43 / 69
43.晩餐会
しおりを挟む
「この前のスタンピードは原因が不明らしいね。しかも、A級も混じっていただろう? だから、王立騎士団も大慌てだよ。よくあの時冒険者達だけで対処出来たね…………聞いた話によると、スケルトンが最後は殲滅したらしいが……?」
伯爵の当主ともなればそういう問題も降り掛かってくるのか。
なるほど、この前のあれは原因不明となっているのか。目に傷のある男が原因な気がしていたけど、下手なことは言えないな。
『そうですね。A級が群れをなしていました。その為にこちらも統率が崩れた部分がありますね。最後は、剣に悪いことをしました。せっかくのミリアとの思い出がある剣を粉々にしてしまいました』
マルスさんは目を閉じることを忘れているのか目を見開いたままだ。
「そんなに驚くことかしら? ナイルさんも念話できるようになったのですわよ?」
「そのようだね。聞いたことがない声だったから驚いたよ。そうか。これは良いねぇ。ミリアさんの事を煩わせなくてすむね」
リンスさんがそうフォローしてくれる。マルスさんはそれはいいと気分が上がったようで、鼻歌を歌っている。
「でも、私はなんだか、少し寂しい気分ですよぉ」
「今までナイルさんを独り占め出来ていたんですもんね?」
「ちょっ! 別にそういう意味じゃ! っ!」
ミリアの顔が茹でダコの様になり頭から煙が出てきた。
あれ?
ミリアってそんなに反応するやつだったっけ?
『どうした? いつものミリアらしくないな?』
「いっ! いつもの私ってなによぉ! いつもどんなんだって言うのよ! 粗暴で! 食べ方が汚くて! 可愛げがないってこと!?」
そういってテーブルを力強く叩くと、部屋を出ていってしまった。
何だったんだろうか……俺が余計なことを言ったからか?
まさかあんなに恥ずかしがると思ってなかったからなぁ。こっちもミリアの反応が可愛くて動揺して憎まれ口みたいになっちまった。
「ナイルさん? 行っておあげなさい。ダンテが行き先を知っているそうよ」
優しくそう言ってくれたのはリンスさんの母親、ショナさん。
『すみません。有難う御座います! ちょっと行ってきます!』
「ナイルさん、ミリアを頼みましたわよ?」
リンスさんに釘を刺され、親指を立てて部屋を後にする。
部屋を出るとダンテさんが案内してくれた。
前に通してもらった所にいるみたいだ。
コンコンッ
小さくノックしてみる。
返事はない。
この距離なら念話は届くだろう。
『ミリア、さっきはすまなかった。ミリアの反応が可愛すぎてついつい憎まれ口を叩いちまった。ごめん。俺はな、ミリアの山賊みたいな飯の食い方も好きだぞ? 愛らしいと思ってる。ただ、他の貴族との食事会とかだとやめた方が良いかもな。はははっ。ミリアが下に見られるのは、俺も嫌だから』
そこまで言うと中で物音がした。
少し話を聞く気になってくれただろうか。
『前はあぁいう事を言われてもケラケラ笑うだけだっただろ? だから、俺も色々考えちまったんだ。馬鹿だよな。あまりにも反応が可愛いから意地悪するなんてガキみたいだ。なぁ。そんな反応をするってことは、俺が骨でも好きでいてくれているってことなのか?』
「……」
少し気配を探るが。
動きがない。
ヤバイ。突っ込んで聞きすぎたか。
『いや、余計なことだっ────』
「だから、前から好きって言ってるじゃん! ずっとそう言ってるでしょ!?」
『いや、でも今まで────』
「今までは私だって気を使って冗談っぽく言ってたんだよ! だってナイルは骨だから……とか言って流すからさ。私にとっては、ナイルは最初から私の王子様だった」
『えっ!? そんなこといちども────』
「言えるわけないじゃん! 私だって嫌われたくなかったんだよ! だからナイルの事を沢山知ろうとした。でも、失敗ばっかりで上手くいかなくて……そしたら死んじゃってた」
『あの時、もしかして……俺を気遣って前線に出したのか?』
「そうだよ……だって、ナイルが戦いたいだろうと思って、いつも私を守って伸び伸び戦えないからあの環境なら存分に戦えるのかなって思って」
俺は膝から崩れ落ちた。
そうか。おれがミリアにそうさせていたのか。
「でもね、ナイルが悪いわけじゃないんだよ? 私がそう思って勝手にそうしたの」
目の前には扉を開けたミリアが居た。
「ねぇ、ナイルは私の事好き? 私はナイルがスケルトンだっていいよ? ぜーんぜん構わない」
『俺だってミリアを最初に見た時から可愛いと思っていたさ。でも、俺はモンスターだ。だから、この気持ちを伝えていいのかわからなかった』
ミリアは俺を抱きしめてくれた。
「いいよ。だって、ナイルはナイルだもん。モンスターなんて、関係ないよ! 私はナイルが好きなの!」
『おれでいいんだろうか? こんな骨だけのやつがミリアみたいな可愛い子を好きになっていいんだろうか……』
「いいよ? 私が許してあげる!」
俺とミリアはしばらく抱き合って気持ちを伝え合った。
それを影からリンスさんと、ダンテさん、マルスさん、ショナさんに見られていたのは気づかなかった。
みんな涙を流していたとか。
伯爵の当主ともなればそういう問題も降り掛かってくるのか。
なるほど、この前のあれは原因不明となっているのか。目に傷のある男が原因な気がしていたけど、下手なことは言えないな。
『そうですね。A級が群れをなしていました。その為にこちらも統率が崩れた部分がありますね。最後は、剣に悪いことをしました。せっかくのミリアとの思い出がある剣を粉々にしてしまいました』
マルスさんは目を閉じることを忘れているのか目を見開いたままだ。
「そんなに驚くことかしら? ナイルさんも念話できるようになったのですわよ?」
「そのようだね。聞いたことがない声だったから驚いたよ。そうか。これは良いねぇ。ミリアさんの事を煩わせなくてすむね」
リンスさんがそうフォローしてくれる。マルスさんはそれはいいと気分が上がったようで、鼻歌を歌っている。
「でも、私はなんだか、少し寂しい気分ですよぉ」
「今までナイルさんを独り占め出来ていたんですもんね?」
「ちょっ! 別にそういう意味じゃ! っ!」
ミリアの顔が茹でダコの様になり頭から煙が出てきた。
あれ?
ミリアってそんなに反応するやつだったっけ?
『どうした? いつものミリアらしくないな?』
「いっ! いつもの私ってなによぉ! いつもどんなんだって言うのよ! 粗暴で! 食べ方が汚くて! 可愛げがないってこと!?」
そういってテーブルを力強く叩くと、部屋を出ていってしまった。
何だったんだろうか……俺が余計なことを言ったからか?
まさかあんなに恥ずかしがると思ってなかったからなぁ。こっちもミリアの反応が可愛くて動揺して憎まれ口みたいになっちまった。
「ナイルさん? 行っておあげなさい。ダンテが行き先を知っているそうよ」
優しくそう言ってくれたのはリンスさんの母親、ショナさん。
『すみません。有難う御座います! ちょっと行ってきます!』
「ナイルさん、ミリアを頼みましたわよ?」
リンスさんに釘を刺され、親指を立てて部屋を後にする。
部屋を出るとダンテさんが案内してくれた。
前に通してもらった所にいるみたいだ。
コンコンッ
小さくノックしてみる。
返事はない。
この距離なら念話は届くだろう。
『ミリア、さっきはすまなかった。ミリアの反応が可愛すぎてついつい憎まれ口を叩いちまった。ごめん。俺はな、ミリアの山賊みたいな飯の食い方も好きだぞ? 愛らしいと思ってる。ただ、他の貴族との食事会とかだとやめた方が良いかもな。はははっ。ミリアが下に見られるのは、俺も嫌だから』
そこまで言うと中で物音がした。
少し話を聞く気になってくれただろうか。
『前はあぁいう事を言われてもケラケラ笑うだけだっただろ? だから、俺も色々考えちまったんだ。馬鹿だよな。あまりにも反応が可愛いから意地悪するなんてガキみたいだ。なぁ。そんな反応をするってことは、俺が骨でも好きでいてくれているってことなのか?』
「……」
少し気配を探るが。
動きがない。
ヤバイ。突っ込んで聞きすぎたか。
『いや、余計なことだっ────』
「だから、前から好きって言ってるじゃん! ずっとそう言ってるでしょ!?」
『いや、でも今まで────』
「今までは私だって気を使って冗談っぽく言ってたんだよ! だってナイルは骨だから……とか言って流すからさ。私にとっては、ナイルは最初から私の王子様だった」
『えっ!? そんなこといちども────』
「言えるわけないじゃん! 私だって嫌われたくなかったんだよ! だからナイルの事を沢山知ろうとした。でも、失敗ばっかりで上手くいかなくて……そしたら死んじゃってた」
『あの時、もしかして……俺を気遣って前線に出したのか?』
「そうだよ……だって、ナイルが戦いたいだろうと思って、いつも私を守って伸び伸び戦えないからあの環境なら存分に戦えるのかなって思って」
俺は膝から崩れ落ちた。
そうか。おれがミリアにそうさせていたのか。
「でもね、ナイルが悪いわけじゃないんだよ? 私がそう思って勝手にそうしたの」
目の前には扉を開けたミリアが居た。
「ねぇ、ナイルは私の事好き? 私はナイルがスケルトンだっていいよ? ぜーんぜん構わない」
『俺だってミリアを最初に見た時から可愛いと思っていたさ。でも、俺はモンスターだ。だから、この気持ちを伝えていいのかわからなかった』
ミリアは俺を抱きしめてくれた。
「いいよ。だって、ナイルはナイルだもん。モンスターなんて、関係ないよ! 私はナイルが好きなの!」
『おれでいいんだろうか? こんな骨だけのやつがミリアみたいな可愛い子を好きになっていいんだろうか……』
「いいよ? 私が許してあげる!」
俺とミリアはしばらく抱き合って気持ちを伝え合った。
それを影からリンスさんと、ダンテさん、マルスさん、ショナさんに見られていたのは気づかなかった。
みんな涙を流していたとか。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる