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しおりを挟む父が、アリーズが嫁いだモリス男爵家の内情を調べさせていたと兄から聞き、アリーズには父が何をしたいのか、何を考えているのかがさっぱりわからなかった。
「お前はその問題だらけだというモリス男爵家でこれからどうするんだ?」
兄のその質問に何の意味があるのだろう。
夫を愛人から取り戻せとでも言いたいのか。愛人を許したのはアリーズだというのに。
「お兄様はご存知かわかりませんが、来年にはもう一人、家族が増えることになりそうなのです。」
「え……お前、妊娠したのか?」
さすがにこの情報は、まだフライ子爵家には伝わっていなかったらしい。
「私じゃありません。男爵様の愛人がです。」
「はあ~?なんだそれ。モリス男爵は愛人を孕ませたのか?」
「ええ。愛人にしてやられたようですね。その子供の母親になれと言われたのです。」
「庶子をお前に育てろ、と?」
「というか、私が産んだ実子ということにしたいようでした。」
「……お前、それを受け入れるのか?」
「悩んでいます。母親が平民だと知られると見下す貴族もいますから。」
「お前はバカか?よく考えろ。男爵や愛人にコケにされているんだぞ?」
「それでも……子供に罪があるわけじゃないのに。」
「アリーズ、それは偽善だ。言い訳、逃げでもあるんじゃないか?」
偽善であり、言い訳であり、逃げ。
兄の言葉が胸に刺さる。つまり、兄の言葉が正しい。
「ちゃんと、一つずつ、整理して考えてみろ。お前はそんな愚かではないはずだ。」
そうね。お父様の容体が気になっていたから、頭の中がまだ纏まっていないのはわかっている。
「それから俺は次期フライ子爵として、お前がこのまま男爵夫人として生きていくにしても庶子を実子と偽ることは認めない。」
「え……でも、」
「それも含めて、ちゃんと考えろ。スレイバー、アリーズを父のところに連れて行ってくれないか。」
え?スレイバー様?
振り返って部屋の扉のところを見ると、スレイバー様がいた。
兄と話していた会話をどこから聞かれていたのかわからないけれど、彼は呆れた顔をしていた。
「スレイバー、ついでにアリーズの頭の整理にも付き合ってやってくれ。」
「わかりました。」
ひとりで考えて出した結論では、兄は認めてくれないらしい。
ひとまず、父を見舞うことにしよう。アリーズはスレイバー様の後を追った。
「スレイバー様、お父様の怪我はどの程度なの?」
「腕と足の骨折、それに頭と肩も打ってる。意識は1日半戻らなかった。」
本当に大怪我だったらしい。
姉と次兄は昨日来て、意識が戻っているのでもう帰ったという。
スレイバー様は父の部屋の扉をノックしてから開けた。
「……なんだ、アリーズか。わざわざ王都から仕事をサボって来なくてもいいから、もう帰れ。」
一目見ただけでそれはないでしょう?
というか、王都からってなに言ってるの?
「お父様、頭打ってボケました?私、モリス男爵領から来たのですが。」
「モリス男爵領?そんなところで働いているのか?」
アリーズは思わずスレイバー様を見た。彼も眉をひそめていた。
「お父様?私、少し前にモリス男爵様と結婚しましたよ?」
「結婚?お前がか?俺をからかってるのか?そんな暇があるなら仕事に戻って金を稼げよ。」
「……お大事に。帰る前にまた来ますね。」
「来なくていい。さっさと帰れよ。」
スレイバー様と父の部屋を出て、顔を見合わせた。
「……どうして忘れてるの?」
「わからない。他にこんなことはなかった。少し様子を見よう。」
結果、アリーズがモリス男爵と結婚したという事実だけ忘れているということがわかった。
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