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しおりを挟むチェリムは私がここまで怒るとは思わなかったのだろう。
自分がクラレンスと結婚しても、私が手伝ってくれると本気で思っていたのだろう。
「もし、私がクラレンス様とのことをなかったことにしたら?」
チェリムが恐る恐る聞いてきたことは、非常に問題発言だったけど気にせず答えた。
「関係ないわ。私とクラレンスとの関係は終わった。取り消せない。
慰謝料はどちらにも払ってもらう。
それに結婚式の準備にかかった費用もクラレンスに払ってもらう。
あなたたちの関係については、好きにすればいい。」
チェリムはまだ16歳だし、跡継ぎになるには学園を卒業しなければならない。
私に代わって結婚式をあげることもできないのだ。
要するに、あと2年は結婚できない。
「プリム嬢、それではクラレンスが婿入りできるかどうかわからないじゃないか。」
「それはクラレンスが仕出かしたことの結果です。
婿入りするはずだったのに、別の女性に告白して婚約解消を望んだのですから。
チェリムが受ける受けないに関わらず、婚約破棄案件です。
現時点でこのグレイブ家の跡継ぎの資格があるのは私だけです。
チェリムが跡継ぎに代わるというのは、決定事項ではありませんもの。
まだ卒業まで2年ありますからね。
我が家の話し合いの結果とチェリムが跡継ぎの資格を得られたら可能性もあるのでは?」
6年前に祖父から父に爵位が譲られた時、私が跡継ぎだと仮登録していた。
そして学園を卒業した少し前に、跡継ぎだと本登録したばかりなのだ。
本登録を終えた跡継ぎから数年以内に別の者に変更する場合、本登録できる資格のある者に限られる。
つまり、学園を卒業していないチェリムはまだ登録できないのだ。
本登録した跡継ぎが爵位を継ぐことなく変更されるには理由が必要だ。
理由を申請して認められれば別だが、私に瑕疵はない。
例えば、私が嫁に行くことになったので変更したいということは可能だ。
その場合はチェリムで仮登録ができる。
チェリムの言い方では、何が何でもクラレンスでなければ、というほどの好意はない。
ただ、勧められた縁談の相手が好みではなくクラレンスに逃げただけなのだから。
チェリムが跡継ぎになるということが知れ渡ると、クラレンス以外にも婿入り候補が現れるだろう。
クラレンスを選んでもいいし、ほかの候補から選んでもいい。
自分の婿になるのだから、父の選んだ婚約者候補に嫁ぐ必要はなくなる。
正直、クラレンスはあまり賢くない。
長年の婚約者だったし、役には立たないようだけど邪魔もしないだろうと思って結婚する気だった。
だけど、チェリムと結婚するとなるとどうだろう。
チェリムは仕事をやってくれる婿を選んだ方がいいのではないだろうか。
でないと不安な気がする。
婚約解消届にクラレンス有責の印を入れてサインをした。
これで慰謝料は規定額を払わなければ、ネーブル家を訴えることができる。さすがに払うだろう。
婿に来る側なのに、自分たちの思い通りにしようとしたのが間違いなのだ。
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