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しおりを挟む一晩ぐっすり眠って、旅の疲れは少しは癒されたけど腰が痛い。
シーラのマッサージが恋しい。そう思ってしまった。
カイ様との結婚は兄夫婦も反対することはなかったので、日取りを決める必要がある。
その前にカイ様のご両親にも挨拶に行かなければならないわね。
グレンジャー伯爵家。
………あれ?それって大変なんじゃ………
「あぁ、うちの両親には領地にいるから、結婚するって手紙を送るからそれだけでいいよ。
何年後か、機会があれば挨拶するってくらいの気持ちで構わないから。」
「次男の結婚なのに、いいのですか?」
「爵位を継いだ兄には2人子供がいるし、弟もいる。
グレンジャー家には次男のスペアの意味はとっくにないんだ。
結婚することがあれば手紙でも寄こせと言われている。
実家に届く僕に関する手紙は、結婚か死んだかのどちらかと思ってるはずだよ。」
実は、グレンジャー伯爵家は王都を挟んでここコールマン伯爵家とは真逆にある領地。
つまり、挨拶に伺うにも非常に遠くて大変なのだ。
挨拶をするとしても、王都で、ということになる。
せっかく、何日もかけて王都から領地に帰ったのに、また行くのは時間を空けたいわ。
王都に行くことがあれば、兄夫婦には挨拶できるだろうということだった。
ということで、結婚式はここの領地の教会で自分たちだけでしようということになった。
伯爵家に近い親戚はいない。
父の借金問題もあって、親戚と呼べる交流のある貴族はいなくなった。
ジュゼットは伯爵家を継ぐ者でもないので、質素な式でいいのだ。
カイ様の仕事に関しては、兄の手伝いをしてほしいということになった。
そして、住まいも屋敷にいたらいいと言ってくれる。
兄はやはり私に負い目があるのだろう。
結婚後も使用人に世話をさせる貴族らしい生活を送らせたいのだろうと感じた。
そう決まると、カイ様が驚くことを言い出した。
「なら、僕はコールマン家に婿入りするよ。」
通常は、貴族が爵位のない者同士が結婚しても、夫側の家名になる。
子供が生まれても貴族扱いにはならないけれど、出来が良ければ兄弟の養子になることもあり得る。
「ここに住まわせてもらうのにグレンジャーの家名って意味なくないか?
名実共にコールマンになって、以前の伯爵家に戻れる手伝いをしたいんだ。
ダメかな、義兄上?」
「いや、大歓迎だ。嬉しいよ、本当に嬉しい。」
兄とカイ様が、前日に2人きりで話していた内容を知らないジュゼットは、婿入りすると言い出したことに驚いたけれど、家名はどちらでも爵位のない自分たちには大した意味はないと気にしていなかった。
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