侯爵の愛人だったと誤解された私の結婚は2か月で終わりました

しゃーりん

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迎えの馬車に乗る前に、リズベスに会いに行った。


「リズベス、私の実家の父が大怪我をしたと連絡があったから、今から実家に向かうわ。」

「アリーお義母様、いつ帰って来るの?」

「それは……わからないわ。父の容体を見てからじゃないと。」


意識不明って、危ないってことかしら。どうしても想像できない。だって、あの父なのよ?


「帰って来るよね?」


もちろん、という言葉が出ない。
帰って来ないという選択肢もあるということに気づいたから。 

でもリズベスが待っているのに? 


「……帰って来ないの?」

「ごめんなさい、リズべス。実は今、あなたのお父様との関係に悩んでいることがあるの。それをどうするべきか、ゆっくり考える時間もほしいのよ。だから、少し時間がかかるかもしれないわ。」

「そっか。お父様、いつも機嫌悪そうだもんね。嫌になっちゃった?」
 

そう、とも、違う、とも言えず、苦笑するしかない。


たくさんの悩みごとを抱えながら、実家の領地へと向かうことになった。



実家に里帰りすることなど、当分先のことだと思っていた。
それどころか里帰りは多分、親の葬儀以外にはないと思いながらフライ子爵家を出てから、まだふた月にもならない。

見たところ、慌ただしい感じではなかったことから、父はまだ死んでいないようだとホッとした。

ホッとしたと思ったのはなぜだろう。
あんな父でもまだ情があるからなのかとも思ったが、深く考えることはやめた。


「アリーズ様、お帰りなさいませ。」

「ただいま。お父様は?」

「意識が戻られました。命に別状はないそうです。」


やっぱりね。そんな簡単にくたばるわけがない。


「お兄様は?」

「執務室かと。」

「そう。行ってみるわ。」


死にそうでないのなら、父の部屋に向かうよりも先に兄に会って状況を確認したかった。

執務室の扉をノックすると、兄の声が聞こえた。


「お兄様、アリーズです。」

「あぁ、お帰り。悪かったな、呼びつけて。」

「いえ、命に別状はないと聞きましたが?」

「そうだな。2日前に意識は戻った。まぁ、お前は父上のお気に入りだから見舞うと喜ぶだろう。」


……何か今、変な言葉が聞こえた。


「お兄様?誰がお父様のお気に入りですって?」

「アリーズが。」

「まさか。そんなはずありません。」

「そうかぁ?末っ子のお前が一番可愛がられていたと思うが?」
 
「それ、いつの記憶ですか?」

「いつ?いつって、母上がいた頃かな。」


お母様が亡くなったのは私が5歳のときですよ。


「俺なんか、可愛がられた記憶なんてないぞ?下のお前らが羨ましかったんだから。」


お兄様は6歳年上。アリーズよりも記憶に残っていることは多いのだろう。


「いい縁談がなかったから、それなら嫁がなくていいとお前を働かせたんだ。だが、王都で愛人だと言われて醜聞になってしまっただろう?もう働き先もないだろうからここにいさせるつもりだったんだ。
それなのに、デッカード侯爵からモリス男爵との縁談の話が来て。持参金不要だし向こうも醜聞になった男だし、どうせうまくいかないだろうと父上は言ってたが、どうだ?」

「あー……問題だらけ?」

「だろうな。愛人がいるんだって?」

「どうして知ってるの?」

「そんなもん、調べさせていたに決まってるだろう?」

「……誰が?」

「父上が。」


どうしよう。お父様の愛情の示し方が、さっぱり理解できないんだけど。
 

 

 
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