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しおりを挟むクラレンスの父であるネーブル伯爵が言った。
「プリム嬢、こちらとしては姉でも妹でもいいんだ。
だが、婿に入るということだけはそのままにしたい。それが望みだ。」
「ネーブル伯爵、それは都合が良すぎます。
まずは、私に対する婚約破棄の慰謝料。これは払っていただきます。」
「なっ!姉が妹になるだけじゃないか。」
「姉や妹、それを取り除いて考えてください。
あなたの息子、クラレンスは他の女性を好きになって私に婚約解消を求めました。
ですが、これは婚約解消ではなく、婚約破棄となります。
有責はクラレンスにあるのですから。そうですよね?」
「あ、ああ。だがこれは家同士の……」
「婚約者は私でした。グレイブ伯爵家の娘ではありません。
私にしてみれば一方的な言い分なのです。結婚式まであと半年だったのですよ?
昨日まで一緒に準備をしていました。何の前触れも感じさせなかった。
チェリムが好きだろうと何だろうと、彼は私に誠実であるべきでした。違いますか?」
「そう、だな。だが……」
「私と婚約破棄した後、彼がチェリムと婚約を結ぶかはまた別の話です。
そうですよね?
婚約者と婚約破棄した後に次の婚約の打診。それが普通の流れです。
順番がおかしいのです。
チェリムがクラレンスを受け入れたから、私と婚約解消する?
ではチェリムが受け入れなければ、このまま私と結婚するつもりだったということですよね。
そうよね?クラレンス。」
「……うん。」
「あなたは私を裏切った。
だから私はあなたに慰謝料を請求するの。あなたは払う義務がある。そうよね。」
「……うん。」
「あなたもよ、チェリム。
人の婚約を破棄させた原因はあなたにもあるの。あなたにも慰謝料を請求する。」
「え、そんな、お姉様。妹なのに?」
「関係ないわ。婚約破棄の場合、相手に女性がいるならその女性にも請求する。
それは当たり前のことよ。姉妹だろうが関係ないわ。そういう事例もある。」
婚約は家同士でもあるが、名前は個人。
ひと昔前みたいに、子供は親の所有物という認識はもう古い。
一度結ばれた婚約は親が勝手に婚約解消を決めることができず、本人同士の意思が必要になる。
しかし、援助や事業提携などでガチガチの政略結婚の場合もある。
だが、その場合でも婚約解消を言い出した方は慰謝料を払うべきなのだ。
私たちの婚約はガチガチの政略でない上に浮気という破棄案件なのだから余計に。
同じように姉妹や兄弟に婚約者を取られた場合、同意しているならともかく、していない場合は慰謝料を請求した事例がある。
当然だ。婚約破棄のレッテルが貼られ、更に妹に取られたというレッテルも貼られるのだ。
しかも、18歳で学園も卒業済。
私が跡継ぎのままなら、次男三男からの縁談もまだ来るかもしれないが、跡継ぎでなくなった場合、どこで跡継ぎの男と知り合えというのか。
それこそ、年下しか残っていない。
要するに、私は貴族令嬢とした終わったも同然。慰謝料は今後の生活費に必要なのだ。
「ちゃんと婚約破棄と慰謝料の手続きを終えてから、あなたたちの婚約や跡継ぎについて話し合う。
これが正しい順番。間違えないで。」
姉から妹に婚約者が変わるだけ。それだけでは済まないのだ。
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