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宮久土兄弟

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「うら。あの日さ、なんで俺の家のそばにいたの」
 急に話が向いてきて、ドキッとしてしまった。

 かける先輩に初体験をお願いしようと思った、なんて言わるわけがない。焦りと悲しみで頭に血がのぼっていて思い立ったバカな行動だから。
 どうして知っているんだろう、どこまで見ていたんだろう、と思うと言葉が出てこない。

「兄さんの様子を見に行ったらって、オレが言った」
 宮久土先輩は視線をさまよわせながら言う。明らかに挙動がおかしい。
「嘘つき」
 かける先輩は言い捨てる。

「馳の嘘は一発で分かるよ、視線がうろうろするから」
 私でも分かった。

「ま、いいや。ってわけだから。うら、俺ともご飯食べてよ」
「兄弟そろって、距離のつめ方が凄いなぁ」
 航先輩のボヤキと、部員たちの視線を受けながら私は困り果ててしまう。そこで、更に困る発言を、宮久土先輩がしてくるとは思わなかった。

「じゃ、兄さん、オレと一緒に住む?」
「み、宮久土先輩?」
「なんで俺が馳と住まなきゃいけないわけ?」

「芦野さんとご飯を食べたいのは、オレもだから。一緒に住めば、芦野さんが行く場所は一カ所でいいし」
「あ、あの?私は二カ所に通う前提だったんですか?」

 まだ、かける先輩の誘いに乗ったわけじゃない。
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