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貴族でも平民でも何かしらの魔力を持っている。

火・水・土・風・治癒。

治癒以外は大体同じ割合で人数がいると言われているが、治癒だけはおよそ10000人に1人。
そのため、魔力が治癒だと判明すると、平民はその領地の教会に囲われることになるのだ。
アイビーのように貴族の場合は家から教会に通ってもよい。学園にも行ける。

アイビーも10歳の時に魔力が治癒と判明してからは領地の教会に通っていた。
そして学園に入るために王都に来てからは、学園寮から教会に通っている。
 
子爵令嬢であるアイビーの実家は王都に家を必要としていないため、寮で暮らしていた。




アイビーと一緒に王城へと向かう馬車に乗っているのは、アイビーが通っていた教会の司教様。
どうやら大聖堂の大司教様も王城に向かっているとのことだった。

『なんだか大事だな』と他人事のようにアイビーは感じていたが、国王陛下から王太子殿下と婚約するように言われるのがわかっているため、気が重かった。

2年後、グリッチと結婚した後に前聖女様が亡くなってくれていればアイビーが聖女になることはなかったのに、と思っても今更どうしようもない。

馬車は無情にも王城へと到着した。




謁見の間にいたのは、国王陛下に王妃陛下、王太子殿下に王女殿下が2人。
そして何らかの大臣だと思われるおじさまたちが何人もいた。
大司教様も先に着いていたようだ。

こちらは司教様とアイビー。
だが、司教様もすぐに大司教様の側へと向かわれてアイビーは一人残された。

仕方がないなぁと挨拶をする定位置まで行き、声がかかるのを待つことにした。


「アイビー・クワット子爵令嬢だな。聖女の紋章を見せよ。」

「かしこまりました。」


アイビーは右手の甲に現れた聖女の紋章を国王陛下に向けた。

国王陛下は頷き、指で周りにも見せるように指示をしたので、左右にいる興味深々のおじさまたちにも見えるように動かした。
『おおーっ』という喜びの声とは違い、王太子殿下と王女殿下2人は睨みつけるような表情だった。


「大司教、間近で確認せよ。」


国王陛下の指示に大司教がアイビーの手の甲に触れた。

偽物と本物の紋章の違いがわかるのかしら?なんてアイビーは疑いの目で見ていたけれど、大司教が手に持っていた石を手の甲に乗せると、再び紋章が光ったのだ。


「彼女が聖女で間違いございません。」


なるほど。証明する手段を大聖堂は持っていて代々の大司教に伝えられているようだった。


「わかった。アイビー嬢を王太子サニードの婚約者とし、後の正妃とする。サニードとアイビー嬢それぞれの現婚約者とは婚約解消とする。これは王命だ。」


やっぱりね。一体誰がこんなこと決めたのかしら。私の意見は聞いてくれないの?




「お待ちください。私は納得できません。」


声を上げたのは王太子サニードだ。そうよね。あなたも納得できないわよね。


「クレオリアとの結婚まであと1年だったのですよ?彼女は王太子妃になるために教育も受けてきました。聖女が現れたから婚約解消だなんて納得できません。」

「それはわかるがな、決まり事だ。お前もラナ様がそろそろだということはわかっていただろう?
ラナ様が亡くなれば新たな聖女がお前の正妃か側妃になることは決定していたんだ。覚悟していただろう?
なぁ、パキラス公爵も。」


パキラス公爵はクレオリアの父親。娘を王太子妃にすることができなくなったのだ。


「……ええ。非常に残念なことではありますが。あと1年でしたので。」


あと1年って強調してくれるけど、私のせいじゃないよ?



 




 
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