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紅い女とヒーロー参上
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「ダメだよ、美景」
くるりんと宙返りする何かの影が見える。その影は、私の目の前に迫った爪の先を、鉄の輪のようなもので弾いていく。
「じゃじゃーん、ヒーローの登場だよ」
と言って私の前に躍り出て来たのは、ダボっとしたトレーナーに、カーゴパンツスタイルの人物だ。プライベートでのおなじみのスタイルだけれど、私は違和感を禁じ得ない。頭の上には獣のような耳があるし、お尻の部分からは白い尾が出ているからだ。
「万理、どうして?」
「あの冷酷野郎の命令で、今日はここに来てたから」
「それは、そうなのかもしれないけど。それだけじゃなくて」
その姿は一体?と聞きたかった。
「あら、狐狸か付喪神の類いかしら?挑文師では、ありませんね」
と女性は言い、黒い爪をなおも繰り出してくる。即座に長刀で弾くけれど、弾くだけでは軌道が変わるだけでたちまちこちらに向かってくるのだった。
垣根州を支えたままでは、動きが取りづらい。
くるくるっと宙返りをして、万理が女性の手先へと飛んでいき、鉄の輪をぶつけていく。輪の外側が波打つ歯のようになっている、不思議な武器だ。
両小指の爪が折れるのを見た。アクロバティックな動きは、いつも顎をテーブルに載せて、スマホでゲームをしていた万理のものとは思えない。
ゲームをしながら、すっかり溶けたような顔でくつろぐ万理も好きだったけれど――――。
と余計なことを考えていたら、中指の爪が伸びて来た。
くるりんと宙返りする何かの影が見える。その影は、私の目の前に迫った爪の先を、鉄の輪のようなもので弾いていく。
「じゃじゃーん、ヒーローの登場だよ」
と言って私の前に躍り出て来たのは、ダボっとしたトレーナーに、カーゴパンツスタイルの人物だ。プライベートでのおなじみのスタイルだけれど、私は違和感を禁じ得ない。頭の上には獣のような耳があるし、お尻の部分からは白い尾が出ているからだ。
「万理、どうして?」
「あの冷酷野郎の命令で、今日はここに来てたから」
「それは、そうなのかもしれないけど。それだけじゃなくて」
その姿は一体?と聞きたかった。
「あら、狐狸か付喪神の類いかしら?挑文師では、ありませんね」
と女性は言い、黒い爪をなおも繰り出してくる。即座に長刀で弾くけれど、弾くだけでは軌道が変わるだけでたちまちこちらに向かってくるのだった。
垣根州を支えたままでは、動きが取りづらい。
くるくるっと宙返りをして、万理が女性の手先へと飛んでいき、鉄の輪をぶつけていく。輪の外側が波打つ歯のようになっている、不思議な武器だ。
両小指の爪が折れるのを見た。アクロバティックな動きは、いつも顎をテーブルに載せて、スマホでゲームをしていた万理のものとは思えない。
ゲームをしながら、すっかり溶けたような顔でくつろぐ万理も好きだったけれど――――。
と余計なことを考えていたら、中指の爪が伸びて来た。
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