元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる

ゆる弥

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36.ご乱心

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『マスターの消失を確認しました。固有名、ナイルのテイム状態は解消されました』

 世界の声がミリアが死んだことを明確に物語っていた。
 もしかして、こうなる事が分かっていたから俺に念話スキルをとったのか?

 そんな訳ないか。
 そこまで考えていたとは思えない。

「残念だけど、君のマスターは居なくなった。ということは、ただのモンスターになったわけだ。討伐されないうちに逃げた方がいい」

『ミリアを刺した人に心当たりはないか? 目に傷のある男が居なかったか!?』

「誰か、この子に近づく人か、目に傷のある男を見なかったか?」

 怪我を見てくれていた男が周りの人に聞いてくれている。

「あっ! そういえば、この人なんでここをウロウロしてるのかなぁっていうひとは居た気がする? 目に傷があったかも!」

『そいつはどこに行った!?』

「んー。前線に行ったと思うよ?」

 そうか。また逃げたんだな。そうかよ。

『蘇生の魔法は!?』

「聞いた事ないね」

 ダメ元で聞いてみたが、ダメだった。
 そりゃそうだ。あればみんな使ってるわ。
 はははっ。ダメだ。涙もでねぇ。
 骨だもんな。

 くっ……。
 アイツ死んでなかったのか。
 ちゃんと調べなかったのが悪かった。

 モンスターさえいなければ。
 来なけりゃこんな事にはならなかったんだ。
 もういい。

 俺の邪魔をしたアイツらは皆殺しだ。

 俺はミリアをその場に置き去りにし、モンスターの方に駆ける。

 ストロング流剣術 剛剣術
「カタタ(紫電《しでん》)」

 距離を一瞬で詰め、目の前にいたオークを複数斬り裂いた。

 ストロング流剣術 剛剣術
「カタカタ(光芒《こうぼう》)」

 目の前にいた多くの敵を突きで串刺しにする。
 周りにいる敵を次々と斬り裂いて戦闘不能にしていく。

 本当はこれを使うと剣ももたないだろうし、体ももたないかもしれない。しかし、身体強化を使えばもしかしたらいけるかも。

 胸にある青い炎の魔力を体に行き渡らせる。
 俺の体は青の炎で包み込まれた。

 腰に一度剣を戻して腰を落として構える。

 ストロング流剣術 抜剣術 奥義
「カタカタカタタ(明鏡止水《めいきょうしすい》)」

 半径十メートルに居たモンスターは抜かれた剣の一撃で真っ二つになった。これで数十体は葬っただろう。

 ポッカリとそこだけモンスターが居なくなった。
 ピシッと剣にヒビが入っている。
 よし。あと一回はもつ。

 もうモンスターも少ない。
 まとまっている所はあと一つ。

 駆けて行く。
 目の前にはモンスター。
 後ろには冒険者。
 今度の奥義は扇状に広がるからこの方が良いだろう。

 ストロング流剣術 剛剣術 奥義
「カッカカタカタ(百花繚乱)」

 放たれたのは無数の突き。
 扇状に放たれたその斬撃は二十メートル先まで影響を及ぼし、目の前のモンスターを駆逐した。

 あとはチラホラとモンスターが残っているだけ。

 さっさとこうやって済ませればよかった。
 俺は判断を間違ってばかりだ。
 クソっ!

 剣を地面に叩きつけるとブレイドは粉々になって風に流れていってしまった。

 残ったのはグリップだけ。

 クソッ! クソッ! クソッ!

 グリップを地面に叩きつける。

 周りの冒険者は戸惑いながらも残りのモンスターの掃討にあたっている。
 これで脅威は無いだろう。

 俺はフラリと歩き出すと王都に向かう。
 俺はまだローブを着ている。
 冒険者以外はスケルトンだと分からないだろう。

 ミリアの元に行くと布がかけられていた。
 覚束無い足取りでミリアの前に座る。

 ゴメンなミリア。
 守るって言ったのに、守れなかった。
 壊れない剣があれば……。

 いや、言い訳だな。
 最初からミリアから離れなければよかったんだ。

ポタッ

 空から落ちてきた滴が頬に落ち、流れていく。
 天が俺に泣かせてくれたのだろうか。

ポタッ  ポタッ  ポタポタポタッ ザァーーー

 俺の代わりに天が泣いてくれているのだろうか。その雨に打たれたまま佇んでいると人の気配がした。

「ナイル……もしかして…………そこに寝てるのはミリアか?」

『そうです。目を離した隙に何者かに毒入りの刃物で刺されたみたいです。発見された時にはもう全身に毒が回ってて遅かったです』

「念話……取得したんだな……世界の声は?」

『聞こえました。マスターの消失を確認したと……』

 俺は世界のそんな言葉は聞きたくなかった。

「なぁ。ナイル……俺は世界を旅してきたって言ったろう?」

『何の話ですか? ミリアに関係あるんですか!?』

 もう何も耳には入ってこなかった。
 俺はミリアとここで朽ち果てるまで一緒に居るんだ。
 ミリアからもう片時も離れはしない。
 骨もそのうち風化するだろう。
 そう思ったらそれもいい案かなと思ったのだ。

 そして、気がついた時にはガッツさんの胸ぐらを掴んで顔がつくくらい近くに顔を近づけていた。

「関係は……ある……かもしれない……」

『ふざけるな!?』

「ふざけてない。聞け。ミリアを復活できる可能性がある」

『なっ……』

「俺が聞いた話は伝承の類だがな、通常のテイムモンスターの進化の場合は、進化先がウインドウに表示される。だがな、テイムモンスターのマスターが消失して進化条件が揃った場合、ウインドウから、マスターの蘇生が選択出来る……らしい」

『本当ですか!?』

「元々モンスターの進化とは人一人を生み出せるエネルギーが必要だと言われている。伝承だが、可能性はある」

 その時、土砂降りの雨は晴れ。
 一筋の光が天からミリアに降り注いだ。
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