追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥

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34.僕の過去

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 僕たちは、束の間の休暇をゆっくりするつもりだったんだが。

「しゅーとー? 俺と親父の修業に付き合わないか?」

「いや、自分と一緒に父さんの所のパーティとの訓練についてくるんすよね!?」

「私と家でまったりしようよぉー」

 三人の間で板挟みになっていたのだ。
 これは困った。

 賢人と仁さんの修業に付き合えば確実に自分も強くなれる気がする。猛のご両親のパーティとの訓練では何か発見ができるかもしれない。奈々とまったりしたい気持ちがあるのも本当だし。どうしたらいいかなぁ。

「収斗ちゃーん? 傷は大丈夫?」

 そんな中にやってきたのは、薫ちゃんだった。困ったときの薫ちゃん。

「薫ちゃん、あのね────」

 今の状況を説明し、どうしたらいいかという意見を聞くことにした。
 僕は強くもなりたいけど、息抜きに休んだ方が良い気もするのだ。

「あんたたちねぇ。収斗ちゃんは怪我をしたのよ!? それも、腹に穴を空けるという大怪我よ!? ゆっくり家で休む一択にきまってるでしょう!? それでもパーティなの!?」

 薫ちゃんの激に三人は縮こまる。

「わかってるの? 私も配信は見たわ。あんた達は、収斗ちゃんに守られたのよ!? この意味理解しなさい!」

「か、薫ちゃん!」

 薫ちゃんがそれ以上話すのを止めるように体を押さえつける。

「ふんっ! この辺にしておいてあげるわ! あっ、これ、あまーいスイーツだから。食べて元気出してね?」

「うんっ! ありがとう!」

 袋いっぱいのスイーツを僕に渡すと薫ちゃんは去って行った。
 薫ちゃんが僕を心配して言ってくれた言葉だからあんまり責められないんだよね。その辺もちゃんと話した方がいいんだろうな。漠然とそんなことを思ったのだった。

「ねぇ、このスイーツせっかくだからみんなで食べない? 少し話があるんだ」

 袋からプリンとかケーキ、ワッフルをそれぞれに配って少し落ち着く。

「今思えば、みんなから話してくれていたけど、僕からこれまでの過去の話をしたことなかったなって思って、よければ聞いてくれるかな」

 三人は頷きながらスイーツをパクリと一口食べた。

 


 僕はこういってはなんだけど、お金持ちの家に生まれたんだ。

「収斗、お前はこの国を背負って立つ男になるんだぞ?」

「はい。お父様」

「収斗は、強くならなきゃいけないのよ? 大丈夫。私や、お父さんのスキルを受け継げば強くなれるわ。みんなを守るのよ?」

「はい。お母様」

 そういわれて育った僕はスキルに絶対の自信を持っていた。
 お父様やお母様のスキルを受け継いでいくんだって、そう思っていた。
 そんななか、スキル鑑定の儀の時が訪れた。

「もう一回行ってくれ!? なんていうスキルだって!?」

「【整頓】です」

「なんだと!? なぜ私の【爆炎】や妻の【氷結】ではないのだ!? スキルは遺伝するんだろう!?」

 近くにあったテーブルを叩きつけると鑑定士に詰め寄った。

「通常であればそうなのですが、固有スキルの場合は違います。突然変異ですので」

「その【整頓】とやらが固有スキルだと? 強力なものなのか!?」

「いえ。ただ整頓が上手にできるスキルかと……」

「くそっ! お前など役に立たん! 出ていけ!」

 僕はそう言われ、言われるがままに家を出たの。

 家を出されたのが十歳くらいだから、五年間くらいはポーターで食いつないでた。

 最初から面倒を見てくれていたのが、薫ちゃんだったんだ。

 だから、僕からしたら親も同然で。本当の親はあまりよくわからないんだ。

 そんな時にスキルレベルがあがったことでモンスタールームから出て賢人にあって、みんなにあって幸せなパーティが組めた。

 だから、僕はこのパーティを絶対に守りたいんだ。




「もしかして、【氷瀑《ひょうばく》の皇《すめらぎ》】の息子ってことっすか!?」

 猛が声をあげていう。少し興奮しているようだ。

「さすがは猛だね。知ってるんだ?」

「今の個人ランキングは三位と五位ですけど、パーティのランキングだとトップランクですよ!」

「そうなんだよね。あんまり関係ないけど」

「あっ。ごめんなさいっす」

 猛がシュンとなってしまう。

「いいんだよ! 知ってるって思ってたから。猛は詳しいし。なんかランキングには意味があるとか。常々そんな話をされていたんだ。その辺は知ってる?」

 僕はわからないけど、猛なら知っているかと思い聞いてみる。すると少し暗い顔になった。何かは知っているような表情だ。

「大体は知ってるっすけど、話すことを止められてたっす。けど、話すっす!」

 賢人も気になるようで身を乗り出す。

「実はっすね。ダンジョンが発生したのは世界中だということはわかってるっすよね?」

「うん。そうだね。海外の動向とかは知らないけど」

「実は海外でもランキングシステムがあるんすけど、密かになんすけど、世界中のトップランカー同士で戦って国のランキングを決めているらしいんですよ」

 それはたしかに衝撃的だが、そこまで驚くことでもない気がする。なんでそれを隠しているんだろう。

「なんで隠すの?」

「それがっすね、実はギルドから徴収した税と国が集めた税から一勝する毎に膨大な金が入るらしいっす」

 それで謎が解けた。だからあんなにお金持ちだったんだ。国を守るんだってそういうことだったんだ。

「あれ? ウチの親父そんなに金あるの?」

 聞いたのは賢人だった。

「自由参加らしいから出なかったとかっすかね?」

「賢人が心配だったからじゃないかな? だから、参加しなかった」

 僕は自分の考えを口に出す。出したことで確信した。だとすると、賢人はもう心配ないと思うからもしかして出たりするのかな。

「収斗、話してくれてありがとう。私も同じような境遇だった。だから、気持ちわかってくれたんだね?」

「うん。あの時話せればよかったんだけど。ごめんね。もしかしたら、今回のこと両親に狙われたのかと思ったから、話したんだ」

 今一番僕の中で疑っているのはあの人たちだ。

 油断できないたち。

 ────ピンポーン

「僕が出るよ」

 急いで玄関に行き、出ると、そこには警察の鮫島さんが立っていた。

「誰が黒幕か見当がついた」

 この事件は僕が思っているより大変な事件だった。
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