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るるんぶるる⇔寺山習字の山寺⇔次の王国の次
しおりを挟む倉橋は、自分が「弾丸」になったと思った。
それほど、凄い勢いで場外に向かって飛んでいった。
『るんるんるるんぶ、るるんぶるるん』
火星人たちは、まだ歌っている。
身を犠牲にして、倉橋を受け止めるつもりなのだ。
タコやイカに似た仮面の下は、本当は『DADAの王国』のクラスメートである。倉橋は、彼らの優しさに初めて触れた気がした。
「るんるんるるんぶ、るるんぶるるん」
倉橋が呟く。
「みんな仲間だ、ありがとう」という彼らへの意思表示のつもりだった。
素敵だ。このように、アンドロイドも、人間も、ホログラムも仲良しになれたら、AI時代の地球の未来も明るい。
もしかしたら、戦争だって無くなるかもしれない。
「ドン」
次の瞬間、倉橋は衝突した。
ぶつかると同時に、状況が把握できた。
(これは皮肉だ)
倉橋を受け止める為に、待ち構えていたのはクラスメートなんかでは無く、クッションの様に並べられた『火星人』たちの頭部だった。
タコやイカのような頭部を残して、クラスメートは全員撤収してしまっていた。付近には、人っ子一人いない。
「まいったな」
倉橋が声を上げる。
ともかく、身体に異常は見当たらなかった。アンドロイドとはいえ、あの高さからマトモに落ちたら、どうなっていたか分からない。
「コレに救われたことには、変わりは無い」
倉橋は、傍らに転がっていた『火星人』の頭部を掴んだ。ゆっくりと身体を起こす。
頭部はブヨブヨしていて、エアバッグのような効果が期待できる。
一つだけ、謎が残っている。
(さっき歌っていたのは誰だろう?)
あれほど、はっきり聞こえたから、幻聴ということはない。
誰かが近づいてきた。
顔を上げて、そちらを見る。前述した中年男性(無論、パッと見は子供だ)だった。
ここで、ようやく、男性の名前を思い出した。彼は、青森県出身の高名な詩人『寺山習字』である。
今日は、デュシャンのセコンドを務めている。
「るんるんるるんぶ、るるんぶるるん」
寺山が言った。
なんと寺山は、リングの青コーナーに置いてあった『青い小便器』を抱えていた。
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