NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥

文字の大きさ
4 / 46

4.ネムさんマジ天使

しおりを挟む
 目の前にはビックベアが赤い目でギラリと睨みを聞かせて二足歩行で立っている。
 
 「バッチコーイ!」

 エリアボスに速度が通用するか。
 俺の速度の見せどころだ。

 ゆっくりと近づいていく。

「グオォォォォ!」

 威嚇してくるビッグベア。
 大きさは三メートル位あるだろうか。
 デカい。

 爪を振り下ろしてくるが最小限でよける。
 速さ的にはまだまだ対応出来る。
 通り過ぎざまに足を斬り裂くが少ししか血のエフェクトが出ない。
 浅かったか。

「ガァァァァ!」

 両手を振り上げて何かをしようとしている。
 
 ────ズズゥゥゥンッ

 周辺の地面がグラグラと揺れた。
 揺れた大地の上で足元が安定しない。
 その隙を狙って大きな体を前かがみに倒して突っ込んできた。

 見えてはいるが如何せんデカくて避けるところがない。

「ヨォイショォォ!」

 上に跳躍しながら目を斬り裂く。
 エフェクトが多く流れる。

「グオォォォ!」

 やはり中々攻撃力がないと時間がかかるな。
 今ので少しダメージはあったはずだ。

 着地すると、直ぐに振り返り再び肉薄する。
 脚の腱を斬り裂く。
 すると片足は使えなくなった。

「ガアア」

 力なく足を引きずってこっちに振り返る。

「あっ。別に攻撃一回じゃなくていいよな」

 地面を目一杯蹴って跳躍する。
 一瞬でビッグベアに肉薄し首筋に狙いを定める。

 居合を放つ。放つ。放つ。

 ────ズバッズバズバズバズバズバ

 六連撃も入れれば流石にダメージエフェクトが溢れだしている。
 まだ終わらない。
 回れ右して反対側の首筋も攻める。

 ビックベアの頭と体は別れて消えていった。

 【レベルが上がりました。】
 【レベルが上がりました。】
 【レベルが上がりました。】

「おぉ。倒せた。なぁ、チュウメイ? これ第二エリアに行けんの?」

「はぁぁ。行けるよ。あのな、普通このエリアボスってパーティーで戦うんだぞ!?」

「まぁ、いいじゃん。楽しかったし」

 ボスの消えた後には青い宝箱が。

「あっ! なんかある!」

「お前、運がいいな」

「なんで?」

「青は武器のガチャ箱なんだよ」

「マジ!? ラッキー!」

 俺は駆け寄ると箱を開ける。
 入っていたのは打刀、初雪《はつゆき》。
 白い刀身の綺麗な刀であった。

 インベントリに入れて確認する。レア度はDだ。今差してる打刀はFの無名だからそれよりは断然いい性能だ。

 早速、装備する刀を変更する。
 鞘は白に少し雪の結晶のような模様があしらってある。綺麗で気に入った。

「ランクいくつだったんだ?」

「Dだよ。初期のよりマシだったから交換したんだけど。これはネムさんのように可愛らしさと美しさを兼ね備えている。初雪という銘らしい。俺は気に入った」

「序盤にしてはかなりいいんじゃないか!? 俺でさえまだ武器はDランクだからな。というか、現世エリアではDランクが限界じゃないかと言われている」

 帰路につきながらもチュウメイから情報を得るために探りを入れる。今後のために武器の情報は知っておいた方がいいだろう。

「なぁ、これを強化とかは出来ないのか?」

「マセラは勘がいいな。その通りだ。鍛冶師に頼めば強化してもらえる。だが、ランクをあげるには素材とそれなりのレベルがないと無理らしい。らしいってのも、まだそこまで達している人を俺は知らないんだ」

「ふーん。そうか。じゃあ、地道にやって行くしかないんだな」

「俺はそう思うぞ?」

 チュウメイは鍛冶師の知り合いはいないんだな。自分で探さないと行けないと。

「なぁ、あとパーティーって言ってたけどそれって何人までとかあるのか?」

「このゲームでは人数制限はないんだ。その分経験値が分配されるから効率を考えると人数は少ない方がいい。ただ、クランっていうのもあるんだ。それぞれ目的を持って集まった集団のことを言うんだけどな」

「なるほどな。そういや、今のビッグベアはまた出てくるのか?」

「いや、次は素通りできる」

 それなら一度エリアボスを倒したら戻ってきてネムさんの店で飯を食うということを繰り返して、進めながらも好感度を上げていけばいいわけだ。

 周りにも狩りを終えて帰ってきたプレイヤーが多くいるみたいだ。
 一個の建物にみんな入っていく。

「なぁ? ここなんなんだ?」

「あぁ、ここはギルドだ。登録して依頼を受けたりすることで報酬が貰えるんだ」

「えっ!?」

「なんだ?」

「登録してた方が良くない?」

「いや、だから触りだけ戦おうと思ったのにお前がドンドン進んで行ったから言うタイミングがなかったんだろうが!」

「そりゃ、すんません」

「ったく。登録したかったら後でしておけよ。まずは、今日はこの辺でいいか? 俺もクランに所属しててな。『白雷の空』っていうんだ。攻略を目指すクランなんだ。マセラも入るか?」

 気を使って勧誘してくれたんだろうことは分かっている。俺はネムさんの為に生きると決めた。その為なら入ってもいいのかもしれないが名前が気に入らん。
 真面目すぎる。

「いや、俺は暫くはソロでやってみるさ。ありがとな」

「そうか? じゃあ、なんかあったら連絡しろよ? フレンド登録だけしようぜ?」

 俺はチュウメイとフレンド登録し合うと別れて別行動をとる事にしたんだ。
 早速定食屋にいった。

 ネムさんに肉を献上して飯を作ってもらったのであった。
 肉を差し出した時のネムさんの笑った顔がマジで天使だった。

 ネムさんは誰にも渡さん。
 そう誓うのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...