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しょっぱなから妊活

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 逃げるなよ、なんてどっちの台詞!?
 逃げたのはそっちだ。
 一年前、私達は結婚するはずだった。

 式の日取りも決まっていたのに、直前になって輝夜が全部白紙にしようと言ってきたのだ。
 結果として婚約破棄となり、輝夜は他の女性と結婚した。何が起こっているのか理解が追いつかずに、心は凍りついたままで何も感じなかったのを覚えている。

 輝夜の胸を叩いて、唇を噛んだ。黒く深淵な瞳からは、本音が見えない。私ばかりが動揺して、いつも置いてけぼりになる。その何もかも見透かした瞳を見るのがいやだった。

「後ろからやって。輝夜の顔なんて、見たくない」
 動揺を誘いたくて言ってみても、彼の表情は変わらない。

「分かった」
 輝夜がため息まじりに身体を離したので、私は強引に身体を反転させた。お尻を突き出すようにして、早くして、と急かす。

 左右の腰に手が添えられて、入り口にそれが当たる気配があれば、間をあけずに下腿の中心部をうがたれる。

 私の臀部に彼の腹部があたり、肉のはぜる音がした。背中に舌を這わせてくる輝夜には、悪趣味っと悪態をつけば、一等深い部分を突かれた。手の甲をかじって声を押し殺す。

「力を抜けよ」
 と言う言葉には頭をぶんぶんと振れば、輝夜が耳をかじってきて、
「好きだろこういうの」
 と囁いてくる。
 
 脳がとろけるような感覚がして、もっと中に欲しい、と腰がうねってしまった。
 いけない、と分かっている。

「ほら、嘘がつけない」
 耳にささやかれるビロードの声が、私の耳孔を染め抜いていく。あっ、と声が出てしまい、私は親指の付け根を噛んだ。

 許すつもりは全くない。
 自分をふった相手が、何食わぬ顔で舞い戻って来たなんて。金銭を盾に妊娠しろと言ってくるなんて。

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