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それからの二人
太一が発情期になる話3 ※
しおりを挟む亮の長い指を三本も飲み込んだ太一の蕾が、きゅうきゅうと蠢いている。
縁からは愛液がしとどに溢れ、お尻まで垂れてはシーツに染みを作っており、そのあまりにも扇情的な光景に亮はハッと息を吐いたあと、乱暴に腕を伸ばしてベッド横の小棚の引き出しを開いた。
もうほぼ毎日使っているお陰で引き出しの中をガサガサと漁ったり見る事もなく、お目当てのモノを取り出した亮。
そんな亮の仕草に、太一は未だ埋まったままの亮の指を更にきゅうぅと締め付け、あえかな息を漏らした。
「ぁ、……は、りょ、」
「太一、痛かったらすぐ言ってね」
「りょ、はやく、はやく……」
亮の言葉を聞いているのかいないのか、熱に犯されたように亮の名前を呼び、太一が早くとねだる。
その淫らさに亮はやはり息を飲んでは、口で避妊具の袋を挟み片手で封を開けてから素早くコンドームを自身へと着けた。
「うぅ……」
亮の姿にときめきつつ、コンドームを一瞬だけ恨みがましげに見つめ、太一が唸る。
それがとても可愛らしく、亮はへにゃりと眉を下げ微笑みながらも、まだお互い我慢だよ。と言わんばかりに太一の汗でしっとりとした額に口づけた。
「んっ」
「太一、体勢変えるね」
そう言うと亮がずるりと一気に指を引き抜き、太一が目を見開いてあられもない声をあげる。
そんな太一に亮はごめんねと言わんばかりに頬にキスをしたあと、易々と太一をひっくり返した。
「うぁ、あ、な、に……」
ビクンビクンと身を震わせながら、いつもは正常位で隙間なくぴったりと密着しながらするのが好きな事を知っている筈なのにと、眉間に皺を寄せる太一。
だが宥めるよう背中に口づけながら亮がずぷぷっと自身を埋めた、瞬間。
太一は気持ち良さと一気に満たされる満腹感に思わず可愛らしい陰茎からとぷっと精液を吐き出し、かはっと声にならぬ声をあげ、呆気なくイッてしまった。
「ぁッ、あっ、ぁ……」
「っ……、太一、いれただけでイッちゃった? なか、すごいっ……」
「ぅ、……あ、」
きゅうううぅ、と締まる肉壁のきつさと熱さに、亮が眉間に皺を寄せ快感を逃しながらも小さく笑う。
その振動と声ですら太一には甘い快楽をもたらし、イッても尚治まらない衝動に、ぐすぐすと鼻を鳴らした。
「りょ、う、りょうっ……、おれっ、」
「……ん、大丈夫、気持ち良いね」
「んっ、……りょ、かお、みたい……」
亮にあやされ、恥ずかしさと嬉しさでぽやんとしたまま、太一が呟く。
その、いつもみたいにぎゅってしながらして欲しい。と恥ずかしげに言う太一の可憐で健気な姿に亮は、どんどんと可愛くなっていく太一の底なしさに目眩がしてしまいそうになりながら、太一の綺麗な背中に口づけた。
「ごめんね。今だけだからね。……この方が綺麗に噛めるから」
そう囁き、亮の唇が太一の背骨をなぞりながらのぼってゆく。
その刺激と紡がれた言葉に、太一は目を見開き、ごくりと唾を飲み込んだ。
……そうだ。やっと、やっと、番いになれる。
やっと、亮だけの俺になれる。
そう心臓をときめかせ、亮のをめいっぱい咥え込んでいる蕾からたらたらと愛液を溢れさせながら、太一はうなじを晒すよう枕へと顔を押し付けた。
「ぅ、ぁ……、りょ、かんで……」
小さな声で呟かれた、太一の声。
それは羨望や期待に満ち、白く細い首を無防備に晒す太一の姿に亮は小さく唸り声をあげ、本能に促されるまま太一の首もとへ顔を埋めた。
「ひっ、ああっ!!」
「っぐ、」
体を動かした反動で亮が太一の奥深くまで陰茎を押し込んでしまい、快感に声をあげる二人。
ぐちゅんっとはしたない水音が部屋に響き、痺れるほどの気持ち良さに二人が全身を震わせ、そして収縮する太一の中に亮は息を飲んだあと、目の前の細い首へ唇を這わせた。
「……あ、あ、はっ……」
「……たいち、噛むよ」
「ん、んっ」
余裕のない声で亮がそれでも最後の確認だと太一へ問えば、太一が必死にこくこくと頷く。
首筋からは甘い太一の匂いが誘うように漏れでており、亮は小さく唸り声をあげ、腹を空かせた獣のような勢いで、太一の首に歯を立てた。
「ッ──、カハッ……あ、あぁぁ……」
ブチブチッと歯が皮膚を引き裂き、血の匂いが互いの鼻にこびりつくなか、鋭い痛みに太一が喘ぎ悲鳴をあげる。
しかし瞬時に今まで感じた事もないほどの感覚に襲われ、太一はふるりと体を震わせた。
自身の体の隅の隅まで亮で満たされ、埋め尽くされ、そして交わってゆく、不思議な感覚。
それが得も言われぬほど気持ち良く心地よく、太一は堪らず中を収縮させイッてしまい、それに亮もつられるよう、コンドーム越しだが太一の中で射精したのを感じた。
「ひ、あ、ぁぁ……」
「ぐっ、ぅっ、」
首筋に亮の熱い吐息がかかり、しっとりと汗ばんだ亮の肌が背中にぴたりと密着する気持ち良さや、薄いゴム越しにでもびゅくびゅくと吐き出される精液の感覚に、太一がまたしても甘イキをしてはたらりと涎を口の端から垂らす。
全身が性感帯にでもなってしまったのかのようにひくんひくんと震えを止められず、しかしそれから太一は噛まれた痛みや気持ち良さとは違う涙を、じわりと枕へと滲ませた。
「……っ、りょ、う、りょうっ……」
胸が詰まり、ヒリヒリと焼けるような喉の痛みのなか、小さな声で亮の名前を呟くのが精一杯の太一が、ズビッと鼻を啜る。
そんな太一の様子に、すぐさま泣いていると気付いた亮が射精後の余韻から瞬時に顔を青ざめさせ、おろおろと情けない声を出しながらチロチロと舌先で労るよう、太一の生々しい傷口を舐めた。
「た、太一? ごめん、痛かったよね。ごめんね.……」
「うっ、うぅ……」
けれども太一は余計に泣き出してしまうばかりで、何か変な事をしてしまったのだろうか。と亮も泣いてしまいそうになっては、へにゃりと眉を下げた。
「た、たいち……、とりあえず一旦一回抜くね」
まるで初めての時のように、ろくに動けもせず射精してしまった情けさと恥ずかしさを感じつつ、亮が慎重に腰を引いては太一の中から自身を引き抜こうとする。
だが太一はぎゅっと後孔を締め、抜けるのを阻止した。
「ッ!」
「ぬこうと、すんな、ぁッ……」
「いや、で、でも」
「そのまま……、……でも、かおみたい……」
「ッッ~……!! う、うん!!」
太一の可愛さに内心で身悶えつつ亮が少しだけ体を浮かせば、太一は繋がったまま体勢を変え、すぐさま亮の首へと腕を回した。
「ふ、ぁっ、うっ……」
「っ、たいち、大丈夫?」
ぐちゅん、と中が擦れ、互いに小さく息を飲む。
しかしすぐに亮が太一の背中に腕を回し抱き締め返せば、太一はズビズビと鼻を鳴らしながらも、へにゃりと微笑んだ。
「……やっと、やっとちゃんと番いになれた……」
安堵と幸福に満ちた声で呟き、どこまでも無防備で柔らかな笑みを浮かべる太一。
それがまるで子どものようにいじらしくもあり、とても純粋で美しく、亮は息を飲んだあと同じよう言葉を詰まらせ涙を滲ませては、笑った。
「そう、だね。……太一、俺を選んでくれてありがとう。愛してるよ」
「……ズビッ……うん。おれも、ありがと……。あいしてる」
真っ裸のまま、汗でベタベタとしながらにへらとだらしなく笑う二人。
それはマヌケでおかしく、けれどもとても愛おしくて、亮は太一の頬を優しく撫でながら汗を掻いた額にキスをした。
「愛してる」
「ん」
「愛してるよ、太一」
「おれ、も」
「大好き」
ちゅ、ちゅ。と顔中にキスの雨を降らせ愛を囁く亮に、太一がくふくふと幸せそうに笑う。
しかし発情期が始まったばかりの体はすぐさま熱を欲し、太一はじわじわと沸く欲求に、堪らず腰を揺らした。
「っ!」
「ぁ、んっ……、りょ、まだ……」
腰を動かす度に、くちゅん、ちゅぷ。と小さくはしたない音が溢れ、恥ずかしいのに腰を止められず太一が顔を赤らめたまま亮を見つめる。
その、まだ足りない。もっと欲しい。と言わんばかりの扇情的な表情に亮は自身が一気に元気を取り戻したのを自覚しながら、ングゥッと息を飲んだ。
「ふぁ、あ、おっき、くなっ……、」
「ッ……、これ以上あんま煽んないで……。たいち、とりあえず一回抜くね……」
「っ、やぁ……」
「うっ、……こら、締めないでよ……。そのまましたら、コンドーム破れたり外れちゃうかもだから……」
発情期専用のアルファ用コンドームなので、損傷したり外れたりする事はほぼないが、流石に危ないと亮が快感に耐えるよう眉間に皺を寄せながら呟く。
その言葉に太一が寂しさを募らせつつも、あと数年の我慢だと下唇を噛めば、亮はよしよしとあやすよう太一の額にキスをしたあと、微笑んだ。
「ゴムはしなきゃダメだけど、でも安心してね。太一がもう大丈夫って言うまで、何度でも俺で満たしてあげるからね」
「っぁ……」
にたにたと笑いながら言う亮の親父臭い台詞に、普段ならば何を言っているのだと思えるのだが、今の太一にとっては媚薬のように魅惑的な言葉でしかなく。
思わず小さな喘ぎを漏らしながら、太一は期待でふるふると全身を震わせた。
「あっ、うぅ……」
ズルズル……、とゆっくり亮の陰茎が抜け、しかしまたすぐさま勃起した為反り返っており、乱暴にコンドームを取り外しては新しいモノに手を伸ばす亮を見て、太一はごくりと唾を飲んだ。
発情期だからという事もあるだろうが、ようやく番いになれた喜びと欲求が凄まじく、太一がハァッと熱い吐息を漏らして亮を見る。
うるうると潤んだ瞳に、ぽわりと染まった頬。そして物欲しげに少しだけ口を開き、くぱくぱと収縮する蕾からとろとろと愛液を溢れさせる太一のあまりの色気に、亮は堪らず避妊具を装着した瞬間、太一の中へ一気に自身を押し込んだ。
「っああぁっ!!」
「くっ、」
ズチュンッ! と奥の奥まで亮の熱い怒張で抉じ開けられ、しかしそれがとても気持ち良く、太一が快楽に蕩けた顔をしながらもっととねだるよう、亮の腰に足を回す。
「ひっ、うっ、ンッンッ!」
「ハッ……、たいち、すごい、きもちいっ……」
「あっ、ん、おれ、もっ、ああっ、」
腰を深く打ち付けながら亮が呟けば、ぎゅうぅ、と亮に抱きつきながらも、自分もだと太一がこくこくと頷く。
そして、やはり隙間なく密着し体温を感じ、亮の全部で自身が埋め尽くされる感覚が一番好きだと太一は快感のなかへにゃりと眉をさげ、至極幸せそうな顔をして笑った。
「りょう、あっ、りょ、あっあっ、」
「んっ、たいち、あいしてるっ……」
「おれ、もっ、ぁ、ん、あい、して、るっ」
肌と肌がぶつかる音が部屋中に響き、きつく抱き締め合いながら、二人が愛を紡ぐ。
そして番いとなった事で今までよりも更に深く相手との絆を感じ、亮と太一はやはり募る愛しさでお互い瞳に涙を滲ませながらもにへらとだらしなく笑い、それからずっと幸福に満ち満ちたまま、まだまだ発情期は始まったばかりだと互いの体をひたすらに求めあったのだった。
【 運命の君へ。この幸福全てもう何一つ手放さないと誓うから、だからどうか、これからも一生側に。 】
応援ありがとうございます!
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