あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

文字の大きさ
28 / 30

28.

しおりを挟む
 
 
アイリーンの人生はあまりいいものではなかった。

両親が亡くなって、兄とともに叔父に引き取られた。

兄が騎士になると、叔父と二人暮らしになり、14歳で叔父に抱かれた。
養っているのだから体で払えと言われ、受け入れたら気持ちよくて夢中になった。
叔父には娼婦並みに上手くなったと言われた。

兄が騎士の大会で命を落とし、金を手にした叔父は姿を消した。
 

18歳で兄と同じく騎士になったが、どこか周りはよそよそしかった。

兄が亡くなったことはアイリーンにはどうでもよかった。
騎士になったのは男が多いからで、逞しい体の男ばかりだから。

なのに、誰も近寄って来ない。
 
囮になる気はあるかと聞かれた時は、面倒で一度断ったが、女であることを馬鹿にされた気がして引き受けた。

指示を無視して勝手に動いたのは自分のミスだ。
しかし、助け出されるのが遅くなったのは、犯される瞬間を見ていたからだと知っている。

もう少し確保が遅かったら、男に犯されながら悦ぶ姿を騎士たちに見せつけていたかもしれない。
それくらい、男の性器はいいモノだった。

その後から、真面目な振りをしても意味はないと思い、街で男を誘い始めた。

酔った振りをして隊員にキスをし始めたのも、嫌がらせだった。


そんな時に、ブレイズが入隊してきた。

すぐに抱かれたことのある男だと気づいた。若くて、顔も体も好みの男だから覚えていた。
相手は覚えていなさそうだったけれど。

同じく第三に異動してきた男に酔ったフリをしてキスをすると、ひどく嫌がられた。
嘘泣きをしてブレイズに縋ると、慰めてくれた。

やはり、この男は女好きである。

それからは、親睦会のたびにブレイズにキスしまくった。


婚約者がいることは知っていた。
だが、アイリーンを抱いた時も婚約者がいたような男だ。
嫌がる様子もなかった。

ブレイズが結婚しても、キスは続いた。
この男は妻を愛していないのだろうか。

対抗心が沸き上がった。 


唇を開かせて舌を絡めても受け入れるブレイズ。

この男は女なら誰でもいい?
それとも、アイリーンのことを好意的に見ている?

ブレイズの妻、メルリーの顔も知っていた。
訓練場に来たのを見て、関係を教えてやろうと思った。

あの女が驚いた顔をしたので楽しかった。


なのに、イーサンがブレイズと引き離そうとする。

親睦会の後、イーサンはいつもサッと帰る。
それを知っていたため、アイリーンはノロノロと行動し、ブレイズに家まで送らせた。

キスで誘うと、ブレイズは慣れた手つきで気持ちよくしてくれた。
やはり、この男は上手い。
しかし、酔いが醒めたのか、慌てて帰って行った。

奥さんが待っているのを思い出したのかもしれない。

でも、アイリーンの体を欲しく思ってくれたのは確かで、好かれていると確信した。

嬉しくて、窓から手を振って叫んだ。次は泊まって朝まで抱いてほしい、と。

ブレイズに触れられた体が疼き、男を欲しがっていた。
そのため、街に戻り、男を誘った。

このときに、浮かれていて避妊を忘れてしまったのだ。
相手は多分、他国の男。
仕事で来た既婚者だろう。

妊娠を怪しんでいた時にブレイズの離婚を知り、今度こそ彼に抱かれようと思った。
家もあり、使用人もいる。
ブレイズの子ということにすれば、貴族のように楽な暮らしができると思った。
 
年齢的にも体力的にも、騎士を続けるよりも家庭に入る方が楽だと思い始めていたから。

妊娠が確定し、ブレイズに結婚を迫った。
家と使用人はブレイズのものではなかったが、実家が貴族だから、まぁ、何とかなると思っていた。 
しかし、彼の実家からの援助は全くなかった。
ケチな貴族だと思ったが、自分がブレイズの離婚の原因の女だから関わりたくないのだと知った。


妊娠しているせいで、ブレイズは抱いてくれない。
家にいるのは暇だ。
出歩くと寝取った女だと笑われる。

子供が生まれても可愛くなかった。 

ブレイズの帰宅が遅くなってきた。
周りの噂話からも、浮気をしているのは決定的だった。

問い詰めると、私のことは好きじゃないと言われた。
それなのにマーカス共々養ってやっているんだから、浮気を責める資格はないだろう?と。


ブレイズに好かれていないのなら、私は何のために、子供を産んだの?
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです

藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。 ――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。 妹は父の愛人の子。 身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、 彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。 婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、 当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。 一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。 だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。 これは、誰かが罰した物語ではない。 ただ、選んだ道の先にあった現実の話。 覚悟のなかった婚約者が、 自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

奪われたものは、全て要らないものでした

編端みどり
恋愛
あげなさい、お姉様でしょ。その合言葉で、わたくしのものは妹に奪われます。ドレスやアクセサリーだけでなく、夫も妹に奪われました。 だけど、妹が奪ったものはわたくしにとっては全て要らないものなんです。 モラハラ夫と離婚して、行き倒れかけたフローライトは、遠くの国で幸せを掴みます。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

夫は私を愛していないらしい

にゃみ3
恋愛
侯爵夫人ヴィオレッタは、夫から愛されていない哀れな女として社交界で有名だった。 若くして侯爵となった夫エリオットは、冷静で寡黙な性格。妻に甘い言葉をかけることも、優しく微笑むこともない。 どれだけ人々に噂されようが、ヴィオレッタは気にすることなく平穏な毎日を送っていた。 「侯爵様から愛されていないヴィオレッタ様が、お可哀想でなりませんの」 そんなある日、一人の貴婦人が声をかけてきて……。

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

処理中です...