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第三章
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しおりを挟む太一が、知らぬ間に亮からカーディガンを借りてから、約一週間後。
テスト期間が始まってしまい午前中で授業が終わるため、昼休みで顔を合わすこともなく、返そう返そうと思っているものの教室の前を通れば相変わらず手を振ってくるだけの亮に何も言えず、太一は俯いて足早に去る事しか出来なかった。
そして帰りもバイトを入れているため急いでおり、というよりなんと声を掛けていいのか分からず、太一は、どうしたもんか……。とぼんやり考えながら、学校終わりの本屋の狭いロッカールームのなかでエプロンの紐を後ろ手できゅっと結んだ。
働き始めて、一ヶ月半。
ようやく仕事に慣れ始め、本棚の位置も覚えることができた太一は、「今日も宜しくお願いします」と来た時も声を掛けたがもう一度そう店長に言いながら、売り場に入った。
しかし在庫の確認をしていてもあの日の亮のカーディガンと文字の事を考えてしまっていて、いやいやいや、今はとりあえず仕事に専念しねぇと。と太一は首を振って気を引き締めた。
本屋の仕事は店長から言われた通り、意外にも体力が要る仕事で。狭いロッカールームの上に重ねられている重たい段ボール三箱を下におろし、やっとこさカートに乗せた太一が売り場へと戻り補充をし始める。
季節はもう六月に入り梅雨が迫っているのかじめじめとしていて、うっすらと額に汗を浮かせた太一が黙々と作業をしていれば、自動ドアが開く音がした。
「いらっしゃいませ~」
出入口付近のカウンターに居る店長の声が聞こえ、店の奥の専門書のコーナーに居る太一もそれに合わせ「いらっしゃいませ」と掛け声をし、それからまた作業に戻る。
そして本を並び終えはたきでパタパタと棚を拭いていれば、
「え、太一じゃん」
と後ろから声を掛けられた太一は、びくっと体を震わせた。
もはや反射のようにそうなってしまう事に自分自身、若干恥ずかしく。ギギギ、と首を回せば案の定立っていたのは亮で、なんで居んの? ともはやお決まりのように太一は眉間に皺を寄せてしまった。
「バイトしてるってのは聞いてたけど、ここだったんだ」
「……」
突然の事に何と返していいのか分からず固まっている太一を見て、それでも苦笑まじりに微笑み、「参考書探してるんだ。案内してくれる?」と言ってくる亮に、この間の件もあり気まずいまま、太一は、ああ、それならこっち。と案内をした。
「……ここが大体参考書のコーナー」
「ありがとう」
そう優しく話しかけてくる亮に視線を逸らし、じゃあ、と元の場所に戻ろうとした太一。
だがその腕を掴み、
「終わるの何時?」
と聞いてくる亮のその力強さにびくっと震え、咄嗟にまたしても腕を振り払ってしまった太一がハッとした表情をしたあと、それでも口を閉ざしたままでいれば、
「……俺別に無理やり襲ったりなんかしないよ」
なんて真顔で返され、太一はひゅっと息を飲んだ。
笑っていない亮の顔を見る事などあまりなく、凄みさえ感じるその表情に太一が思わず後退されば、
「……色々話したいことあるから、終わったら商店街出たとこの喫茶店に来て」
と言い残し帰っていく亮。
まるで、決定事項だと言わんばかりに言い切り去っていく亮のその言葉に、……勝手に決めんな。と若干腹立たしくなったが、それでも明らかに自分の方が悪いと分かっていて、太一は唇を噛みながら俯き、とりあえず今は仕事だ仕事。と震えそうな足をなんとか動かした。
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