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35.嘘だろ?

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 前線に構えている冒険者は今か今かと出撃の合図を待っていた。
 そこで、俺はローブをスッポリと着ることにしたのだ。モンスターかどうかってのは混ざると判断が鈍る。

 俺は味方同士でやり合わないようにローブを着た。あっちのモンスターでローブを着ているやつなんて居ないだろうからな。

 そんな中先頭の真ん中にアーサーさんがやって来た。

「俺の王都を守るぞぉぉぉぉぉ!」

「「「「「おぉーー!」」」」」

「出撃ぃぃぃぃぃ!」

「行くぞぉぉぉ!」
「モンスターどもぉぉぉ!」
「くたばれやぁぁぁ!」

 俺も周りの冒険者の波に乗って出撃する。
 開いた門の先には沢山のモンスターでごった返していた。

 ゴブリンロードの従えているゴブリンキングとゴブリン達、オークロードの従えているオークキングとオーク達、オーガロードの従えているオーガキングとオーガ達 等のE級からB級。

 目の前にいるのは繁殖力の高い数で押してくるモンスターが多い。その後ろにはグリフォンやバジリスク、サイクロプスなどのA級。

 数は千は居るだろうな。
 対して、俺達は百程の戦力。
 数的には不利だろう。

 これは一体一殺よりは、一気に蹴散らした方がいいな。

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(皇《すめらぎ》)」

 大きく横に剣をなぎ払い前にいたゴブリンとオークを一刀両断する。
 亡骸を踏み倒して奥に進む。

 こんなに後ろの人から離れてしまうと【四面楚歌】は発動されないんだな。

 ストロング流剣術 剛剣術
「カッカ(六花《りっか》)」

 六の剣で近くにいたオークとオークキングを諸共斬り裂く。そのままの勢いで次々と切り倒していく。

 ストロング流剣術 柔剣術
「カタタ(静寂《しじま》)」

 切り裂いてできたスペースで攻撃を待ち構える。こんな場所で無防備にしていれば襲ってくるのが道理。

 襲いかかってきたモンスターを次々に切り倒す。俺の半径五メートルは一瞬モンスターが居なくなったのではないだろうか。

「おおい。あれ、スケルトンだよな? ローブ被ってるけど」
「やるなぁ」
「俺達も負けられねぇな」
「スケルトンってあんなに戦えるもんか?」
「すげぇ」

 賞賛の声が聞こえてくるが。
 嬉しいけど、口を動かしてないで手を動かしてくれよな。

 こんな感じでモンスターを狩っていたのはどれくらいだっただろうか。一時間くらいはぶっ通しだったんじゃないだろうか。

 周りの冒険者は疲労が見え始めた。
 そんな中俺は淡々とモンスターを狩っていたわけだが、他の疲労が出た冒険者の所から王都にモンスターを通してしまったのだ。

 それは仕方ないことだ。
 誰もがそう思った。
 しかし、それで終わりではなかった。

 そこを突破口にしてA級のモンスターがなだれ込んでいったのだ。こんなこと考えられるか? モンスターが結託して、突破口をあけてなだれこんだんだぞ?

 俺には人為的な物が働いている様にしか見えなかったが。俺が変なことをいえば混乱するだろう。

 後ろには白剣《びゃっけん》の人達が控えている。A級だろうが通すことは無い。そう誰もが思っていた。

 いくら格下のA級でも、数が多ければ流石に荷が重かったようだ。

「後ろの奴らも戦えるやつは戦え! 数が多すぎて捌ききれん!」

 アーサーがそう言う。

 まずい。ミリアは本当に戦えないんだ。
 でも、アイツなら無理をしかねない。
 戻らないと────

 振り返って戻ろうとすると、目に傷のある男が王都の門を潜るのが目に入った。

 ────なぜだ? なぜ奴が!?

 追ってくるモンスターを斬り捨てながら王都の門に向かう。

 間に合え! 間に合え!

 縮地なら一瞬だが、使えば反動がある。門の中までなら走った方が早い。

「スケルトン! 持ち場を離れるな!」

『ミリアが! マスターが危ないんだ! ここを頼む!』

「なにっ!?」

 冒険者はそんな訳が無いと思っている。
 後ろに控えているのはS級冒険者だ。
 容易にはモンスター・・・・・は通さないだろう。

 だが、今は人間はただの冒険者だと思われ容易に通ることが出来てしまう。

 クソッ!
 なんで真っ先に前線で戦っていたんだ!
 ミリアと一緒になんで居なかった!?

 アーサーにたしかに指示はされた。けど、本当にそのままを聞く必要があったのか?
 アイツも人間だ。完璧ではない。
 なんで、指示に従った?

 こんな事なら、もっとゆっくり帰ってくればよかった。
 こんな事なら、先に鍛治屋に行っておけばよかった。それならまだ冒険者カードが更新されていないから避難誘導だった筈だ。
 こんな事なら、ミリアの提案を呑まなければよかった。

「大丈夫か!?」
 
「何があったんだ!?」
 
「知らない間に倒れてて……」

 少し奥で声が聞こえた。
 急いで駆け寄る。
 人を掻き分けるのが苦労する。

 ドケドケドケェェ!

 倒れていたのは。

 ミリアだった。

 急いで座り、傷口を抑える。

『回復は!?』

「君、この子のテイムモンスター?」

『そうだ! 回復をしてくれ! 頼む!』

 その冒険者は首を横に振るう。

『何でダメなんだ!?』

「毒のある刃物で刺されている様なんだ。全身に毒が回りきってしまっていて、魔法でも処置の仕様がないただ苦しめるだけになる……すまない」

『嘘だろ? おい! ミリア! しっかりしろ!』

 薄らと目を開けるミリア。

「ナ……イル……楽し…………かった」

『おい! 起きろよ! 俺のマスターだろ!?』

「もっと…………旅……した……かった…………な」

 ミリアは目を閉じて地面に吸い込まれていくように力を失った。

『マスターの消失を確認しました。固有名、ナイルのテイム状態は解消されました』
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