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12.
しおりを挟む平民が大勢乗る馬車と違って、ランクの上の馬車は6人乗り。
利用者が1人でも6人分払い、6人乗ると1人当たりが分割されて安くなる。
今日の昼馬車は、先に2人が申し込んでおり、私たち2人が乗ると4人だった。
あと2人乗れるけれど、申し込みがなければこれで出発となる。
一番後ろに座った私たちは、小声で話をし始めた。
「カイ様はどちらまで?」
「……ジュリって偽名だよな?なんて呼べばいい?ジュリ嬢だなんて呼べないだろう?」
というか、嬢だなんてつけて呼ばれたら、貴族令嬢だと丸わかり。
かといって、本名を告げると伯爵令嬢だとバレてしまう。
カイ様は貴族のはず。
シーラや私に様付けで呼ばれても気にしてなかったから。
多分、カイ様は私のことを子爵か男爵令嬢だと思っている気がする。
高位貴族の令嬢があんな仕事を引き受けるなんて思わないだろうし、自分と同格か下の爵位の令嬢だと思っているからこそ様付けで呼ばれても気にしていなかった。
ということは、子爵令息以上で次男か三男になるはず。
「ジュリでいいです。」
「そっか。じゃあ、ジュリ。僕はジュリについていくつもりだ。」
………………は?ついて、来るの?
「どういう意味?護衛の仕事が続いているの?」
「いや?あの仕事は昨日付けで終わった。今の僕は無職だ。」
無職?
「カイ様は、旦那様のところの護衛騎士じゃないの?」
「違うよ。その前の仕事を辞めた時にセバスさんから依頼されたんだ。
1年は身を隠せる仕事があるからその仕事をする気はないか?って。
それがあの扉の前の護衛任務だっただけだ。」
ということは、カイ様も私と同じく旦那様が誰かを知らないってこと?
「カイ様も目隠しで連れて来られたの?」
「そうだ。あの建物の一部分しか移動していない。
自分の部屋、食堂、ジュリの部屋の前。
人に会ったのも、料理人と交代の護衛1人、シーラとセバスさんだけだな。」
ということは、もう1人の護衛も同条件で雇われただけかも。
「そうだったのね。身を隠したかったの?」
「ああ。ある貴族の家で働いていたんだけど、そこのお嬢様に好かれてしまってな。
僕は次男で継ぐ爵位もない。それにまだ14歳のお嬢様だったんだ。
とりあえずそこを辞めて、お嬢様に見つからないようにしたかった。
学園に入学するまでの1年は特にな。だからちょうど良かったんだ。」
学園に入れば同学年や上級生の貴族令息に目が向くし、勉強や友人との付き合いで自由な時間が減る。
カイ様を追いかける時間もなくなるってことね。
無職になった経緯はわかったけれど、どうして私についてくるの?
カイ様は口外できない秘密を共有しているわ。
私を脅す気?
でもそんな人だとは思えないし、お金のための仕事だったって気づいていると思うし。
意味不明だわ。
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