職場の鬼上司は私推し!?

星野える

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11.成果

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事務所に戻ってくると小鳥遊はいくつか指示を出してモニター前に並んだ三体のみるくみくフィギュアにむかってニコニコと話しかけた。

「みるくさんのおかげで商談も成功!いやぁ、見る目のある人はやっぱりみるくさんを好きになるんだよ」

「小鳥遊さん……フィギュアに向かって話しかけないでくださいよ……ちょっと怖いです」

「いいだろ?楢崎さんは気難しい人だが見る目はたしかなんだ。あの人に気に入られるってのは大きいんだよ」

「そうなんですね。人のいいおじちゃんタイプかと思いましが」

「雰囲気はな。だがあぁいうタイプが一番怖いんだ」

「それでみるくみく……」

「本当はみるくさんをダシにして仕事を取ったみたいで罪悪感もあったんだけどな……みるくさんならいいよって言ってくれる気がしたんだ……ねぇ、みるくさん……え、本当?いいの?みるくさん優しい!ありがとう!」
「…………」
三体並んだみるくみくのフィギュアは何も答えない。
当たり前だが小鳥遊が一方的に話しかけ、妄想のなかのみるくみくの返事を聞いて喜んでいるのだ。
成人男性が仕事中にフィギュアに話しかける光景なんて一種のホラーである。特に小鳥遊のような容姿端麗で社会的な地位の高い男なら尚更。なんならモデル級に端正な顔だちをした正真正銘のかっこいい人が、である。

目の前で繰り広げられる奇怪な光景を御厨はただ茫然と眺めた。
もしかしたらみるくみくについて語る小鳥遊をみる佐野も似たような気分だったのかもしれない。

「あの、御厨……部長に何があったの?」

危険を察知した中原がこっそりと耳打ちした。冷静で仕事ができる女の目にも戸惑いの色が浮かんでいる。とはいえ、御厨にもどうしてこんなに急に小鳥遊がオープンになったのかわからず困惑していた。

「商談成立させたかな……」
「にしてもさぁ……」
「オタクならよくある光景ですよ。職場でこれほど堂々とやるとは……小鳥遊さんも侮れない」
「新谷……部長のこと苦手じゃなかったの?」
「最初はパワハラだし苦手だったんですけど話すとおもしろい人ですよね、小鳥遊さんって」
「いつの間にか仲良くなっちゃって……まぁ最近はとっつきやすくなったわよね、部長」

小鳥遊のことを嫌いとまで言っていたのに中原から小鳥遊への嫌悪感は全くと言っていいほど感じられなかった。

「なんだ?俺の話か?」
「違いますよ」
「部長の話なんかしてもおもしろくないですし」
「新谷!俺いじめられてないか?!」
「女性同士が仲良く話しているあいだに入ろうとした小鳥遊さんが悪いです」
「何!?」

ついこのあいだまで小鳥遊と打ち解けるなんて思ってもいなかった。小鳥遊はみるくみくのおかげだと言うだろうがそれは違う。小鳥遊の良いところをみるくみくが引き出したのだ。
チームの雰囲気がこれほど良くなったのはみるくみくのおかげだろう。
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