42 / 50
42.
しおりを挟む翌朝、先に目を覚ましたのは子供たちの方だった。ベッドの上で座ってキョロキョロ見回していた。
知らない部屋で目覚めることにも、ここに来る道中で慣れたのか、泣かなくなった。
「おはよう、ミレージュ。新しい家に着いたよ。」
「うん!」
まだ3歳にもならないミレージュはよくわかっていないだろう。
座って手を叩いているリカルドはもうすぐ1歳になるが、もっとわかっていない。
「おはよう。お腹が空いたのね。その前に着替えなきゃ。」
「メロディーナの部屋に子供たちの着替えも用意してくれているはずだ。」
「そうなのね。じゃあ連れて行くわ。」
「手伝おうか?」
「大丈夫よ。あなたも着替えてきて。」
「ああ。」
平民として暮らしていた時と部屋の広さが全然違う。
寝室から私室、子供部屋、食堂、談話室。貴族の屋敷は移動するだけで大変だ。
狭い部屋が効率的で懐かしく感じた。
昨晩は数人の使用人としか顔を合せなかったが、料理人にメイド、侍女も数人いた。
臨時雇いの者もいるため、正式に雇用するかも含めて人数を増やしていく必要がある。
その辺は、執事のオルフと侍女長、そしてメロディーナに任せようと思っている。
準備された朝食を家族みんなで食べた。
よく寝た子供たちはご機嫌でたくさん食べ、メロディーナは旅の疲れなどないかのように元気だ。
しばらくは忙しい日々が続くことになるが、家族が一緒にいるだけで頑張れる気がする。
食後は、少し屋敷内を見回った後、登城する際の衣装の微調整をした。
血縁証明もするため、子供たちも一緒に行くことになる。
「どうだ?ドレスのサイズに問題はなかったか?」
ローレンスは試着しているメロディーナたちに声をかけるとミレージュが姿を見せた。
「おっ!可愛いな。よく似合ってるぞ。」
「私はどう?」
そう言って姿を見せたメロディーナは、すごく綺麗だった。
「すごく、綺麗だ。ドレス姿は初めて見るけど、似合ってる。辺境伯夫人方に感謝だな。」
辺境伯夫人が王都に住む辺境伯の弟マルムの妻に似合うものを準備させたと聞いた。
侍女たちも紹介してくれるらしいが、いろいろとお世話になりっぱなしだ。
メロディーナを着付けてくれた侍女も辺境伯の屋敷から来てくれていた。
「当日はお化粧と髪型、装飾品も加わりますのでもっと華やかになられますよ。」
にこやかにそう言って、アンナと名乗った侍女はメロディーナよりも10歳ほど年上だろうか。
落ち着いた感じの女性で、メロディーナへの態度も問題がないようだった。
「アンナさんは、ミレージュかリカルドのお世話を希望しているわ。」
「えっ!君の侍女じゃないのか?」
「無類の子供好きだそうよ。息子さんが騎士見習いになって手が離れてしまって寂しいそうよ。」
息子が騎士見習い?アンナは一体何歳なんだ……
この職は自分のものだと言うようにリカルドを抱っこして笑みを浮かべているアンナを見て、まず彼女が送り込まれてきていた理由が分かった気がした。
564
あなたにおすすめの小説
生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
〖完結〗冤罪で断罪された侯爵令嬢は、やり直しを希望します。
藍川みいな
恋愛
「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」
妹を殺そうとした罪で有罪となった私は、死刑を言い渡されました。ですが、私は何もしていない。
全ては、妹のカレンが仕組んだことでした。
刑が執行され、死んだはずの私は、何故か自分の部屋のベッドの上で目を覚ましたのです。
どうやら時が、一年前に戻ったようです。
もう一度やり直す機会をもらった私は、二度と断罪されないように前とは違う選択をする。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全14話で完結になります。
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
〖完結〗記憶を失った令嬢は、冷酷と噂される公爵様に拾われる。
藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢のリリスは、ハンナという双子の妹がいた。
リリスはレイリック・ドルタ侯爵に見初められ、婚約をしたのだが、
「お姉様、私、ドルタ侯爵が気に入ったの。だから、私に譲ってくださらない?」
ハンナは姉の婚約者を、欲しがった。
見た目は瓜二つだが、リリスとハンナの性格は正反対。
「レイリック様は、私の婚約者よ。悪いけど、諦めて。」
断った私にハンナは毒を飲ませ、森に捨てた…
目を覚ました私は記憶を失い、冷酷と噂されている公爵、アンディ・ホリード様のお邸のベッドの上でした。
そして私が記憶を取り戻したのは、ハンナとレイリック様の結婚式だった。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全19話で完結になります。
令嬢は魅了魔法を強請る
基本二度寝
恋愛
「お願いします!私に魅了魔法をかけてください」
今にも泣きそうな声で取り縋る令嬢に、魔法師団の師長を務める父を持つ子爵家の子息、アトラクトは慌てた。
魅了魔法などと叫ばれ周囲を見回した。
大昔、王室を巻き込んで事件の元となった『魅了魔法』は禁術となり、すでに廃術扱いの代物だった。
「もう、あの方の心には私が居ないのです。だから…」
「待て待て、話をすすめるな」
もう失われている魔法なのだと、何度説明しても令嬢は理解しない。
「私の恋を終わらせてください」
顔を上げた令嬢に、アトラクトは瞳を奪われた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる