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もう一度ふられたら

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 左手の指先に輝夜の冷たい指先が触れて、ふと顔を見あげれば、左手の指を絡めとって来る。

「半年間だけだったな、こういうの」
 同じことを考えていたのだと分かった。

 私達は常に別々の環境にいたのに、関係が切れずにいたのは、時々輝夜が連絡をしてきたり会いに来たりするからだ。
 私は選ばれるかどうかも分からない立場にいて、数いる女の子の中の一人だと思っていた。

「二年前、なんで連絡してきたの」
 父が亡くなり、母が体調を崩したタイミングで輝夜から連絡が来たのだ。それをきっかけに、私達は付き合うようになった。

「心配だったから。それ以外に何があるんだよ」
「そっか、そうだよね」

 昔からの知り合いの家庭状況の変化に、心配になって連絡して来た。それだけなのかもしれない。
 いや、それだけじゃないな、と輝夜は言う。

「諦められなかったんだ。オレの初恋は環だったから」
「信じないよ、そんなの」

 私が言ったら、
「信じなくていい」と返って来る。

 静寂が広がる。
 どこに向かって歩いているのか分からない。

 手を握りかえしたら、輝夜がこちらを向く気配があった。

「妊娠したら、契約終了だよね。でも、私は絶対に妊娠しない」

 私の声は空気の中に溶けそうなくらいに小さい。捨てられる?
 まだ好きなのは私だけなのだと思う。

 私は輝夜を見あげずに、打ち明け話をする。
 輝夜は静かに私の話を聞いてくれた。

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