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しおりを挟む学園に入学してから出会った伯爵令息ユーグを好きになった子爵令嬢アマンダ。
婚約者がいないと知って、父に頼んで縁談を申し込んでもらった。
しかし、断られた。
本人に直接聞いたら、他に好きな人がいると言われた。
やがて、ユーグはサフィニア・コートアル子爵令嬢と婚約した。
自分と同じ子爵令嬢。
自分はダメで、どうして彼女ならいいのか。
諦められず、婚約中にもユーグの両親に自分との縁談の有利性を書いて送ったが断られた。
二人の仲睦まじい姿を見るたびにイライラした。
それを、友人のアグリー・タブロット伯爵令嬢に愚痴っていた。
アグリーは兄弟がおらず侯爵令息と婚約しており、婿をとる令嬢だった。
アグリーと婚約者であるジュリアスは、いかにも政略結婚といった感じに見えた。
彼女の悩みは、ジュリアスが自分に関心がないことだった。
そして、従姉が夫に愛されている自慢をしてくることが鬱陶しいとよく言っていた。
アマンダは日に日にユーグの隣にいるサフィニアが許せなくなり、何か彼女に瑕疵ができれば婚約が解消されるのではないかと考えるようになった。
悪いことを頼めるのは誰か。
侍女に聞いてみると、ある使用人なら知っているかもしれないと教えてくれた。
その使用人に確認すると、殺し以外なら請け負ってくれる者を知っていると言い、簡単なことならアマンダの手持ちの金でも大丈夫だろうと紹介してくれた。
相手の裏稼業の男は、貴族のお嬢様が邪魔な女を排除したいだけとわかって笑ったが受けてくれた。
襲うのはさすがに可哀想に思い、連れ込み宿で見知らぬ男と目覚めるというイタズラのようなことを思いついた。
朝方に娘の居場所を手紙か何かで親に知らせてやり、男といるところを見せる。
その前に娘を攫ったことを知らせて、おとなしく次の連絡を待てと手紙を送った方がいいか。
そうすれば、ユーグとの婚約は解消になるだろう。
相手の男を誰にしようか。
そうだ。
アグリーが鬱陶しいと言っていた従姉の夫にしよう。
そうすれば、アグリーの従姉も浮気されたと思い、愛され自慢もなくなってアグリーが喜ぶ。
私にもアグリーにも都合のよい案だと思った。
裏稼業の者に頼むには簡単すぎる仕事かもしれない。
だが、普段は接しない者に依頼するからこそ、発覚しにくい。
その辺のゴロツキや悪い令息などに頼むのは、バレやすいのだ。
婚約を解消させるためだけのイタズラ。
その程度なので、割と手軽な金額を提示され、全額をすぐに払った。
前金・後金と分けて、依頼完了時に払うほどの手間をかける金額ではなかったからだ。
後ろ暗い男と何度も会いたくないというのが本音でもあったが。
そして後は任せた。
いつまでに、という指定はしなかったからすぐではなかった。
下調べもあるだろうと思っていたし。
やがてサフィニアが亡くなったという情報が入ってきた。
……え?死んだ?
なんだ。依頼が実行される前に本人がいなくなったじゃない。ついているわ。
……え?男と一緒にいた?心中に見せかけた殺人?
私の依頼と関係ないわよね?連れ込み宿でって……関係ないよね?
……え?相手の男はコンラッド・ケージ侯爵令息?
アグリーの従姉の夫じゃないわ。だから、関係ないよね?
連れ込み宿で男と一緒っていうのは依頼と同じだけど、殺してなんて言っていないし相手も違うし。
だから、私の依頼のせいじゃないよね?
ね?騎士様。
アマンダは騎士から尋問されて、確かに自分は裏家業の男に依頼をしたことを認めた。
だけど、依頼内容とは随分違っているから自分の依頼のせいで二人が亡くなったのではないと必死で訴えた。
応援ありがとうございます!
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