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コンラッドの葬儀から数日後、プリズムは実家の両親に手紙を書いた。

ケージ侯爵家はジュリアスが跡を継ぐようで、ホープとプリズムが侯爵家にいることは邪魔になる。
なので伯爵家に戻り、領地の屋敷でホープが成長するまで過ごさせてもらえないか、と。

書いた手紙を侍女に送ってもらうように伝えて、プリズムは少しずつ荷物を纏め始めた。

この囲われた大きな檻から解放されて、懐かしい自由な伯爵領へ。

プリズムの気持ちは既に伯爵領へと飛んでいた。

順当にいけば、ホープがケージ侯爵家の跡継ぎであるためにプリズムは出て行くことなど考えもしていなかった。
しかし、アグリーに言われたことで道が拓けた気がした。
輝かしい未来があったはずのホープには申し訳ないが、まだ生後4か月にもならない赤子。
将来は平民だと言って育てれば、なりたい職業も見つけられるだろう。

優しい両親も兄も、喜んで迎え入れてくれるとわかっている。
なんなら、手紙を読んだらすぐに馬車を回してくれるのではないかと思うほどに。







一方でジュリアスは、両親と話し合っていた。 


「なにっ!アグリー嬢がプリズムにホープと共に出て行けと言っていただと?」
 
「ええ。父上、僕は彼女との婚約を解消します。いいですよね。
 僕はホープが継ぐための中継ぎとしてここに残ります。
 ホープも、義姉上、いやプリズムもどこにも行かせない。彼らは侯爵家の者です。」

「ああ、もちろんだ。
 お前がアグリー嬢と結婚してからにしようと思って、共同事業の話を進めないでおいてよかった。
 どうもあの伯爵家はうちに資金を頼りすぎている考えだからな。 
 前伯爵は良い人柄だったが、今の伯爵は金遣いが荒い。
 中継ぎは婚約解消の良い言い訳になるだろう。
 正直言って、ホープが成長するまで私が頑張らねばなるまいと思っていたから助かる。」


アグリー・タブロット伯爵令嬢には兄弟がいない。
まだ婚約者のいない妹でもいたならば、アグリーをジュリアスに嫁がせてタブロット伯爵家は妹に継がせるという方法をとれないことはない。
だが、伯爵家を親戚に継がせてまでアグリーがケージ侯爵家に嫁いで来るというのは、ジュリアスがアグリーを強く思っていてそれを望んでいる場合でないと成り立たない。

ジュリアスが婿入りするはずだったアグリーとの婚約は政略的なもので恋愛ではない。

ホープの叔父であるジュリアスが中継ぎのために婚約解消するということはあり得るのだ。 
 
ただ、ジュリアスが結婚できないというわけではない。
ケージ侯爵家の跡継ぎはホープでありジュリアスは中継ぎ。
ジュリアスとの子供は跡継ぎにはなれないとわかっている女性となら結婚しても問題ない。

しかし、実際に子供を持てば自分の子供に継がせたいと思ってしまう。
虐待にも繋がりかねないので、相手を慎重に選ぶ必要があるのだ。

アグリーのような考えを持つ令嬢を侯爵家に入れるわけにはいかない。


婚約解消の書類を用意して、タブロット伯爵家を訪れる日時を決めた。
 



 
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