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昔々

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 私は視線を膝に落とす。全部とちゃんと話せない。
 膝がカタカタと震えるので、私の心にも昔話が降りてきた。

「芦野さんの話はまだ昔話じゃないのかもしれない」
 宮久土先輩はそう言う。

 そうかもしれない。でも、昔話にしてしまいたかった。
「書いてもいいですか?」
 私はスマホでアプリを開いた。

「書く?」
 宮久土先輩が首をかしげるので、スマホ画面を指差して頷く。

「昔話にしたいんです。でも口で話すと、震えちゃうから。書いてもいいですか?」
 宮久土先輩がじっとこちらを見すえてきた。

「もし、芦野さんが辛い思いをするなら聞きたくない」
「でも」

「それにひょうとつや先輩に殺される」
「宮久土先輩はいい人だから。話を聞いて欲しいって思います」
 ゆっくりと口にしたら、ちゃんと本心を話せていると感じた。

「いいよ、書いて」
 と言ってくれたので、書いてみて送ってみる。

 宮久土先輩が自分のスマホ画面で確認するのを、隣で見つめていた。
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