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~宣言解除後の日常(38)~
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(どうしよう、どうしよう)
倉橋は、頭をフル回転させている。
だが、無情にも時間は刻々と過ぎていく――時間に感情が無いからだ。当然だろう。親切な時間なんて、あるわけがない。
(まずい、動けない)
倉橋は金縛りにあったかのように、なぜだか【立哨】姿勢から、動くことができなかった。
その時、外国人の老人が乗ってきた。ウイルス対策の【マスク】をした老人は、大きな段ボールを抱えていて、そのまま座席に腰掛けた。老人は、チェスの駒を動かしているのが、よく似合いそうな細くて長い指をしている。
老人が一瞬、マスクを外した。
「あ」
倉橋は声を上げた。
老人は、M・デュシャンにそっくりだった。
老人に驚いているうちに、電車は出発してしまった――ドアの閉まる音が無情にも響き渡った。
倉橋の状況は、ますます悪くなるばかりだった。
(お腹には、どんどん悪性のガスが充満してくる。さらに、う●こは、もう【出口】目前まで来ている)
倉橋は、顔をしかめた。
もう、顔をしかめるくらいしかできなかった。
その時、老人が、おもむろに段ボールから、【あるもの】を取りだした。
【あるもの】を床に置く時、ことりと乾いた音がした。
「まじか」
倉橋が、心の中で呟いた。
ここは、VRゲーム世界の中では無い。なのに、こんな展開をするなんて考えられない。
なんと、【あるもの】は、男性用の小便器だった。小便器は、まるで倉橋の為に置かれたかのように、あの広い口をこちらに向けている。
ちょっと待ってくれ――この老人は倉橋に、電車の中で、しかも小便器に、う●こをしろと言っているのだろうか?
倉橋は、頭をフル回転させている。
だが、無情にも時間は刻々と過ぎていく――時間に感情が無いからだ。当然だろう。親切な時間なんて、あるわけがない。
(まずい、動けない)
倉橋は金縛りにあったかのように、なぜだか【立哨】姿勢から、動くことができなかった。
その時、外国人の老人が乗ってきた。ウイルス対策の【マスク】をした老人は、大きな段ボールを抱えていて、そのまま座席に腰掛けた。老人は、チェスの駒を動かしているのが、よく似合いそうな細くて長い指をしている。
老人が一瞬、マスクを外した。
「あ」
倉橋は声を上げた。
老人は、M・デュシャンにそっくりだった。
老人に驚いているうちに、電車は出発してしまった――ドアの閉まる音が無情にも響き渡った。
倉橋の状況は、ますます悪くなるばかりだった。
(お腹には、どんどん悪性のガスが充満してくる。さらに、う●こは、もう【出口】目前まで来ている)
倉橋は、顔をしかめた。
もう、顔をしかめるくらいしかできなかった。
その時、老人が、おもむろに段ボールから、【あるもの】を取りだした。
【あるもの】を床に置く時、ことりと乾いた音がした。
「まじか」
倉橋が、心の中で呟いた。
ここは、VRゲーム世界の中では無い。なのに、こんな展開をするなんて考えられない。
なんと、【あるもの】は、男性用の小便器だった。小便器は、まるで倉橋の為に置かれたかのように、あの広い口をこちらに向けている。
ちょっと待ってくれ――この老人は倉橋に、電車の中で、しかも小便器に、う●こをしろと言っているのだろうか?
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