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もう一度ふられたら

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「オレは最低だな、何も知らなかった」
 そう言って、輝夜は押し黙った。

「話していないから、知らないのは当然だよ。それにね、あれは妊娠じゃないし、流産でもない。よくあることみたいだよ、気づかない人もいるようなこと」

「悪かった、環。大変なときに一人にさせてしまって」
「もういい。どうしようもないし、謝られても困るから。でも、これで契約破棄だね」

「契約破棄?」
「妊娠しないって分かってるのに、給与を受け取り続けることはできないよ」
「破棄はしない」

 どうして、と尋ねようとしたら、
「結婚するって聞いた。相手は夏嶺さんだって」
 と言われた。

「そうだね。もう少ししたら、同棲する」
「やめるつもりはないのか」
 ないよ、と私は告げる。

「輝夜にはこの前の彼女がいる。元奥さんだよね、妊娠したって」
「オレの子じゃない、絶対に。遺伝子検査してもらえばいいさ。絶対にない」

「強い言葉を使うと、きっと後悔するよ。絶対はないんだよ、人の生活の中には」
 そう言ったら手を引かれた。輝夜は眉根を寄せ、少しだけ不機嫌そうな顔をする。

「性行為の事実がなくても、バンクに提供したことがなくても、オレの子だとしたら。人類は受精を必要としなくなったらしい。研究の進歩は目覚ましいな」

 輝夜はそう皮肉ってみせるけれども、私はその言葉をそのまま受け取ることは出来ない。

「結婚していたんでしょ?」
「ああ、顔も見たことのない相手と二ヶ月間の別居婚生活だったな。政党が倒れて離婚だ」

「どういうこと?」
「つまらない話は、したくない。ただ、環が聞きたいなら、出来る限り善処する」
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