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しおりを挟むエドモンドは改まってリゼルに向き合い、言った。
「今日ここに来たのは離婚を突きつけたことの謝罪と、他にもあるんだ。リゼル、私とやり直さないか?」
「……どうしてです?あなたは私を嫌っていますよね?」
「いや、嫌っているわけじゃない。向き合うのを避けていただけで。
母も以前の使用人もいない。どうだろう。戻る気はないか?」
「私は都合が良かったからあなたの妻に置かれました。本来であれば選ばれなかったはずです。」
「それは……確かに父はシモーヌを遠ざけるためにリゼルの傷の責任を私に取らせる形をとった。
だが、実はもう一つ責任を取らなければならないことがある。」
何のことかわからずリゼルは首を傾げた。
「君はずっと、避妊薬を飲まされていた。母の指示を受けた侍女によって。」
あぁ、そのこと。でも、子供ができなかった理由が責任?
「しかもその薬はシモーヌが手配していたらしく、飲み続けると不妊になるらしい。リゼル、君は今後も子供を産めないかもしれない。私はその責任を取りたい。」
不妊……で、責任?
「公爵家の跡継ぎはどうするのですか?」
子供を産めるかどうかわからない女をまた妻にする理由は責任だけ?
「跡継ぎは、愛人契約でもして産んでくれる女性を探そうと思う。」
あ……ダメだ。ひび割れた恋心が修復不可能なくらいに粉々になった気がする。
わずかでも期待した自分に笑いが込み上げてきた。
急に笑い出したリゼルにエドモンドは驚いたようだった。
「ふふふ。あー馬鹿みたい。あなたじゃないわ。私がね。
エドモンド様、私ね、学生時代にあなたに憧れていた女の一人なの。贈り物をしたこともある。使ってくれていたと知って嬉しかったわ。ありがとう。」
くだけた口調になったリゼルに驚いたのか、贈り物に驚いたのか、エドモンドは頷いただけだった。
「だから、メアリー様がシモーヌ様に言われた言葉を聞いて、私も家に何かされたらどうしようかと怯えたわ。でも、彼女の嘘だと知ってホッとした。
あなたは私に優しくなかったけれど、時々助けてくれたから嬉しくて、またあなたを好きになった。
でもね、好きな人に振り向いてもらえないのはつらいことだわ。信じてもらえないことも。
私たちは恋愛結婚じゃなかったけど、努力すれば信頼関係は築けたと思うの。
だけど、その信頼関係がなかったから私たちは離婚することになった。そうよね?」
「ああ。だけど、それはまた結婚してから……」
「申し訳ないけど、跡継ぎのために結婚前から愛人を作る気でいる人とやり直す気はないわ。」
「いや、愛人は跡継ぎのためだけなんだ。」
「そんなことしなくても、初めから子供を産める令嬢を妻にすればいいわ。」
「だけど、責任を取る必要があるだろう?」
「今更あなたからそんな言葉を聞くなんて。傷跡の責任は取りたくなかったでしょう?不妊の責任も取る必要はないわ。私は別に公爵夫人になりたいわけじゃない。愛人を許せる心の広い妻になる気はないの。」
リゼルの拒否に腹が立ったのだろうか。エドモンドは顔をしかめた。
「わかった。再婚の話はなかったことにしてくれ。」
エドモンドは離婚の慰謝料だけ置いて帰って行った。
彼がリゼルに望む妻はどんなものだったのだろうか。
公爵夫人の座を喜び、資産を散財する妻?
愛人の産んだ子供を実子として可愛がる妻?
責任を取ってくれたエドモンドに感謝して暮らす妻?
エドモンドがリゼルに恋愛感情がないということはわかった。
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