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昔々
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「この話はもう何度目かな。忘れちゃったけど、たくさんしてたから、大分スリム化されたと思う」
私は言葉もなく、宮久土先輩の顔を見つめる。
必要な言葉は分からない。何一つ言葉が出てこないのだ。
「叔母さん夫婦が保証人とか代理人が必要なときはやってくれれて。ライフライン系とか学費とか必要経費は保険金と遺産食いつぶしたり、育英補助使ったりしてる」
「二年前からですか?」
「うん」
宮久土先輩の瞳には揺らぎも迷いもない。たぶん、私の瞳の方がはるかに揺らいでいると思う。
「わ、私、何か失礼なこと言ってなかったですか?何も知らなくて」
「失礼なことってなんだろう?兄さんも話してないなら、知らないのは仕方ないよ」
宮久土先輩は何のことはなく、流してしまうけれど、私は自分が何一つ上手い言葉をかけられないことに、愕然とするのだ。
「昔話だよ。でも、聞いて後悔した?」
私は首を横に振る。
「私は今聞いたばかりだから。たった今、宮久土先輩のお父さんお母さんがいなくなってしまったみたいで……苦しいです。今、心におりてきました」
宮久土先輩の手に触れてしまったのは、今ここにちゃんと先輩が存在しているって確信したかったからだ。
「不思議だね。オレも今初めて心におりてきた。二年もおりてこなかったのに」
透徹した瞳にはわずかに悲しみの気配がにじんでいた。静かに見つめ合う。
「二年生きてたはずなんだけど。そこで止まってたのかな」
起伏のない口調がかえってしみた。
今度は私の番だ。
けれど、上手く話せる自信はない。
私は言葉もなく、宮久土先輩の顔を見つめる。
必要な言葉は分からない。何一つ言葉が出てこないのだ。
「叔母さん夫婦が保証人とか代理人が必要なときはやってくれれて。ライフライン系とか学費とか必要経費は保険金と遺産食いつぶしたり、育英補助使ったりしてる」
「二年前からですか?」
「うん」
宮久土先輩の瞳には揺らぎも迷いもない。たぶん、私の瞳の方がはるかに揺らいでいると思う。
「わ、私、何か失礼なこと言ってなかったですか?何も知らなくて」
「失礼なことってなんだろう?兄さんも話してないなら、知らないのは仕方ないよ」
宮久土先輩は何のことはなく、流してしまうけれど、私は自分が何一つ上手い言葉をかけられないことに、愕然とするのだ。
「昔話だよ。でも、聞いて後悔した?」
私は首を横に振る。
「私は今聞いたばかりだから。たった今、宮久土先輩のお父さんお母さんがいなくなってしまったみたいで……苦しいです。今、心におりてきました」
宮久土先輩の手に触れてしまったのは、今ここにちゃんと先輩が存在しているって確信したかったからだ。
「不思議だね。オレも今初めて心におりてきた。二年もおりてこなかったのに」
透徹した瞳にはわずかに悲しみの気配がにじんでいた。静かに見つめ合う。
「二年生きてたはずなんだけど。そこで止まってたのかな」
起伏のない口調がかえってしみた。
今度は私の番だ。
けれど、上手く話せる自信はない。
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