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しおりを挟むそこからは誕生日パーティーというよりも、ルナセアラとパトリックの婚約パーティーになった。
エメット公爵夫妻もパトリックの話に乗っかって、周りの対応をしていた。
「いやあ。やはり私の跡継ぎはミルフィーナが望ましいと思ってね。ミルフィーナとも話し合って内気なルナセアラとパトリック殿を親しくさせようと思ったのですよ。
ですが、ルナセアラはミルフィーナに気を遣ってなかなか素直に自分の気持ちを表に出さなくてね。
それでも、ルナセアラは徐々にパトリック殿と楽しそうにお茶会をするようになって、そんなルナセアラの気持ちにもパトリック殿も気づいてくれてね。いやあ、良かった。」
ミルフィーナは婿に望む『好みの外見』のイメージとしてパトリックの名前を出しただけが、父である公爵が嫁ぎたいのかと勘違いして婚約を打診してしまった。
だが、ミルフィーナは公爵家を継ぐためハリールス侯爵家には嫁げない。ルナセアラとならばいい縁組ではないかと考えた。
2人を合わせてみると会話が弾んだようで、ルナセアラがパトリックに好意を抱いたように見えた。
だから、姉ミルフィーナは妹ルナセアラの恋を応援しようとしていた。
パトリックがミルフィーナに求婚を繰り返したのは公爵家を立てていただけのことで、パトリック自身がミルフィーナに好意があったわけではなく、ルナセアラと親しくさせようとしたら長く続いてしまったということになっていた。
ルナセアラのためにパトリックを逃したくなかったのだと求婚を断ることになってしまったことを謝罪された。
少々苦しい言い訳のように思えるが、誰も深くは気にしない。
パトリックは随分と気長で鈍感な男という話になってしまっているが、別に構わなかった。
別の場所ではミルフィーナが招待した令嬢たちを前に、高々に笑い声をあげていた。
「おほほほほ。上手くいきましたわ。今年の誕生日パーティーは皆様にご満足いただけると申していましたでしょう?展開に驚かれたのではなくって?」
「ええ。まさか、パトリック様の5回目の求婚をルナセアラ様がお受けする趣向だったなんて。想像もしておりませんでしたわ。」
「ミルフィーナ様は次期公爵様になられるのですものね。姉が公爵、妹は侯爵夫人。確かにこうあるべきですわ。気づかなかったなんて、悔しいです。」
姉より格上に嫁ぐべきではない。
確かに、昔はそんなことを言われた時代もあるそうだ。
大っぴらには言えないが未だにそういう考えは残っている。
つまり、姉が公爵、妹は第二王子妃という選択肢も相応しくないという考えでエメット公爵家はオリバー殿下の婚約者候補を下りたとも言える。
「こんなところはさすが公爵家だな。パトリックの寸劇に筋書きが少なくても上手く演じてるよ。」
父のその一言に、パトリックは飲み物を吹き出しそうになりながら苦笑した。
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