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しおりを挟む国王陛下からオリアナの15年間を聞かされ、手紙では妻が公妾になり既に離婚していることをようやく知ったユーグンドは数日間、仕事に集中できなかった。
親から公爵位を継いでからも仕事とオリアナ探ししかしていなかった。
両親は公爵という責任を与えると、オリアナを諦めて将来を考えると思っていたらしい。
しかし、反対に自分の都合よく時間を作ることができるようになり、意味がなかった。
会合などに出席しても雑談に耳を傾けることすらしないユーグンドに、何かを教える者もいない。
妻が公妾になったこと、離婚したことをもしかすると自分だけが知らなかったのかもしれない。
国王陛下からの最後の恩情、5年前の王命での結婚ですら意味を成さず、匙を投げられたのだ。
この5年間、誰からも何も言われた覚えがないのだから。
今さら後悔しても、この15年も5年すらも戻ってこないのはわかっていたが落ち込んでいた。
そんな数日後、国王陛下から王家主催の夜会の招待状が届いた。
必ず出席するようにと書かれている。
王家主催は強制参加ではないが、多くの貴族が集まる。
父親が公爵であった頃は両親が出席していたが、自分が継いでからは行ったことがなかった。
この夜会に何か意味があるのだろうか。
又従兄である国王陛下は、まだ言い足りないことがあったのだろうか。
まだ、見捨てられていないのだろうか。
期待と不安を胸に、夜会用の衣装をあつらえて当日に備えた。
思えば、まともに夜会に出席したことなどなかった。
通常は当然のように隣にいなければならないパートナーすら誰かに頼むことすら忘れて、一人で会場入りするということになってしまった。
公爵という地位にいながらも、何年も表に顔を見せていない。
なので、注目されるのも陰口を言われるのも仕方のないことだった。
両陛下が姿を現し夜会が始まって少しした頃、国王陛下に呼ばれた。
「ユーグ。パートナーに心当たりがないのなら言ってくれれば用意したのに。
それともそんなルールさえ忘れていたか?」
「……ええ。恥ずかしながら、到着してから気づきました。」
「だろうね。……今、こちらに向かっている夫人。どう思う?」
「……とても美しい方ですね。夫人、ということは既婚者ですか。」
一瞬、自分に紹介してくれるのかと喜んだが、勘違いのようだ。
「ああ。最近、再婚してね。お祝いを言いたくてここに呼んできてもらったんだ。
お前にも会わせたくて。やっぱり覚えてなかったね。……お前の元妻だよ。」
息が止まるかと思った。あの美しい女性が元妻?
彼女には結婚当日に会った。
婚姻届にサインをして、一緒に馬車に乗って、部屋で一方的に要求を述べた後、会っていない。
彼女を見たはずなのに、全く記憶になかった。
そんな呆然とした私の前に、元妻だという女性とその夫となった男がやってきた。
「やあ、ルクレツィア。結婚おめでとう。
後で王妃にも会ってやってくれ。彼女も喜んでいたよ。」
「ありがとうございます。後ほどお声がけさせていただきます。」
「子供たちは元気かい?」
「ええ、とても。お気遣いいただきありがとうございます。」
「ルクレツィアの夫になった、テリーだったね。彼女と子供たちをよろしく頼むよ。」
「はっ!お任せください。精一杯、幸せにしたいと思っています。」
「では、国王陛下、グリーフ公爵様、失礼いたします。」
そんな会話を最初から最後まで呆然としたまま聞いていた。
「ルクレツィアは夫に愛されているね。あの頃よりも更に美しくなったよ。幸せそうだ。
……どうだ?すぐ側にあったはずの幸せを逃した気分は。」
「……愚かだったとしか言いようがありませんね。」
「お前はこれからどうする?再婚するか?それとも養子を取るのか?」
「養子がいいでしょうね。結婚は…向かない。」
「だろうな。案が2つある。1つはお前が選んだ遠縁の者と私の娘、王女を結婚させる。
もう1つは王女を公爵家を継ぐ者として据える。どうだ?」
「……自分が選ぶ男に自信がありません。
王女殿下に継いでもらう予定で、殿下が選ぶ男と一緒に公爵家を任せたいと思います。」
「そうだね。じゃあそうしよう。まぁ、まだ何年か先の話だけど。
お前は公爵領は栄えさせている。それを衰えさせるのは国としても損失だからね。」
そう言って去っていく国王陛下を見ながら、こうなったのは自業自得だと自分に言い聞かせた。
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