35 / 37
35.事件の黒幕
しおりを挟む
やってきた鮫島さんはおもむろに言ったんだ。
「誰が黒幕か見当がついた」
犯人の黒幕の見当がついたという。本当かな。
「中へどうぞ」
中に案内してリビングへと通した。
「あっ! 鮫島さん!」
賢人が身を乗り出して挨拶をする。この人のことを本当に信頼しているんだなとわかる。
「やぁ。今回収斗さんを刺した犯人を追ったところ、黒幕に浮上した人がいます」
「誰なんですか!?」
賢人がさらに身を乗り出す。
すると携帯端末を取り出してホログラムを表示させた。
そこには僕を刺した男が歩いていて、ある高層マンションに入っていく姿が映っていた。
あれ? このマンションって。
「この高層マンションには、多数のランカーが住んでいる」
ということはやっぱり。
「このマンションの防犯カメラを調査したところ、高層階への直通のエレベーターに乗っているのが確認できたんだ。ちなみに、この男はこのマンションの住人ではない。その確認はとれている」
「高層階というと誰が住んでいるんですか?」
賢人も気になるところだったんだろう。
「上から行くと【氷瀑の皇】」
三人が一斉にこちらを向いた。僕はコクリとうなずく。やっぱりあの二人か。
「それと【風林火山】の武田悠玄だ」
「武田さんはそんなことする人じゃないだろう?」
そう言い放ったのは賢人だ。
たしかに僕の両親の方が黒幕としては可能性が高い。
僕を始末したかったのかもしれないから。
「しかし、いろいろと調べさせてもらったが、収斗さん。君の苗字は皇《すめらぎ》だね?」
「はい。そうです。先ほど、ちょうどその話を三人にしていたところでした」
ちょっと周りを気にしながら話してくれていた鮫島さん。
本当にいい人なんだなと少し心が温かくなった。
「どんな理由であれ、親が子どもの命を狙うとは、あまり考えられない」
「でも、ウチの親はやると思います」
自らの口から出た声は僕の声ではないほど冷ややかだった。
「理由がないわけではない。この男がこのマンションに来たのは一回ではない。何度かきているんだ。その中で、一度。【氷瀑の皇】が外出している時に来ているんだ。日付を見てごらん?」
動画の日付を見ると二月二十二日だった。この日は……。
「収斗さん。君の誕生日だよね?」
「そうです。ですが、たまたまですよ」
「まぁ。そうかもしれないが、レストランで食事をしていたそうだよ。一個は空席だったそうだ」
そんなこと今更言われても困る。僕の中にはあの人たちに対しては憎悪しかない。
「すまん。余計なことを言ったね。それであのマンションにいたランカーは、武田悠玄だった」
「でもなんで!?」
賢人は信じたくないのだろう。鮫島さんにくってかかっている。
「色々と調査してみたんだが、不可解に襲われるような事例はこれが初めてではない。君たち明鏡止水だけでも数回あるだろう? 急にモンスターが進化した、とか」
思い返せばあったな。
修業明けのあの日のボスはちょっと異様だった気がする。
「ありました」
僕がそう答えると鮫島さんはコクリと頷いて話を進めた。
「他のパーティも調べたんだが、ランキングにのってすぐのパーティは軒並みそのような事態が起きて引退するか解散するか、全滅しているんだ」
頭が冷えていくのがわかる。人を殺したのか? いったい何のために?
「実は情報提供してくれた人がいてね。五人衆《ペンタゴン》というパーティなんだが、知っているね?」
「自分の両親のパーティっす! 動いてくれていたんすね?」
「そうだったようだ。非常に助かったよ」
僕たちの異変に気づいていち早く調べていてくれていたんだ。なんてすごい人たちなんだ。頭が下がる。
「それで、動機なんだが、恐らくランカーから蹴落とすこと」
「そんなことのために!?」
僕は声を荒げてしまった。僕からしたらそんなことだった。そんなことのために人の命を。
「ランカーの人たちはそんなことでもないみたいなんだ。それは五人衆の方から聞いたよ。なんでも一度ランカーの地位について安定すると今度は落ちるのが怖くなるそうなんだ。そのために自己研磨はかかせないと。そういっていたよ。違う方法をとってランクを守っている人もいるようだがね」
そうかもしれないけど。だからって。
「俺は聞いた話からだけど、そんな人には思えない」
「そうだね。世間に出ている話とは全く逆の行いの話だ」
「そうでしょ!? 信じられないですよ」
「私は逮捕状を取りますよ。本格的に逮捕する見込みです」
そんなことってあるんだろうか。まだ僕の親が犯人だと言われた方がしっくりくる。
でも、他の関係ない人たちになにかするというのはちょっと考えられない。
「じゃあ、僕は失礼しますよ」
「鮫島さん。ありがとうございます。色々と」
「ははは。いえ。体を休めてくださいね」
「はい! お気をつけて」
鮫島さんを玄関で見送った。
衝撃の事実を知らされた僕たちはしばらく沈黙していた。
賢人はあからさまにショックを受けたように落ち込んでいる。
「しゅーとちゃん!?」
慌てた様子で入ってきたのは薫ちゃんだった。
「どうしたの?」
「すぐそこの路地でスーツの人が刺されたわ! ここから出るのを見かけたけど知り合い?」
「鮫島さんだ!」
僕たちはとんでもない事件に巻き込まれたのかもしれない。
「誰が黒幕か見当がついた」
犯人の黒幕の見当がついたという。本当かな。
「中へどうぞ」
中に案内してリビングへと通した。
「あっ! 鮫島さん!」
賢人が身を乗り出して挨拶をする。この人のことを本当に信頼しているんだなとわかる。
「やぁ。今回収斗さんを刺した犯人を追ったところ、黒幕に浮上した人がいます」
「誰なんですか!?」
賢人がさらに身を乗り出す。
すると携帯端末を取り出してホログラムを表示させた。
そこには僕を刺した男が歩いていて、ある高層マンションに入っていく姿が映っていた。
あれ? このマンションって。
「この高層マンションには、多数のランカーが住んでいる」
ということはやっぱり。
「このマンションの防犯カメラを調査したところ、高層階への直通のエレベーターに乗っているのが確認できたんだ。ちなみに、この男はこのマンションの住人ではない。その確認はとれている」
「高層階というと誰が住んでいるんですか?」
賢人も気になるところだったんだろう。
「上から行くと【氷瀑の皇】」
三人が一斉にこちらを向いた。僕はコクリとうなずく。やっぱりあの二人か。
「それと【風林火山】の武田悠玄だ」
「武田さんはそんなことする人じゃないだろう?」
そう言い放ったのは賢人だ。
たしかに僕の両親の方が黒幕としては可能性が高い。
僕を始末したかったのかもしれないから。
「しかし、いろいろと調べさせてもらったが、収斗さん。君の苗字は皇《すめらぎ》だね?」
「はい。そうです。先ほど、ちょうどその話を三人にしていたところでした」
ちょっと周りを気にしながら話してくれていた鮫島さん。
本当にいい人なんだなと少し心が温かくなった。
「どんな理由であれ、親が子どもの命を狙うとは、あまり考えられない」
「でも、ウチの親はやると思います」
自らの口から出た声は僕の声ではないほど冷ややかだった。
「理由がないわけではない。この男がこのマンションに来たのは一回ではない。何度かきているんだ。その中で、一度。【氷瀑の皇】が外出している時に来ているんだ。日付を見てごらん?」
動画の日付を見ると二月二十二日だった。この日は……。
「収斗さん。君の誕生日だよね?」
「そうです。ですが、たまたまですよ」
「まぁ。そうかもしれないが、レストランで食事をしていたそうだよ。一個は空席だったそうだ」
そんなこと今更言われても困る。僕の中にはあの人たちに対しては憎悪しかない。
「すまん。余計なことを言ったね。それであのマンションにいたランカーは、武田悠玄だった」
「でもなんで!?」
賢人は信じたくないのだろう。鮫島さんにくってかかっている。
「色々と調査してみたんだが、不可解に襲われるような事例はこれが初めてではない。君たち明鏡止水だけでも数回あるだろう? 急にモンスターが進化した、とか」
思い返せばあったな。
修業明けのあの日のボスはちょっと異様だった気がする。
「ありました」
僕がそう答えると鮫島さんはコクリと頷いて話を進めた。
「他のパーティも調べたんだが、ランキングにのってすぐのパーティは軒並みそのような事態が起きて引退するか解散するか、全滅しているんだ」
頭が冷えていくのがわかる。人を殺したのか? いったい何のために?
「実は情報提供してくれた人がいてね。五人衆《ペンタゴン》というパーティなんだが、知っているね?」
「自分の両親のパーティっす! 動いてくれていたんすね?」
「そうだったようだ。非常に助かったよ」
僕たちの異変に気づいていち早く調べていてくれていたんだ。なんてすごい人たちなんだ。頭が下がる。
「それで、動機なんだが、恐らくランカーから蹴落とすこと」
「そんなことのために!?」
僕は声を荒げてしまった。僕からしたらそんなことだった。そんなことのために人の命を。
「ランカーの人たちはそんなことでもないみたいなんだ。それは五人衆の方から聞いたよ。なんでも一度ランカーの地位について安定すると今度は落ちるのが怖くなるそうなんだ。そのために自己研磨はかかせないと。そういっていたよ。違う方法をとってランクを守っている人もいるようだがね」
そうかもしれないけど。だからって。
「俺は聞いた話からだけど、そんな人には思えない」
「そうだね。世間に出ている話とは全く逆の行いの話だ」
「そうでしょ!? 信じられないですよ」
「私は逮捕状を取りますよ。本格的に逮捕する見込みです」
そんなことってあるんだろうか。まだ僕の親が犯人だと言われた方がしっくりくる。
でも、他の関係ない人たちになにかするというのはちょっと考えられない。
「じゃあ、僕は失礼しますよ」
「鮫島さん。ありがとうございます。色々と」
「ははは。いえ。体を休めてくださいね」
「はい! お気をつけて」
鮫島さんを玄関で見送った。
衝撃の事実を知らされた僕たちはしばらく沈黙していた。
賢人はあからさまにショックを受けたように落ち込んでいる。
「しゅーとちゃん!?」
慌てた様子で入ってきたのは薫ちゃんだった。
「どうしたの?」
「すぐそこの路地でスーツの人が刺されたわ! ここから出るのを見かけたけど知り合い?」
「鮫島さんだ!」
僕たちはとんでもない事件に巻き込まれたのかもしれない。
51
あなたにおすすめの小説
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる