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しおりを挟むジュリアスとの結婚を承諾すると、侯爵夫妻もジュリアスも大喜びだった。
「ジュリアスが卒業したら、すぐに入籍しよう。ちょうど、喪が明けてすぐだからね。
それまでに本棟に2人の部屋となる場所の準備をしよう。
2人はもう体の関係があるという設定だから、ジュリアス、こっそりとプリズムの部屋に通え。
今まで使用人にはバレていなかったが、結婚を前提とした親公認で通っていた風に。
明日の朝は、うっかりして朝までプリズムと過ごしてしまい、使用人にバレた。そんな感じで。」
「え?お義父様、どうしてそんなことを?」
「王家の調査を侮るのはよくない。
コンラッドの死を慰めているうちに男女の関係になったという前提で愛妾を断るんだ。
その前提が嘘と見破られれば、王家を謀ったと思われてしまう。
実際の交わりはともかく、一緒のベッドで朝まで過ごして侍女に見られておくべきだ。
夜中に部屋から出たり、朝まで過ごしたりを繰り返すと侍女に口止めしても知られていく。
使用人は下っ端ほど口が軽い。王家の調査に来た者に聞かれたら、金を貰って話すからな。」
実際、プリズムがコンラッドに監禁されていたことは社交界には伝わっている。
夜会にも茶会にも出てこないとなると信憑性が増す。
侯爵やジュリアスと一度しか会っていないような生活は監禁に違いないが。
もちろん、実情を侯爵やジュリアスは言わなかっただろうに知られている。
となると、やはり使用人から情報は漏れてしまうのだ。
「わかった。プリズム、侍女が下がった頃に部屋に行く。
扉を5回ノックする。鍵を開ける前に声をかけてくれ。」
「……わかりました。」
なにこれ。もう拒否権がないのね。
関係を匂わせるためにジュリアスが部屋に来るのは決定のようだ。
まぁ、結婚が決まったその夜に義姉であったプリズムに手を出したりはしないだろうと思った。
広いベッドだから、寝返りを打っても触れ合うことなく朝まで眠れるはず。
そんな考えが甘いということに、まだ気づいていなかった。
夜、寝支度を終えて侍女は部屋を出て行った。
コンラッドがいた時からの習慣で、部屋には内鍵をかけている。
寝室でジュリアスを待っていても鍵を開けに行かなければならないのでソファに座って待っていた。
少し経つと、扉が5回ノックされたので扉の前に向かった。
「どなた?」
「ジュリアスだ。」
鍵を開けてジュリアスを中に入れた。彼はすぐに鍵をかけた。
「侍女は扉の鍵を持っているの。だから、朝はノックした後に鍵を開けて入ってくるわ。
だから、侍女に見られるためにはベッドで2人で寝た方がよさそうね。」
プリズムがそう言った直後、後ろからジュリアスに抱きしめられた。
「僕はただ侍女に一緒にいるところを見せるために寝に来たんじゃない。
既成事実を見せつけるために来たんだ。」
驚いてジュリアスを振り返ると、唇にキスをされた。
何度も、何度も角度を変えて、やがて深くなる。
突然で上手く息継ぎができなかったプリズムを抱き上げてベッドに運んだ。
そこからは抵抗する余裕もない。
コンラッドに抱かれていたベッドで、これからはジュリアスが使用者だと主張するかのようだった。
一晩中、翻弄され続けて気絶するようにいつの間にか眠っていたかと思うと、侍女の驚いた声で目が覚めた。
裸のジュリアスが、裸のプリズムを抱きかかえた姿をバッチリと侍女に見られたのだ。
「あぁ、ごめん。プリズムが寝落ちしたから鍵がかけられないと思って一緒に寝てたんだ。
侍女が起こしに来る前にプリズムを起こすつもりだったんだけどな。間に合わなかった。
えっと、君は侍女のルルナだったか?
僕たちの関係は両親も知っている。卒業したら結婚することになってるんだ。
彼女を慰めていたら、僕が守りたいと思ってしまってね。
まだ喪中だから公表はできないけれど、そのつもりでいてほしい。
ひとまず内緒にしておいてくれるかな?また朝まで寝てしまうかもしれないけど。」
「かしこまりました。」
ジュリアスはプリズムの頬にキスをした後、服を着て寝室から出て行った。
あざやかな言い訳と主張をするジュリアスに、プリズムは呆気にとられたままだった。
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