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悪役令嬢は暗殺集団のボス
悪役令嬢は暗殺集団のボス〜あなたの特技も毒殺ですか?
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「ラファエル様! ミラコット・サルヴァールは、悪役令嬢よ!」
今日は、ここ、聖ルリアンナ学園の入学式ですわ。そんな中、私の婚約者であるラファエル・イトッカ公爵令息の腕に巻き付きながら、一人の女生徒が叫んでいます。ラファは今日も天使のように愛らしく、麗しく、輝いていますね。
……ではなく、ラファのように愛らしいお顔をしたピンクプラチナの髪をした女性に目をやります。もしかして、ラファの親戚の方でしょうか? そう思って首を傾げていると、私の視線に気づいたラファが、紳士的に彼女から腕を解きます。
……どうしましょう。悪役令嬢ってきっと、悪いことをする貴族子女という意味ですわね? 私がとっても悪いことをしていることが、ラファの親戚の方にバレてしまいましたわ。
そう思った私は、みるみる顔色が悪くなっていきました。そんな私を見て、勝ち誇った顔をする彼女と、駆け寄ってきて私を支えてくれるラファ……心配そうなお顔も天使のようですわ。
「だーかーらー。ラファエル様! その女から離れてください!」
「君。ミラに失礼じゃないか。ミラは素晴らしい女性だよ? そもそも、侯爵令嬢であるミラへの態度として、それはどうかと思うよ」
「ラファエル様! ここは、皆が平等に学べる聖ルリアンナ学園ですよ! 貴賤なんて関係ありません!」
そう胸を張って高らかに宣誓する彼女は、最低限のマナーという単語をきっとご存知ないのでしょう。これから高位貴族と関わることがあるかもしれませんわ。ここは、彼女と初めて関わる高位貴族の一端を担う私が、最低限のマナーを教えて差し上げないといけませんね。
「あの……まず、ご自身のお名前をおっしゃっていただいてもよろしいですか? 私が悪い人という評価につきましては、謹んでお受けいたしますが、高位貴族と関わる前にマナーを学ばれた方がよろしいのではないでしょうか?」
私がそう問いかけると、彼女のサファイアのように輝く瞳にみるみると涙が溜まっていきました。
「ラファエル様! こんな風に意地悪を言うんです! 平民出の私のことなんて、知らないって! 元平民なんだから、貴族を敬えって!」
「いえ、存じておりますわ。あなたは、ヒロカト男爵家のご養女、ルーシア様で……」
周囲も呆れた視線をもろともせず、ルーシア様は騒ぎ続けていらっしゃいます。
慌てて、存じ上げていることをお伝えしようと致しましたが、彼女の耳に届きません。
「ラファエル様ぁ! こんなにも酷いことをたくさん言うんですよ!」
普段よりも柔らかい口調で話しているつもりですが、ルーシア様のような、か弱いご令嬢には厳しすぎたのかもしれません。私の反省点ですわ。
「ルーシア様、私の言葉が強すぎたようですわ。申し訳ございません」
「ぐす、私のこと、平民だから弱いって言いたいんですね、ぐす」
「どちらかというと平民の方々の方がお強い印象がございますが……いえ、今は関係ございませんでした。って、あら? ラファ? どうしたの?」
「さっきから聞いていると、君、ミラに何をさせたいの? 貴族平民関係なく、失礼じゃないか。金輪際、僕たちに関わらないでくれ」
ラファが私の肩を優しく掴んで、ルーシア様の元から離れていきます。
「待ってください! ラファエル様! だって、その女は悪役令嬢なんですよ! ……なんでこんなにストーリーと違うの? あ! まさか!」
ラファに向かって声をかけたルーシア様は、ぶつぶつと何かを呟いた後、私に向かって大きな声で叫びました。
「待ちなさい、悪役令嬢! あなた、私と同じなのね!?」
「同じ……?」
その言葉に、私は思わず後ろを振り返ります。
「えぇ。あなたも、毒花に囲まれてをやっていたんでしょう!?」
ルーシア様の言葉に周囲はギョッとしました。しかし、私は胸がドキドキしてしまいました。そして、ルーシア様の元に駆け寄り、ルーシア様の両手を掴みました。そっと、周囲に聞こえないように語りかけます。
「ルーシア様も毒が得意ですの? 私も専門は毒殺をやってますの。どちらの毒を使っていらっしゃるの? 詳しくお話ししたいわ」
家業で暗殺なんてやっているご令嬢とは、初めて出会いました。共にお話ができることが嬉しくて嬉しくてたまりませんわ。後日、ティーパーティーを開催してもいいかもしれませんわ。おすすめの毒を並べて。
「え……どく、さつ?」
「えぇ! 私、誰にもバレずにこなすのが得意なんですの。毒花の蛇はご存じかしら? 同業者ならご存じですよね! ぜひ、今度一緒にティーパーティーをいたしましょう? 私、おすすめの猛毒がありますの! お飲みになります? ルーシア様ももちろん抵抗をお持ちでしょう?」
お仲間がいたことが嬉しすぎて、勢いが良すぎたかもしれませんわ。私、反省しておりますの。あれ以来、ルーシア様には避けられておりますわ。私の顔を見ると、「ひっ」と、叫んでお逃げになるんですもの。
「な、なな、間違えました! 金輪際お二人には関わりません! 私、別のルートを選びます!」
そう叫んで、私の手からするりと手を抜き取って走り去っていくルーシア様を、ポカンとした顔でみんな見守っておりました。
「変な子だったけど、友達になれなくて残念そうだね? ミラ?」
「ええ、残念だわ。私、せっかくお友達になれると思ったのに……また今度、ティーパーティーに誘ってみるわ」
「それがいいよ。ミラの自慢の庭園は、いろんな花が咲き誇っていて本当に美しいからね」
「私の庭園の良さをわかってくださるラファのことが、本当に大好きだわ!」
「そうだ。綺麗な虫を捕まえたから、ミラにあげるよ? 毒があるから、直接触っちゃダメだからね?」
「まぁ! 素敵な虫さん! ありがとう、ラファ」
今日もかわいいラファと二人で、毒花に囲まれて過ごします。ラファに悪役令嬢とバレないように気をつけないといけないですわね?
今日は、ここ、聖ルリアンナ学園の入学式ですわ。そんな中、私の婚約者であるラファエル・イトッカ公爵令息の腕に巻き付きながら、一人の女生徒が叫んでいます。ラファは今日も天使のように愛らしく、麗しく、輝いていますね。
……ではなく、ラファのように愛らしいお顔をしたピンクプラチナの髪をした女性に目をやります。もしかして、ラファの親戚の方でしょうか? そう思って首を傾げていると、私の視線に気づいたラファが、紳士的に彼女から腕を解きます。
……どうしましょう。悪役令嬢ってきっと、悪いことをする貴族子女という意味ですわね? 私がとっても悪いことをしていることが、ラファの親戚の方にバレてしまいましたわ。
そう思った私は、みるみる顔色が悪くなっていきました。そんな私を見て、勝ち誇った顔をする彼女と、駆け寄ってきて私を支えてくれるラファ……心配そうなお顔も天使のようですわ。
「だーかーらー。ラファエル様! その女から離れてください!」
「君。ミラに失礼じゃないか。ミラは素晴らしい女性だよ? そもそも、侯爵令嬢であるミラへの態度として、それはどうかと思うよ」
「ラファエル様! ここは、皆が平等に学べる聖ルリアンナ学園ですよ! 貴賤なんて関係ありません!」
そう胸を張って高らかに宣誓する彼女は、最低限のマナーという単語をきっとご存知ないのでしょう。これから高位貴族と関わることがあるかもしれませんわ。ここは、彼女と初めて関わる高位貴族の一端を担う私が、最低限のマナーを教えて差し上げないといけませんね。
「あの……まず、ご自身のお名前をおっしゃっていただいてもよろしいですか? 私が悪い人という評価につきましては、謹んでお受けいたしますが、高位貴族と関わる前にマナーを学ばれた方がよろしいのではないでしょうか?」
私がそう問いかけると、彼女のサファイアのように輝く瞳にみるみると涙が溜まっていきました。
「ラファエル様! こんな風に意地悪を言うんです! 平民出の私のことなんて、知らないって! 元平民なんだから、貴族を敬えって!」
「いえ、存じておりますわ。あなたは、ヒロカト男爵家のご養女、ルーシア様で……」
周囲も呆れた視線をもろともせず、ルーシア様は騒ぎ続けていらっしゃいます。
慌てて、存じ上げていることをお伝えしようと致しましたが、彼女の耳に届きません。
「ラファエル様ぁ! こんなにも酷いことをたくさん言うんですよ!」
普段よりも柔らかい口調で話しているつもりですが、ルーシア様のような、か弱いご令嬢には厳しすぎたのかもしれません。私の反省点ですわ。
「ルーシア様、私の言葉が強すぎたようですわ。申し訳ございません」
「ぐす、私のこと、平民だから弱いって言いたいんですね、ぐす」
「どちらかというと平民の方々の方がお強い印象がございますが……いえ、今は関係ございませんでした。って、あら? ラファ? どうしたの?」
「さっきから聞いていると、君、ミラに何をさせたいの? 貴族平民関係なく、失礼じゃないか。金輪際、僕たちに関わらないでくれ」
ラファが私の肩を優しく掴んで、ルーシア様の元から離れていきます。
「待ってください! ラファエル様! だって、その女は悪役令嬢なんですよ! ……なんでこんなにストーリーと違うの? あ! まさか!」
ラファに向かって声をかけたルーシア様は、ぶつぶつと何かを呟いた後、私に向かって大きな声で叫びました。
「待ちなさい、悪役令嬢! あなた、私と同じなのね!?」
「同じ……?」
その言葉に、私は思わず後ろを振り返ります。
「えぇ。あなたも、毒花に囲まれてをやっていたんでしょう!?」
ルーシア様の言葉に周囲はギョッとしました。しかし、私は胸がドキドキしてしまいました。そして、ルーシア様の元に駆け寄り、ルーシア様の両手を掴みました。そっと、周囲に聞こえないように語りかけます。
「ルーシア様も毒が得意ですの? 私も専門は毒殺をやってますの。どちらの毒を使っていらっしゃるの? 詳しくお話ししたいわ」
家業で暗殺なんてやっているご令嬢とは、初めて出会いました。共にお話ができることが嬉しくて嬉しくてたまりませんわ。後日、ティーパーティーを開催してもいいかもしれませんわ。おすすめの毒を並べて。
「え……どく、さつ?」
「えぇ! 私、誰にもバレずにこなすのが得意なんですの。毒花の蛇はご存じかしら? 同業者ならご存じですよね! ぜひ、今度一緒にティーパーティーをいたしましょう? 私、おすすめの猛毒がありますの! お飲みになります? ルーシア様ももちろん抵抗をお持ちでしょう?」
お仲間がいたことが嬉しすぎて、勢いが良すぎたかもしれませんわ。私、反省しておりますの。あれ以来、ルーシア様には避けられておりますわ。私の顔を見ると、「ひっ」と、叫んでお逃げになるんですもの。
「な、なな、間違えました! 金輪際お二人には関わりません! 私、別のルートを選びます!」
そう叫んで、私の手からするりと手を抜き取って走り去っていくルーシア様を、ポカンとした顔でみんな見守っておりました。
「変な子だったけど、友達になれなくて残念そうだね? ミラ?」
「ええ、残念だわ。私、せっかくお友達になれると思ったのに……また今度、ティーパーティーに誘ってみるわ」
「それがいいよ。ミラの自慢の庭園は、いろんな花が咲き誇っていて本当に美しいからね」
「私の庭園の良さをわかってくださるラファのことが、本当に大好きだわ!」
「そうだ。綺麗な虫を捕まえたから、ミラにあげるよ? 毒があるから、直接触っちゃダメだからね?」
「まぁ! 素敵な虫さん! ありがとう、ラファ」
今日もかわいいラファと二人で、毒花に囲まれて過ごします。ラファに悪役令嬢とバレないように気をつけないといけないですわね?
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