【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

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第6章

#8

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 数日経ち、周藤に呼び出された日。
 
 俺は、久しぶりに周藤夫妻の建てた一軒家の前に立っていた。

 お詫びの品はひとまず、今治のタオルセットにしてみた(産後もカオリさんが使えるし)。
 
 カフェインレスのティーパックも添えて、あとは自分の頭を下げるだけだ。

 そして祝いの品は、どうしたら良いか結局わからなくて散々悩んだけれど、出産準備用のカタログギフトみたいなのがあったので、それにしてみた。
 
 きっと自分で選んだ方が楽しいかな、と。

 変に俺が気合い入れて色々買い揃えてしまうと使わなかった時、邪魔になってしまうようなぁなんて思い……。

(バイトしていてよかった……)

 結構な出費になったので、貯金だけでは心許なかった。

 手に持った紙袋を確認し直して、『周藤』と書かれた表札を確認。
 インターホンを押して、カメラに写るように立ち位置を調節する。
 
 カメラを見たのか周藤の声で『ちょいまち!』とだけ聞こえてすぐマイクが切られた。

 少し待っていると、ガチャと音が聞こえて玄関が開けられたのがわかる。
 
 門扉まで来て開けてくれ、「来てくれてありがとなー!ってか荷物多いな⁉︎」と驚きながらも玄関まで誘導してくれた。

 なんだかんだ二人の家に来るのは片手で数えるくらいしかないかもしれないなと思いながら、「お邪魔しまーす」と言いつつ靴を脱ぐと、いつの間にか大きくなったお腹を支えながら歩いてくるカオリさんが「いらっしゃい」と微笑んでくれた。

(いつの間にそんな大きく……)

 人間の体とは本当に神秘的だなと思いつつ、開口一番に俺は玄関のままカオリさんに頭を下げた。

「カオリさん、すみませんでした!突き飛ばした時も、赤ちゃんいましたよね……?あの時、周藤がいなかったら、俺……」

 カオリさんたちの赤ちゃんを殺してしまっていたかもしれない。

 その恐怖に、ずっと胸が苦しかった。
 頭を下げていると、体の芯が震えてきた。

 すると、カオリさんの小さな柔らかい手が俺の肩に触れた。

「この間、謝ってくれたじゃない。別に気にしてないわ。私もヒロくんも、何があっても良いって覚悟であなたに会いに行ったんだから」

「でも!」

 俺は顔を上げて口を開こうとすると、カオリさんは微笑む。

「細胞レベルの暴走っていうのは、どうしようもないのよ。理性じゃどうにもならないの。私がヒロくんに向けたくもない包丁を向けたみたいにね」

 彼女自身、経験があるからこそ俺を許そうとしてくれているのだろう。

 でも俺は、申し訳ない気持ちしかない。
 おずおずと紙袋を1つ差し出した。

「本当にごめんなさい。金や物で解決することじゃないのは分かってるんだけど、何か持って行きたくて自己満なんだけど……」

 よかったら受け取ってくれませんか、と今治の袋を差し出す。
 
 すると、カオリさんはパッと顔を明るくして「え⁉︎今治⁉︎ラッキー!」と軽く受けとってくれた。

 「ま、あの後一応検査行って異常なかったから、気にすんなよ。俺たちだって言ってなかったわけだしさ」
 
「いや、そういう問題じゃないよ……。いくら理性が効かなかったとしても、やっちゃいけないことはやっぱり何としてでもやっちゃいけなかった」

 赤ちゃんがいようがいまいが、と周藤に言えば、彼は笑って「ま、要がそこまで言うなら今治のタオル使いまくろうぜ~カオリ」と楽しげにしている。

「さ、玄関でもだもだしてないでリビングでお茶しましょう」
 
「あ、ティーセットも持ってきたのでよかったら、カオリさん昼間、暇だって聞いたから優雅にお茶タイムでもしてよ」

 ま~気が利く!とカオリさんはるんるんでキッチンへ行ってしまった。
 
 リビングに行くまでの道中で周藤と二人になった俺は、男として……友人として「周藤」と呼び止めた。

「本当に、カオリさんのことごめんな」

 カオリさんにバレないように小さな声でもう一度頭を下げれば、周藤は困ったように笑って俺の肩を雑に抱いた。
 
 ふわっと香るのは、カオリさんと同じ柔軟剤の匂い。

「カオリも言ってたろ?俺たちは、要がオメガに侵食されてるってのが分かってお節介焼きに行ったんだ。事前に二人で打ち合わせくらいしてるって」

「さすがだな……」

 申し訳ない気持ちは変わらないが、周藤の言葉に俺は彼女の身体に何も影響がなかったことにホッとした。

 安堵したのも束の間。
 周藤は俺に顔を近づけて、先ほどよりももっと小声になって俺に囁いた。

「実はその話、包丁向けられただけじゃなくて、ちょっと刺されたんだよね」
「え゛」
「しー!……ほらこれ。カオリには内緒な?あいつまだ気にしてっから」

 と意地悪顔で言う周藤は、カオリさんにバレないように俺に服をめくって腹を見せてきた。
 
 そこには横に一本線が引かれていて、縫われた跡があった。

「アイツもオメガの本能とやらに結構悩んだ時期があってな。それこそ、付き合って半年くらいの時かな」

 その時にぐさっと。と、何事もなかったかのように軽く笑って流す周藤。

「ぜ、全然知らなかった……」
「だろ?だからお前のはまだ可愛い方よ」

 部屋壊したり、人を突き飛ばしたりするのは可愛い方なのだろうか……。
 
 オメガの破壊衝動は人それぞれだと言うが、本当に人それぞれだな、と思った。
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