元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる

ゆる弥

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50.逃走劇

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 デクダを仲間にした俺達は早速背中に乗って優雅に旅をしていた。
 大きな荷物もあったのだが、背負ったままだとさすがに重くてのれなかったのだ。

 そこで、考えたのが蛇の皮を下に敷いて引っ張ろう作戦である。
 蛇の皮の上に荷物を乗せて半分は縦に切り裂いてデクダに縛る。もう半分は荷物を縛っている。

 ソリのような形でなんとか運ぶことが出来のであった。そう考えるとミリアがどれだけ力持ちか分かるなぁ。

 そんなミリアは俺の後ろではしゃいでいる。
 なんだか、この高さからの眺めは見たことがないとかでテンションが高い。

「ねぇ!? もっと早く走れないのぉー!?」

『これ以上早く走ったら振り落とされるし、後ろに引っ張ってる荷物もさすがにやばいと思うぞ?』

「そっかぁー。ざんねーん。はははっ! 走れ走れー!」

 デクダは気持ち少しスピードを上げたようだ。こちらの気持ちを察してくれているんだろうか。なんてできた子なの。デクダ。

 軽快に走っているとドドドドドッとなにやら音が近づいてくる。

 後ろを見ると土がめくれ上がってこちらを追いかけてきている。

『なんだ? あれ?』

「えぇー!? わっ! 何あれ!?」

 姿が見えない為に全容が見えないが、こちらを追いかけているのだけは分かる。凄いスピードだが、大丈夫だろうか?

ドバァァァァンッ

 土から顔を見せたのは目がなく大きく開いた口。その口には鋭い牙が所狭しと並んでいる。あんなのに食われたら骨でも砕かれそうだ。

『あれは、ワームか! 逃げないとヤバい!』

「斬っちゃえば?」

『それが出来れば簡単なんだが、このスピードだと少しでもスピード落としたら喰われる。俺はあの口の中には入りたくない。だから、逃げよう』

 少しデクダの腹をトントンッと足で合図したのを察してスピードを上げた。

 よーし。
 いい子だ。

 首をなでなでしながらデクダの背中に必死に張り付く。その俺の背中にはミリアが笑いながら引っ付いている。

 力強く引っ付いているのはいいんだが、そのーな、この骨の有能なところといえばいいのか。骨なのに触覚がある感じ。柔らかいものが当たっているんだ。

 いや、いいんだよ。ギュッとしてないと落とされたら大変だからな。うん。

「ナイルー! 早いねぇ!」

『だな! こいつ俺達を食おうとしてんのかな?』

「あー。もしかして」

 後ろを見るとミリアの持っていた保存食が少し布袋から出ている。その匂いに吊られたのかもしれない。

「いやー。でもさ、食料なしはキツいよね?」

『そうだな。ミリアが干涸びちまうな』

 少しの沈黙。
 自分が干涸びる想像をめぐらせたのだろうか。
 俺の腹のあたりを締め付けるのが強くなった気がする。

 そうだよなぁ。
 嫌だよなぁ。
 このまま逃げ切るか。

 最初は逃げ切れると思ったのだが、残念ながらそうはいかなかったようだ。 

 徐々に距離が縮まってくる。

『ミリア! 少し皮を引っ張って荷物を揺らしてみてくれ!』

「えぇー!? こぼれちゃうよぉ!」

『こぼれていいんだ! やってくれ!』

「分かったよぉ。イヨイッショ!」

 ズサザァ、ズザザァ麻袋が大きく揺れる。
 飛び出ていた保存食達がワサワサと落ちていく。

「いやぁぁー! 私の大好きなドライソーセージがぁぁ!」

『仕方ない犠牲だと諦めるんだ』

 俺は顔の前で左手で拝む。
 犠牲になってくれてありがとう。
 お前達のことは忘れないよ。
 ミリアが。

「あぁぁぁあ! ビーフジャーキー!」

『まだあるから大丈夫だって!』

 必死に走っているデクダ。
 その後ろからきていたワームは少しの食料が口に入るとスピードを落として咀嚼し始めた。

『今だ! 逃げるぞ!』

「あぁぁぁぁー! 私の干し芋ぉぉぉ!」

『まだあるって! 落ち着け!』

 落ちそうになるミリアの腕を引きながらデクダと疾走する。
 段々と離れてきた。

『よしよし! いいぞ! そのまま行け!』

 俺の意思を汲み取ってか、そのまま暗い洞窟に突っ込んだ。

『とりあえず、ここで様子を見るか』

 デクダの首をなでながら周りを観察する。

 ここは洞窟みたいだけど。
 奥に何か居たりとかしなきゃいいけどなぁ。
 そう思いながら奥に行く。

「ナイル? ここって大丈夫なの?」

『それが分からない。ちょっと様子を見に行こう』

 二人と一体で奥に行くと、仄かに光を放つ壁。仄かに光を放つ床。

 これは。もしかして。

「あれぇ? これって階段じゃない?」

『あぁ。そうだな。これはダンジョンだ』

「だねぇ」

 ダンジョンもたまに発見されているが、大抵は最下層にお宝があることで有名だ。
 ただ、滅多にダンジョンが見つかることは無いので稀なことである。

「これってラッキーじゃない!?」

『何階層まであるかによって、お宝の良さも変わるらしいからなぁ。少し深い階層だといいけどなぁ』

「そうだねぇ! ナイルなら二十階層とかでも行けちゃうよね!?」

『いや、分かんないけどな。大群で襲われたらたまったもんじゃないが』

「ふふふっ。その時は私も戦っちゃうぞぉ!」

 シャドーボクシングを始めるミリア。

『ま、まぁ、俺一人でも大丈夫だろうけどな』

「ふふふっ。まぁ、行ってみよ?」

 デクダはお留守番にして食糧だけもってダンジョンに入ることにしたのであった。
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