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アマーリエはフィオナから親しくした記憶がないと言われてショックを受けているようだった。
親友からの裏切り。
アマーリエは今にも倒れてしまいそうなほど顔色が悪く、婚約パーティーの招待客たちは思わずアマーリエに手を差し伸べそうになっていた。
しかし、そうすることはなかった。
これは、アマーリエのスコッティ伯爵家よりも格上のドリステル侯爵家とマーティン公爵家の婚約パーティーであるからだ。
アマーリエに味方したように見られては、睨まれてしまう恐れがあった。
そしてようやく、アマーリエの恋人でありながらフィオナの婚約者になるセオドア・ドリステルが口を開いた。
「アマーリエ嬢、君をこの婚約パーティーに呼んだ覚えはない。弁えてくれないか?」
セオドアの言葉は、アマーリエを突き放しながらも彼女への気遣いも感じられた。
今、この場を去ればこの行いを見逃してやる。
これ以上、踏み込んでくるなら、この場を乱した責任を取ってもらうことになる。
そういった意味が込められているように感じ取れた。
しかし、意外にも招待客の中から声が上がった。
「恋人がここまでしているのに、あなたは逃げるの?」
「そうです!別れていないのは未練があるからではないですか?」
「男らしくこの場ではっきりさせてはどうでしょうか?」
どちらかと言えば、アマーリエに賛同し、援護する声が多かった。
アマーリエを裏切ったフィオナが悪者のように思われているためである。
アマーリエはその声に力を得たのか、再び彼らの両親に向かって訴えた。
「愛し合う二人を引き離して結婚してもフィオナ様は幸せにはなれません。もちろん、セオドアも。どうか、二人の婚約はなかったことにしてください。お願いいたします。」
必死になって頭を下げるアマーリエに、心を打たれて泣きそうな女性もいた。
『この婚約は一度白紙に戻し、改めて検討することにする』
マーティン公爵かドリステル侯爵からそのような言葉が告げられるのをアマーリエと招待客は固唾をのんで待っていたが一向にその様子はない。
むしろ、彼らはアマーリエに呆れているようだった。
ドリステル侯爵が口を開いた。
「アマーリエ嬢、ここはセオドアとフィオナ嬢の婚約パーティの場だ。君は招かれていない。君が言ったことについては後ほど話し合いをしよう。ここで大勢に聞かせる必要はないだろう?これは君のためだ。わかるね?」
ドリステル侯爵もセオドア同様、アマーリエを気遣いながらも退場させようとしていた。
つまり、この婚約は続行、アマーリエはセオドアに別れを告げられるのは目に見えていた。
それでは招待客という名の野次馬たちは面白くない。
セオドアがフィオナを選ぶのなら、捨てられる可哀想なアマーリエを目の前で見たいのだから。
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