NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥

文字の大きさ
3 / 46

3.バッチコーイ

しおりを挟む
「じゃあ、また来ますね!」

「お待ちしてまーす!」

 ネムさんに見送られる幸せを噛み締めながら俺は現世の第一エリアの森に行く準備をするのだが、ここで問題が起きた。

「なぁ、マセラは所持金ないから回復薬とか買えないよな?」

「たしかになぁ。いや、けど愛のミノタウロス丼を食べたことに悔いはない!」

「はいはい。今から第一行くけど殺られるなよ?」

「うーい。全部見えてるから大丈夫だと思うぞ」

「そういやぁ、選球眼を買われてたんだったか?」

「まぁ、そんなとこだ。目には自信がある」

 このゲームでも動体視力の良さはリアルと変わらないところが凄い。何を読み取ってこのようにゲームに反映しているのかは謎だ。
 まぁ、知ろうとも思わないんだけどな。

「なんかのインタビューでボールが止まって見える時があるって言ってなかったか?」

「あぁ。打つ瞬間とかな。止まってるボールを打っている気になった事がある」

 目を見開いて首を振るチュウメイ。

「そんな世界を見てみたいもんだ」

「このゲームならそういう景色、みえるんじゃないのか? なんかそういうのありそうじゃね?」

「たしかにな。スキルガン積みすれば行けそうだ」

「そうじゃなくてもいけるぜ?」

「はぁ? マセラ……まさか!? 初期ステータス100ポイントどうした!?」

「AGIに全振り!」

 頭を抱えたチュウメイ。

「なんか問題があるのか?」

「速いだけになっちまうだろぉ!?」

「そう? スキルよく見てないんだけど、速いほど攻撃が上がるスキルないのかな? 急所も有効だろ?」

「たしかになぁ。まぁやってみるか」

 話しているとあっという間に第一エリアの森に来た。
 ここはスライムからホーンラビット、ブラウンウルフのE級位までの魔物が出るエリア。

 初心者エリアとして大体のプレイヤーがここで自分の戦い方を固める。

 早速出てきたのはスライムだ。
 スライムは核を破壊するのが倒す方法だ。
 これに中々手こずる初心者が多い。

「スライムは核だ」

「うーい」

 俺は少し離れたところから様子を見て近づいていく。スライムが留まったことを確認して、一気に一歩を大きく踏み出して刀を抜きそのまま斬り裂く。

 核を的確にとらえた。

 ────バシャァ

 スライムは水のように溶けていく。
 少量の魔素を吸収し、俺の経験となる。

「おぉー。行けるな。次々行って早くまたミノタウロス丼を食べてあげるんだ! 毎日食べればネムさんも潤うはず!」

「いや、バイト代貰ってるだけだぞきっと。儲けはバックにいる親父に違いねぇ」

「食べ続ければきっと好感度も上がるはずだ!」

「いや、毎日来られたら気持ち悪くね?」

「うおぉぉぉ! かかって来い! 魔物共!」

「聞いちゃいねぇ」

 魔物に向かって突進して次々となぎ倒して行く。俺は無我夢中で倒した。

 ホーンラビットは初心者にはスピードが早くて難しいらしいが、俺には。

「止まってみせるぜ」

「わぁカッコイイって言われたいだけだろ。止まってはねぇだろ!?」

「止まって見えるぜ」

「だぁ! もういい!」

 俺は居合の構えでまた林からでてきたホーンラビットを真っ二つに斬る。ボトッと肉の塊が落ちる。

「ん?」

「おぉ。肉のドロップはいいぞ。食えるしな」

「ドロップ?」

「そうだ。魔物を倒すとたまにアイテムを落とすんだよ」

「あっ! このドロップをネムさんに献上すれば、何か作ってもらえるのでは?」

「あのキャラ、料理はしないと思うぞ?」

「もっと集めよう! 出てこいホーンラビット! ウルフでも可!」

「コイツ全然俺の話聞かねぇな!?」

 出てくる度に一刀の下で伏せていたのでドロップが一杯になってきた。
 これを抱えながら戦うのはやりづらい。

「インベントリに入れたらどうだ? 『インベントリ』って言うと空間が開くだろ? そしたらこの中に手を入れるとリストが出てくるんだ。音声検索もできる」

「へぇぇ。凄いじゃん。『インベントリ』おぉ。ひらいた」

 そこの口に、抱えているドロップアイテムを一旦入れる。

「もっと早く言えよ!」

「お前、俺の話一つも聞いちゃいねぇだろ!」

「そうか?」

「もうどこから突っ込めばいいんだかわからんぞ!?」

「どうどう」

 俺はチュウメイを落ち着かせる。
 まったく怒りっぽいんだからなぁ。

 マセラのせいなんだが、それには気づいていないほどの天然である。

 順調に来すぎたせいで第一エリアの奥に入りすぎた。それに気づいたのは大きなクマが見えた所だった。

「ヤバい! 奥に来すぎた! ありゃビッグベア。エリアボスだ!」

「おぉー。ビッグベアの肉が欲しいな。何よりあれを倒したらネムさんに見直されるかな!?」

「男を見直すようなAI積んでるのかな? やってみなきゃわかんねぇな。じゃねぇ! 初心者にはまだキツイ。一緒に引き返すぞ!」

「俺はやる! ネムさんにヨシヨシしてもらうんだ!」

「段々と欲望が出てきてるじゃねぇか!」

「行くぞ! ビッグベア!」

 俺の中の選択肢では戦うしかない。
 負けてもいい。勝負することに意味がある。

「威勢だけはいいな!?」

「バッチコーイ!」

 大きな声を出し、ビッグベアに立ち向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...