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 上に行くと、属性違いで狼が出て来たのだ。
 他のパーティーは魔法使いが居るので戦えているようだ。

 俺達は魔力を纏わせて戦っている。
 最初の風属性の狼と同じようにゴリ押しだ。

 人数が少なくなって変わった事がある。
 宝箱をゲットしたのだ。

 やはり行き渡る人数が減ったことにより、俺達の取り分も出てきたようだ。
 ま、それ以上に魔物にかまけ過ぎてあんまり探索ができていないようである。

「宝箱ゲットー!」

 パカッと開けるとアダマンタイトの盾であった。

「蘇芳、入れといてちょうだい」

『はいはいー』

 もう少し上ると20階層である。
 先に行ってる者達は3人を残してエレベーターに乗るようだ。

「君たち乗るかい?」

 紳士的な男性が声を掛けてくれた。

「ありがとうございます。今回は行ける所まで挑戦したいんで、もうちょっと頑張ります!」

「そうか! 若いってのはいいなぁ! ハッハッハッ! ではな!」

 エレベーターが下がっていく。

「お前ら本当に良いのか?」

 残っていた3人がこっちを警戒している。

「あぁ。こっちは気にせず、好きにやっていいぞ? お互い、不干渉で行こう」

「ふんっ!」

 プイッとして去っていく3人。

「一応、反対側行くか?」

『そうだね』

 反対方向に向かう。
 出る魔物は、ウルフ系の次は何かな?
 トレント?スケルトン?

「ブフゥー」

 道の先から現れたのは、大きめなオークであった。

「おぉ。豚さんのお出ましだ」

『らくしょー』

 魔力を纏わせ、太刀を横に振るって斬撃を飛ばす。
 スパッと真っ二つになった。

「ブフッ」「ブヒッ」「フホッ」

 いっぱい出てきた。
 縦に並んでいるオークは的でしかなかった。
 手前に引き絞り、刀身に左手を添える。

 身体もそって全身の筋肉を収縮させる。
 そして、解き放つ。

「絶孔(ぜっこう)」

 ズッという音と共にオークの胸には丸い穴ができ、奥の景色が見えている。
 ダンジョンに溶けて消えていく。

 豚さん達は30階層まで出てきた。
 そこのエレベーターには、プイッとして行ったパーティーがいた。

「お前達、この先にも行くのか?」

「あぁ。行ける所まで行くからお構いなく!」

「ふっ」

 扉を閉めてエレベーターに乗っていく。

 上の階段を上ると、上った先には階段はなかった。
 空間を空けてボックスが並んでいる。

 これはたしかに普通の奴じゃ行けないだろう。
 しかし、俺と蘇芳なら行ける。

「おりゃ!」

 凄まじい跳躍力で離れたボックスへ渡る。

「周防も来いよ!」

『ついて行くから先に行ってていいよ?』

「よっしゃ! それ! それ!」

 次々とボックスを飛び移っていく。
 その先には通路が見えた。

「よっしゃ! 最後ー!」

 ダンッと跳躍し、余裕をもって着地する。

ガコンッ

 ん?

パカッ

 急な浮遊感を感じる。

『アッハッハッハッハッ! 翔馬のアホー!』

 そう言いながら一緒に落ちてくる蘇芳。

 目の前が真っ黒になる。
 気が付くと、1階にいた。

「なんだありゃ!?」

「ふっ。お前らも越えられなかったようだな」

 そう言うと去っていくのは嫌味を言っていたパーティーのヤツらだった。

 くっそぉ。
 強さだけじゃどうにもならねぇってか。
 だからヤツらはあそこで見切りをつけたのか。

「また来るぞ蘇芳」

『だねぇ! 面白いところだったなぁ。なんか皆で遊ぶところみたいだよね?』

「アトラクションみたいだよな」

 外に出ると誰もいなかった。
 俺達が最後みたいだ。
 それにしても……明るくないか?
 もしかして朝?

 不思議に思いながらギルドに戻る。
 一斗が丁度どこかに行ってきたようだ。

「あれ? もう戻ってきたんですか? もしかして凄い強い魔物が序盤で出るようなダンジョンだったんですか?」

「何言ってんだ? 俺達8時間は潜ってたぞ?」

「えぇっ!? だって、まだ午後5時ですよ? ダンジョンアタック開始したの午後1時ですよね?」

「おいおい。ダンジョン内は時間が進むのが早いのか?」

『それは凄いね。外の世界からしたら1時間しか経ってないのにダンジョン内では2時間ってことでしょ? 死ななきゃめっちゃアタックできるし倍速でレベルアップできる』

「どこぞの白い空間の部屋かよ……」

『あれはもっと凄いでしょ? 比べ物にはならないよ』

「おい。なぜ知っているとは聞かない。自重しろ」

『そういえば、アダマンタイトの盾……』

 異空間の閉まっているところを探っているようだ。

『あぁ。無いわ』

「ない?」

『死んだらアイテムは持って来れないんだったよね?』

「だな。でも、異空間に入れたんだぞ?」

『うん。無くなってる』

「すげぇなあのダンジョン」

『そうだね。また抽選するのかぁ』

「それしかねぇな。エントリーしておくか……」

 ギルドの中に入り、暗子ちゃんの元へ行く。

「帰ってきました」

「あっ! 真仲さん、やっぱり簡単には攻略できなかったんですね?」

「ははは……はい。威勢だけでした。生意気言いました。ごめんなさい」

 深々と頭を下げて謝る。

「あっ、別に謝って欲しい訳じゃなくてですね……私の言っていること少し信用して貰えたかなぁ?と思いまして」

「はい。それはもう。僕が間違っておりました! 申し訳ありませんでした! 黒野様! 土下座するから踏んでください!」

 それを見ていた一斗がひいている。

「蘇芳さん、翔真さんなんかあったんですか? こんなに媚びへつらって……」

「あぁ。ダンジョンを攻略しまくってきたでしょ? 自信過剰になってたんじゃないかな? 自分の力ならどんなダンジョンでも攻略できる! みたいなさ」

「そうですね。自信に満ちてましたもんね。それに……昨日の男達に対しては……」

『うん。力でねじ伏せるのが普通になってるんだよ。急に力を手に入れて最初は気持ちを制御できてたんだけど、最近またステータス上がってきて……まぁ、調子に乗ってたんだよね』

「少し踏まれた方が良いかも……」

『翔馬が喜ぶだけだよ……』

 土下座しようとすると流石に止められる。

「ちょっ! 土下座とかやめてくださいよ!」

「しかし! 黒野さんのアドバイスを聞かずに突っ走って俺は……」

『翔馬! その辺にしたら? 暗子ちゃん困ってるよ?』

 黒野さんを見るとオロオロしている。
 顔も真っ赤だ。
 そういう所が可愛いんだけど。

 ん?
 いつからこんなに女の子が自分を受け入れてくれると思い始めたんだ?
 俺はそんな奴だったか?

 最弱と罵られていた時の方が人間としては良かった気がする。
 そうか……力を手に入れてその力に溺れていたのか。
 今回は命を落とさないと分かってたダンジョンだったから良かったものの、普通のダンジョンだったら命を落としてた。

 そんなことも分からないほど、俺は力に溺れていたのか。
 命は1つしかないんだぞ?
 俺に女の子にかまけてる暇あるのか?

 バァンッと両方の頬を叩き気合いを入れ直す。
 俺は心からしっかり鍛え直さないとダメだな。

「黒野さん、ダンジョンの来週のエントリー、しておいて貰えますか?」

「暗子です……」

「ん?」

「呼び方、暗子でいいです! エントリーはしますから、ギルドカード貸してください!」

 顔を赤らめながら手続きしてくれる。
 ギルドカードを差し出す。

「暗子ちゃん、ありがとう。こんな俺を受け入れてくれて……」

「別に! ギルドの受付嬢として解放者の方の為に働いている訳ですし、みんなにしている事ですから!」

「うん! ありがとね!」

 暗子ちゃんの顔が真っ赤になって耳まで赤くなっている。

 どうしたんだろ?
 俺のせいで熱でもあがったかな?

『翔馬は天然フラグ立て機だね』

「あれ、天然だったんですね?」

 後ろでなんか話してるのが聞こえる。
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