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包囲網の中の本音
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しおりを挟む同じように緋々来も裾を絞って、
「ずぶ濡れだし、今日は授業出るの諦めろよ」
と言ってくる。
「まずは。身体を、返してくれないと」
返してもらうには、恐らくあれが必要だ。緋々来は仲のいい異性の友達。感性が近いと思ったし、話のテンポも合う。
大好きな友達だったのに。
どこで間違ったんだろう?
高校一年の新学期。
私は、緋々来の持っていた画集が気になって、声をかけたんだ。
私はその画家のファンだったから。
そして、仲良くなった。
木立の影に連れていかれる。座って、と言われて私は躊躇した。
「汚れる、こんなとこで」
「碧衣の身体が上になれば、汚れるのはオレの服だけ」
と言う。
「どうしても?」
と聞いたら、緋々来は頷いた。
私は言われたままに、草むらに座り込む。ボトムスのお尻の部分に土の湿気を感じた。
「汚れる」
と呟けば、
「この際、どこまでも、汚してやる」
苦々しく緋々来が言った。
全身でのしかかって来て、腿の間の隙間に、強引に飲み込まれる。鮮烈な感覚に、眩暈がした。こんなところを、誰かに見られたらどうすればいいんだろう。
もし、常盤に、花菜野に見られたら、どうしよう。
そのとき、人の気配がして、話し声がした。
目の前の緋々来と目が合う。熱っぽい私の瞳。こんな自分の顔を見たことはない。
緋々来があえて腰をまわしてみせるので、敏感な部分が吸いあげられる感覚がして、私は声をあげそうになった。思わず、口元をおさえてこらえる。
「別に、オレはいいんだ。バレても、いい。今、このときしか。チャンスはない。オレの人生と碧衣の人生は重ならない」
小声で切実な調子で言う。
私の人生と緋々来の人生が重ならない?なんでそんなことを言うの?と思った。
緋々来主導で導かれて、罪悪感とともに体内に吐き出す。
その瞬間に、緋々来の姿が目の前に現れ出た。
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