は侯爵令息様のことが好きでした。何度も婚約を打診したと聞いています。
あなたがずっと好きだったアイリーン様がどんな方なのかを知りたいと言っていました。
ですが、次期侯爵夫人というだけでアイリーン様に会いたいと参加者が増えたことに腹を立てて。
自分が主催者であることを利用して嘘の噂を広めようと思ったみたいです。
それに、自分を受け入れなかった侯爵令息様にも不愉快な思いをしてもらうって。」
「シンシア。サドルデン伯爵令嬢との付き合いはやめなさい。」
「……はい。」
父親の言葉に令嬢は後悔を滲ませながら返事をした。
子爵が僕に聞いた。
「サドルデン伯爵令嬢には何かお咎めをお考えで?」
「そうですね。たかがちゃちな噂とも言えますが、侮辱罪に当たりますから。
次期侯爵としても適正な処罰を望みます。」
「娘は……シンシアには何か咎は……」
「嘘の噂を振り撒きましたか?」
シンシア嬢は首を横に振っていた。
「嘘だと知っているのに誰かに話したとなればサドルデン伯爵令嬢と同罪でしたけどね。
話していないのであれば咎めません。
同じテーブルにいたあと2人の令嬢、彼女たちも話していないのであれば同様です。
なにせ、サドルデン伯爵令嬢が嘘の噂を振り撒いたと知っているのはあなたがた3人だけ。
他のテーブルの方たちは嘘を嘘だと知りません。
その罪の違いはわかりますよね?」
嘘を嘘だと知っていて広める噂と、嘘を真実だと思って広める噂では悪意の在り処が違う。
軽くついた嘘でも悪意の種類によっては取返しのつかないことになる場合もあるのだ。
今回は閨事情だけに、不名誉を被ることになる。
男によっては、まだ浮気の噂が回る方がマシだと思うだろう。
子爵夫妻は、サドルデン伯爵令嬢は終わったな……と思った。
「それから、サドルデン伯爵令嬢はブレス伯爵令息について何か言っていませんでしたか?」
「ブレス伯爵令息ってサミア様の従兄マーキュリー様ですよね。
お茶会の少し後に、従兄に嘘の噂話をしたら面白いことになったって言っていました。」
「サドルデン伯爵令嬢がマーキュリーに嘘の噂話をしたと言ったんですね。
わかりました。ありがとうございました。」
マーキュリーはサドルデン伯爵令嬢本人から話を聞いていた。
そしてマーキュリーは嘘の噂話を信じたんだ。
だからアイリーンを満足させられない僕に娼婦を紹介すると言ってきた。
アイリーン以外に興味はないと言った僕に、思いついたのが覗き部屋。
アイリーンに手紙を出したのは、マーキュリーだ。
僕とマーキュリーは、娼館に行く話をしたときに娼館の名前は出していない。
待ち合わせの場所も折りたたまれた紙に書いてあったんだ。
偶然聞いた善意の者がアイリーンに待ち合わせ場所あるいは娼館名を手紙に書けるはずがない。
アイリーンに手紙が届いたのは、マーキュリーと話した翌日なのだ。
マーキュリーがサドルデン伯爵令嬢に話をして、彼女が手紙を書いたにしては時間が足りないように思う。
僕が娼館に出入りするのをアイリーン本人が見に来ていなくても、僕が娼館に行ったということをマーキュリーは確実に知っているのだから、『ジョルジュと娼館に行った』と誰かに言うだけで噂になる。
あぁ、やっぱり従兄妹同士なんだな。同様の悪意をたっぷりと感じるよ。
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