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しおりを挟むジェイド・ピルスナーは東の辺境を通って隣国に向かう途中に寄った街でローレンス・オリオールを目にした。
ローレンスはオリオール侯爵家を継ぐ男だが、3年半ほど前に失踪したとされていた。
しかし、ここ1年ほどはローレンスは殺されているのではないかと密かに囁かれている。
というのも、ローレンスの妻ジョスリンとローレンスの義理の弟レナウンの間に漂う空気感がどう見ても男女のものであるからだ。
レナウンをパートナーにして夜会に現れるジョスリンを、最初のころは失踪した夫との間に生まれた息子を気丈に育てている夫人と好意的に思われていた。
だが、やがて単にパートナーを務めているにしても仲が良すぎると思う者が増えた。
ローレンスの死亡は確認されていない。生きている可能性もある。
失踪の経緯も分かっておらず、オリオールの正式な跡継ぎのため、廃嫡する権利が父親にはない。
ローレンスの生存が確認されるか、失踪5年により死亡と認められるか、そのどちらかを待っている状態である時期なのだ。
もちろん、ジョスリン夫人が離婚を申し入れることは可能で、その場合はオリオール侯爵家から出ることになるが、子供はローレンスの子供としてオリオールに残されることになる。
そしてレナウンと再婚することも可能だが、レナウンもジョスリンもオリオールの血筋とは関係のない貴族であるためオリオール侯爵家では暮らせない。
オリオール侯爵家で暮らすためには、ジョスリンがローレンスの子供の母親のままローレンスの死亡が認められ、オリオールの跡を継ぐ子の母としての権利を得なければならないのだ。
その場合、再婚も可能であるが、もちろん再婚夫との子供はオリオールと認められない。
ジョスリンとレナウンが結婚するならすればいい。
ただ、離婚もしていないのに2人の態度が不謹慎なのではないかという声が上がっている。
確かに夫は不在である。
だが、待つ気がないのであれば、オリオール家にいる資格もないのではないか。
レナウンと2人、出て行くべきだ。
そう囁かれ始めた。
それと同時に2人の仲がいつからなのか怪しんだジェイドは、ローレンスの失踪の時期が正しいのか疑問に思い始めた。
ローレンスはもっと早くに逃げたのではないか。そう頭によぎった。
しかし、彼は次期オリオール侯爵にも関わらず、ひどく痩せていた。
栄養のあるものを食べさせてもらえていないのではないかと思っていた。
つまり、彼には自由になるお金がない。
逃げる資金がなければ、作るしかない。
戻る気がないのであれば、目に届くところにあるものを売るだろう。
そう思い、質屋を訪ね歩いた。
数年前のことだが1件の質屋に記録が残っていた。そして質屋の店主の記憶にも残っていた。
同じようなことを前にも一度聞かれたことがあるらしい。
誰か他にも調べた人がいるらしい。オリオールの追手か?
その店を訪れた日付は、失踪したと思われている時期よりも2か月以上前のことだった。
彼は間違いなく自らの意思で逃げた。
殺されてはいない。
そのことにホッとした。
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